本)映像関係

February 12, 2018

立花珠樹「女と男の名作シネマ」417冊目

映画評論家、立花珠樹さんの著書がまた出ていました。
タイトルが「男と女の」じゃなくて女が先なところが、著者の優しさを感じさせますね(笑)。
この本でもオススメの作品100本が紹介されているのですが、この本特に私と趣味が合うなぁ!
「エターナル・サンシャイン」とか「ハロルドとモード」、「ビフォア・サンセット」「或る夜の出来事」「あの頃ペニー・レインと」「愛人(ラマン)」「小さな恋のメロディ」「草原の輝き」「追憶」「マンハッタン」「ブロークバック・マウンテン」「嘆きの天使」「華麗なるギャツビー」「月の輝く夜に」「ロミオとジュリエット」「蜘蛛女のキス」「ベルリン天使の詩」・・・とか、典型的なロマンチック恋愛映画とは限らないものもあるけど、そうそう、いいよね!と言いたくなる映画がたくさん選ばれています。


 


私もだいぶ映画見てきたなぁ。この人の「あのころの日本映画が見たい」という本を買っ他のが私と映画との出会いと言っても過言ではないので、そこから数えて1700本以上映画見て感想書いてきましたよ、先生!とお礼を言いたいです。
映画って見れば見るほど見足りない。見たい映画がどんどん公開されるし、なかなか見られない映画をどんどん発見してしまう。いつになれば、だいたい見たなって思えるんでしょうね・・・。


February 28, 2016

ミシェル・スィコタ/フィリップ・ルイエ「ミヒャエル・ハネケの映画術」334冊目

映画をよく見るようになってから尊敬している、カンヌの最高賞2連覇の巨匠ミヒャエル・ハネケのインタビュー集。いったいどういう神の視点を持ってる人なんだろう?って思ってたので、興味津々でした。


この本はハネケの全映画作品についてひとつひとつインタビューを行った記録です。
インタビュアーは著者欄の二人の映画評論家、映画史研究者。きわめて深くこの監督作品を見ているし、それ以外の映画やフランス文化、歴史などの理解が深くて、それに比べると極東の私はほとんどイノセントな傍観者みたいなものです。インタビュアーがときに、監督に否定されることを覚悟しつつ、映画の解釈を試みると、案の定監督は「そういう見方もあるが、映画というのは観客それぞれが解釈するものだから」とくる。それにしては、演出スタイルはかなり細かく自分の理想をそのまま演じさせるもので、自由に演じることに慣れているアメリカの俳優などはかなり反発したらしいです。神の視点を持つ監督だから、鷹揚に構えて何でも笑って聞き流すかと思ったら、わりあい気難しい人かなと思いました。


・・・そこで思ったのは、めちゃくちゃ変わった映画を撮るアレハンドロ・ホドロフスキー監督と、話す感じが似てるなぁということ。かたやパルムドール連続2回、かたやカルトの帝王。二人ともアクが強くて万能感が強い印象です。ある意味二人とも、映画においては神。


この本で取り上げられてる映画は、日本では手に入らないものも多そうだけど、主要な映画作品はレンタルもしてるので、片っぱしから見てみようと思ってます。


October 24, 2015

本谷有希子「この映画すき、あの映画きらい」307冊目

やまだないとの映画感想本に近い感覚。
この人の原作の映画(腑抜けども、悲しみの愛を見せろ)がすごく面白かったので、きっと面白い人だろうと思って読んでみました。
予想通り、おおむね私と近い感覚でした。カワイイカワイイとか感動感動とかに抵抗を感じる、ひねくれたかんじ。
ただ、感想を書くために見たくない映画もわんさか見てるので、この人を理解する上ではいいけど、やっぱり私は見ないだろうなという映画も多いです。

June 23, 2013

立花珠樹「あのころ、映画があった〜外国映画名作100本への心の旅」288冊目

映画はもともと嫌いではなかったけど、今や自他ともに認める映画マニア…といっても過言ではない私です。昨日も映画館ハシゴして3本見たし。

きっかけになったのは、2年前に読んだ「「あのころ」の日本映画がみたい!」。私を映画好きに変えたこの本の洋画編が、満を持して登場です。
立花さま ご贈呈をありがとうございました。

映画というのはまず、人間を描いたものです。だから自分に合うものもあれば、合わないものもある。多くの人が「良い」と言う映画は実際おもしろく感動的なものが多いと思うけど、価値判断として「点数が高いもの」が自分にとって大切な映画になるとは限りません。この本の魅力は、著者があくまでも主観的に“自分がその映画のどこを、どう魅力に感じたか”という観点から書いていること。だから、趣味が合えばバイブルになるけど、合わないと感じる読者もいるかもしれません。私は前述の「日本映画」で紹介されている映画はだいたいどれも面白いと感じましたが、カッコよすぎる男の映画だけはダメだな〜と気づきました。(具体的には、高倉健とかハンフリー・ボガードとか北野武とか、)みんなそうやって、映画をたくさん見て、自分に気づいていくと良いんじゃないかな、と思います。

それと、映画ってのは“総合芸術”と呼ばれるらしく、脚本に演技に音楽に美術と、たくさんの要素が含まれています。映画を見ていいなと思う部分は、ストーリーだけじゃなくて役者さんの魅力や、カメラワークや、衣装だったりします。衣装しか印象に残らない映画はダメだ、ということはなくて、自分にとって一番印象に残ったところを、大切にしていけば良いのではないかと思います。

私は面白い映画を見ると、気になった役者さんや監督の映画をそのあと続けてどんどん見てますが(そうやって見たい映画リストが際限なく長くなっていく)、そうすると日本映画のちょっと古いものって、よほど名画と言われているものを除いて、非常に入手が難しいことに気づきます。それに比べて外国映画は、かなり古いものでもどこかで見つかる確率が高い。映画館、廉価版DVDやリマスターBlue-ray(VHSまで広げるとさらに入手が簡単)、インターネット上の著作権切れ映画アーカイブ…などなど。そんな恵まれた環境にあるむかしの外国映画、もっと見ようではありませんか。(なんのプロパガンダだ)

そうやって映画と出会ってここ数年で私が好きになった人たち…新藤兼人、園子温、マレーネ・ディートリッヒ、ハロルド・ロイド、“好き”じゃないけど惹かれるヒッチコック、ポランスキー、今村昌平、ピーター・ローレ、ジェラール・フィリップなどなど。見たことがなかったロシア映画や韓国映画の魅力とも出会いました。

そして、見れば見るほど、批評などというおこがましいことはそうそう自分にはできないなと思っています。私は「映画愛好家」、「感想文書き」でいたいだけで、批評と感想は違うんだなっていうこと。私は読むほうも、主観たっぷりのものを読むほうが好きなので、立花さんにはこれからもずっと好きなものを取り上げた主観たっぷりの文章を書いてほしいなと思っています。

June 23, 2012

新藤兼人「ひとり歩きの朝」本の271冊目

人間たちの生きざまを立体的に構築するのに長けた名監督の、ひとり語り。3ページずつのごく短いエッセイ集での新藤監督の“身の置きどころ”が映画のようにはつかめなくて、ちょっともどかしい本でした。映画「三文役者」にちょこちょこ監督自身が出演しているところがあるのですが、あくまでも遠目のロングショットで短く現れるだけ。人のことを語るのが仕事なので、自分のことをさらけ出すのはあまりお好きではなかったのかもしれません。

感想としては、なんだか寂しい本でした。
「三文役者の死」の温かさ、軽妙さと対照的です。この違いは、乙羽さんがそばにいるかどうか、なんでしょうかね。

長生き=幸せというより、デフォルトで孤独、悪い意味で。…という印象さえ受けます。何十年も信頼しあっていた友人がひとりひとり去っていく。うつ病ではないかと感じさせるほどの寂寥感が、本の中から悪霊のように立ちのぼってきます。。

確認したところ、「三文…」が書かれた1991年から、この本の元になった新聞の連載が始まった2000年の間、1994年に乙羽さんは果たして亡くなっていました。男って妻がいないと途端に弱くなるのね、と見るか、それとも、男って妻にそこまで頼りきって女のおかげでそこまで強さを保てるなんてうらやましい、と見るか。(書いてる私は後者だ、という意図が丸見えですね)

ひとりってのは寂しいものなんだろうか。
人はみんな(双子や三つ子でなければ)ひとりで生まれてひとりで死ぬ(大災害とかでなければ)。ひとりが寂しいのは、ひとりだからではなくて、心の中に大きな隙間があるからじゃないかな。
最後に近い「友情」という章の冒頭で“ながく生きることは、友を失うことでもある。つぎつぎと友が消えてゆく。その寂寥はどうしようもない。”といいます。40数年しか生きていなくても、小さいころにテレビに出ていた人たちが次々に死んでいきます。新藤監督も逝ってしまいました。だいぶ前に母は逝ったし姉の女の子はわずか5歳で天に召されました。亡くした人の数が問題なのではないと思うけど、ある程度の量に達すると質も変貌するのかもしれません(なんか科学書にでも書いてありそうなことを私ったら)。

さて、この本を読んで調べてみたくなったことがいくつかあったので、メモしておきます。
「読書の楽しみ」から。“チェーホフの「かもめ」を読めば、テネシィ・ウィリアムズの「欲望という名の電車」を読んでみたくなる。その対比はわくわくするほど興奮する”…両方読んでないので、読もう。

「小倉の巨人」で松本清張の「下山国鉄総裁忙殺論」「推理・松川事件」にふれている。ドキュメンタリーなのかな。これも読んでみたい。

「猫劇場」でロシアの猫サーカス“クララチョフ猫劇場”に触れている。
動画を見てみると、確かに芸をしていて面白い。

「妻を撮る」広島の監督、川本昭人が原爆症の妻を撮り続けた「妻の貌」…見てみたいけどTSUTAYAではレンタルしてないのね。

「アッセンデルフト考」でふれている“アッセンデルフト”とはトールペインティングの一種らしい。空想の絢爛たる花園のようで不思議な魅力があります。

「神か人か」福島瑞穂(政治家とは同姓同名の別人)の絵。ググってみたら、もう暗黒絵画ですね。幽霊とか悪魔とかのイラストを描こうとしてもぜんぜん怖くない私としては、うらやましいくらいです。どうやったらこんなに怖い絵が描けるんでしょう。

…つかみどころがない割に、得た情報が残る本でした。ということで、以上。

June 06, 2010

「ビデオ技術マニュアル」212

ビデオαという雑誌を読んでみたら、わりあいわかりやすかったので、同じ「写真工業出版社」が出しているビデオ撮影入門用のこの本を買ってみました。

ビデオ技術マニュアルというタイトルを見ると、ビデオカメラを買ってきた人が上手に運動会を撮影するのに役立ちそうだけど、そういう本では全然ありません。放送局における番組用ビデオ制作のうち、実際の撮影に関わる部分(企画~シナリオ作成や、放送にかかわる伝送技術とかは除外)の技術をいくつかに分類し、概略を述べたものです。

目次を見ると内容がよくわかると思うので、出版社のサイトへリンクしておきます:
http://www.shashinkogyo.co.jp/sk-betu/alpha/video-gi.html

まぁ素人(わたし)がいきなり読んでもわからないことが多いけど、「タイムコードの基礎」とか「MAシステムの基礎」とか、プロのビデオ制作で絶対に必要になる基本が説明してあるので、手元に置いてちょこちょこ参照するのに良さそうです。

プロを目指す入門者には得難い情報源ではないかと。各章を、それぞれ専門家が分担して書いてあるので、3000円という価格を出しても惜しくないのでは。

引き続き、映画やアニメーションの制作関係の本なんかも読んでみようと思います。以上。

ビデオ技術マニュアル

May 15, 2010

板屋緑+篠原規行 監修「映像表現のプロセス」211

たぶん大学の教科書として書かれた本だと思います(ふつうにAmazon等でも買えます)。
武蔵野美術大学の映像学科の学生が、卒業制作等で作った映像作品について、作者自身のことばでメイキングの経緯を記述してあるのが本の前半。後半は動画の歴史と基本を先生が説明しています。さらに、前半で記述された学生たちの作品をまるごとDVDに収録して添付してあります。
・・・という構成なので、まったく動画を作ったことのない人が初めて手にする入口として、とても適切な入門書だと思います。

切り口はいろいろあると思うけど、これは技術系の専門家でもなく、コマーシャルなコンテンツ製作者でもなく、オリジナリティを追及するアーティスト向けの入口。映像制作について知りたい人の中には、アートに興味のない人もいると思うけど、そういう人の場合は、「自分のイメージを実現するために技術的な制約をどうやって克服するか」というサンプルとして読めば興味深いのではないかと。

引き続き、技術書も読んでみようと思います。
以上。