本)ミステリー

March 11, 2017

山口雅也「ミステリーズ」393冊目

珠玉の、抱腹絶倒の、短編集。
1990年初頭にさまざまな雑誌に書かれた短編を集めたものだけど、Disc 1&2に別れて構成されていて、洒落ています(本当はこの年代の作家ならレコード盤の「Side A&Bにしたかったはずだけど、微妙にCDが幅を利かせてきた時代だよね)。

傑作と名高い処女作の「生ける屍の死」がすっごく面白かったので期待して読んだら、期待をさらに超える素晴らしさでした。私は「解決ドミノ倒し」が好きだ!これ下北あたりのアングラな舞台でやってほしい。もうやってるかも。
このお話は、かんたんに言うと、探偵が広間に容疑者全員を集めて「この中に犯人がいる!」から始まる、ミステリーの「解決編」だけの短編。しかし「ドミノ倒し」ということで、刑事がてきとうな推理をして「お前が犯人だ!」と言ってもカンタンに犯人に論破され、「ではそちらのあなたが犯人でしょう!」と言うとまた・・・と繰り返して、一体誰なんだ〜、と言うお話。腹を抱えて笑えます。

冒頭の「密室症候群」や「不在のお茶会」は、いわゆるメタ設定がループして(「解決ドミノ倒し」もそうだけど)、めくるめく構成の楽しみのある大人向けの短編なのですが、その中に心理学やなんやらの小難しい説明もちょいちょい挟まれます。とにかくさまざまな文系の分野の造詣が広く深くて、どれくらい深いかと言うと、大人の余裕で笑いにできるくらい深い。読む人はニヤリ、あるいはワハハと笑いながら、何やらマニアックな世界に魅了されていきます。

2冊目にして、my favorite作家のリストに加わりました。きっと読破してみせる。
どうやらこの本、今は絶版のようですが、図書館にはあるし古本は1円とかで買えるので、気が向いたらぜひ読んで見てください。

March 06, 2017

有栖川有栖「江神二郎の洞察」392冊目

面白かった。
この人の作品の一番力が入ってるところはいつも、「全員がアリバイがあるように見えるのに、犯人だけが殺人を犯すことができた。それは誰か、そしてどういう理屈か?」だと思う。動機を描き出すために長い背景を語ることが絶対必須ではないので、私としては短編集の方が良いののかもしれません。

が、いつものように、ミステリー論を展開する部分が全体の2割くらいはある感じ。
めちゃくちゃミステリーファンで、メジャーどころを読み込んでいるような人なら、フルに楽しめるんだろうけど。
これで一旦、この作家は打ち止めにして、他の作家のミステリーも読んでみようと思います。

February 28, 2017

有栖川有栖「鍵のかかった男」391冊目

これは2015年に書き下ろしで発売された作品。
今までで一番読みやすかった。大人らしい抑えた文体だし、”鍵のかかった男”が重層的で興味をそそられます。
宝くじ当選とか事件に巻き込まれるとか抑えた文体とか、私の敬愛する佐藤正午を少し思い出しました。

ミステリー的にはこの作家のいつもの「犯人は誰だ?」が主で、いつものように最も重要なのは「タイミング」です。アリバイはない、だけどなぜこの人にしか犯行ができなかったのか? 
でもやっぱり、動機がなぁ・・・。最後の最後にとってつけたような動機が語られても、ここまで読み進んで、登場人物それぞれの人となりを一応わかったつもりでいるからこそ、「なるほど、あの人がねぇ」という納得感が欲しかったです。

February 25, 2017

有栖川有栖「月光ゲーム」389冊目

この作家のファンではないし、与えられた謎を真剣に解くこともせずに、ただ気軽に読んでるだけなんです、すみません。でも面白かったよ。3部作の中で、これが一番小説として楽しく読めた。まだ大学生の空気が作者に濃く残ってたからか、その場にいて自分も仲間に入っているような楽しさ。キャンプ場にいるというだけで上がるテンション。
ミステリーとしての謎解きの面白さは、私は今もこの作家の肝みたいなものが掴めてないのでなんともいえないんだけど、だいたいいつも、誰もアリバイがない状況で、たっぷり与えられたヒントから「その時本当にそこにいられたのは誰か」をあぶり出す、という形なのかな(今までのところは)。

私みたいなパラパラ読みではパズルまでは解けないんだけど、それでも解答のひねりは十分あじわえます。
この作家は、”死んだと思った人が生きてた”、”ゾンビになって殺人をした”、みたいな超法規的解決をしないのが良いんだけど、作家ごとにルールが違うから慣れるのが大変だよ・・・。

でも続いて2冊読みます。

February 21, 2017

京極夏彦「魍魎の匣」388冊目

読んだー!
重かったー!(※物理的に)
1048ページ。いやー面白かった。
最初は、旧仮名遣い文が混じるし、霊能者とはなんぞやとか、魍魎とはなんぞやとか、長い長い説明が面倒な気がしたこともあったけど、どんどんはまり込んで、後半は夢中で読み進みました。
長くて複雑、パラレルでいくつもストーリーが進行する、という小説や映画は昨今数多くあるけど、この小説はパラレルなスレッドがそれぞれ数人ずつの共通人物でつながっていて、完全に独立しているわけじゃありません。だから気持ちをいちいち切り替えないで読めるし、重層的なのです。

オカルトと科学と人間同士の愛憎が、それぞれちゃんと深く描かれているし、うまくつながりあってる。著者はそうとう頭のいい人だなぁ。

京極夏彦ってこういう感じなんだ。いくら何でも長すぎるので、そうそう読めないけど、この人の名作と呼ばれるものは一通り読んでみたいな。あー、大人にも退屈で長い夏休みがあればいいのに。

February 18, 2017

有栖川有栖「孤島パズル」387冊目

大学生の江神探偵シリーズ第2作。先に読んでしまった「双頭の悪魔」が第3作なので、順番間違ってる。
しかし「双頭の悪魔」が分厚い力作すぎて個人的にはめんどくさかったのに比べると、こちらの方がシンプルで人間関係も納得しやすかったです。いくらトリックに凝るといっても、「双頭の悪魔」のxx殺人は余程の信頼関係がなければ・・・ぶつぶつ

順番が真逆ですが、この後第1作の「月光ゲーム」も読みます。

February 13, 2017

風間一輝「男たちは北へ」385冊目

1989年に発刊された小説ですが、グラフィックデザイナーを本業として、そのほかに飲み歩き関係の記事などを雑誌に書いていた筆者が初めて書いた長編小説だそうです。
表紙カバー裏の写真をみると、ウイスキーらしきグラスを手にした無頼っぽい男で、野坂昭如的な昭和のにおいがプンプンしています。2017年の私について行けるか、ちょっと不安をおぼえつつ読み進めてみると、たしかにときどき戸惑うほど昭和です。

どれくらい昭和か?は後でふれるとして、この小説の特筆すべき点はそこではなくて、単純にミステリーが解明されていく様子が面白いし、人間味あふれる登場人物に存在感があって、じわっとあったまるいい小説なんですよ。さすが、あまたの小説好きに愛されてきた名作。

無頼派自転車乗りの主人公のほかに、一見クールだけど曲がったことが嫌いな自衛隊のエリートや、旅のなかで成長をとげていく通りすがりの少年など、ユニークな人物が続々と登場します。すごく男くさくて泥くさい小説だけど、いい小説でした。

さて、時代を感じさせる部分について書きますと・・・
主人公はグラフィックデザイナーで雑文家(明らかに著者の分身ですよね)で、自転車乗り。
思うことあって自転車で東京から東北への旅に出るのですが、そのいでたちがGパンにフィッシャーマンズベストって、釣り人かお前は??今公道をそんな格好で何百キロも飛ばす奴ぜったいいないよ。と、まずここから突っ込むわけですが、その頃のおまわりさんは「自転車は歩道を走れ」という指導をしていて、デコボコで走りにくい歩道をなんとか避けて、誰も見ていないときは車道に降りて走っていく主人公です。そして、彼は「アル中」という設定で、これがあまりに本格的なのでびびります。ドライブインに着く度に、朝から昼からビール大瓶を1本ずつ空け、宿では何度も頼むのが面倒だからと酒を最初に5杯注文する。さらに極め付けが、手持ち荷物の中に常にウイスキーのハーフボトル。飲酒量の問題だけじゃなくて、実際彼は昼間走っているときに禁断症状にたびたび苦しむのです。中島らも?
もはや平成の世の中では映画化不可能な世界。。。

「このミステリーがすごい!」などで堂々と入賞しているけど、この作家知らないなぁと思ってwikipediaで調べたら、1999年に亡くなられていました。ごく最近のベストテンにも入賞しているのは、今も彼の作品を愛読している人がたくさんいるということでしょう。きっと愛された作家だったんだろうなぁ。

February 12, 2017

有栖川有栖「双頭の悪魔」384冊目

この人の作品を読むのは久しぶり。
本格的推理小説、「フーダニット」(犯人当て)の名手。以前は結構好きだった気がするんだけど、今回はそれほどはまらなかったなぁ、「このミステリがすごい!」人気リストを見て選んだんだけど。
大人になりすぎてしまったんでしょうか、私は。

もともとミステリーは小・中学生の頃にアガサ・クリスティから読み始めたので、人間模様から導き出される”動機”は”トリック”と同じくらい私にとっては重要なのです。この人の作品は、人間がチェスの駒みたいで動機なんて薄弱でも構わないと言ってるように思えてしまったりする。

純粋にパズルとして読めば、こっち岸とむこう岸とで複雑に絡み合った事情、張り巡らされた伏線、とかをひもといていく楽しみが味わえるんだろうけど、この世界の言語に不慣れで、作家の意図するヒントとそうでないものを区別するのが難しい。少なくとも3、4冊まとめて読んでみないとな・・・。

というわけで、ちょっと集中して読んでみるか、この人の小説。

February 07, 2017

水原秀策「サウスポー・キラー」383冊目

ミステリーなんだけど、完全に野球小説ですね。
バタバタ人が死んだり、残酷な手法だったり、どろどろの人間の醜さを描いたりする怖いミステリーが多いこの世の中で、ほっとする作品でした。

この作品も、トリックの複雑さや動機の難しさがメインではなくて、小説として面白い中にミステリーの要素「も」あるという感じ。そういう楽しみ方もあるんだなーと思いました。

著者は元野球部かしら?決して専門的でわかりにくいのではなく、詳しい人がわかりやすく説明してくれる印象でした。ほかの作品は、タイトルをみる限りちっとも野球とは関係なさそうだけど、どんな作品を書くんだろう・・・また読んでみたいです。

February 05, 2017

ジェフリー・ディーヴァー「ボーン・コレクター」381〜382冊目

文庫本とはいえ上下巻あって、なかなかのボリュームでした。
最初の誘拐の場面の後、首から下が麻痺した探偵という設定が理解できるまでに結構時間がかかってしまった。
なるべき事前情報を見ないで読み始めるので、こういう苦労をしてしまうんだけど、これが映画だったら一目瞭然だなぁ。

ベッドに縛られて身体は動かなくても、頭はキレッキレの探偵リンカーン・ライム。この小説では、そういう状態の彼の肉体的苦痛がどれほどのものかも語られていて、そういうこともあるのかと初めて知りました。わかってなくてごめんなさい。
しかし、気難しい彼の才能も人柄もだんだん好感を覚えるようになっていって、美人刑事アメリア・サックスとの関係もいい感じだし、安楽死なんかしないでもっと続編を書いてくれよー!と思ったら、この後かなり書き続けてるみたいですね。興味あります。

ただ、犯人の設定は・・・この人の可能性もあるかなとも思いながら読んだけど、最後わやわやな感じだったなぁ。
次作はどんな設定になってるのかしら・・・。

より以前の記事一覧