本)趣味の世界

July 28, 2011

笹路正徳「音楽プロデューサー全仕事」262

音楽プロデューサーって何を考えながらどういう仕事をしてるんだろう?と思ってAmazonで検索して、見つかった本を古本屋で買ってみました。

プリンセス・プリンセス、ユニコーン、スピッツ、ザブリリアントグリーン等の出世作を次々にプロデュースした敏腕プロデューサーが、かなりきちんと自分の仕事を説明していて、学生用の就職説明会のような本です。仕事の大枠から詳細まで説明し、自分の思いや「自分がこうありたいというプロデューサー像」についても語っています。

そういう意味でなるほどと読めたし、仕事のこともよくわかりました。自慢に終始するような本でもないです。プリプリ、ユニコーンはともかく、ブリグリって演奏力はかなり微妙なバンドだと私は思っていて、「There will be love there 愛のある場所」を聞いたとき「すごいいい曲だし、イギリスのバンドみたいにセンスがいい!(そしてなんとなく、スタジオ力がすごくて、もしかしたら演奏力はそうでもないかも)」と強い印象を持ったのですが、どうもその通りだったらしいと私は読みとりました。

「自分を出して思い通りの音づくりをしたり、商業的成功ばかりを意識するより、そのアーティストらしさを生かしたい」という姿勢にも共感します。1999年に出版された本なので、その後もいろんなアーティストといい仕事をしたんだろうな、と思います。
しかし私のもっかの関心は少女時代のガールズポップとしての完成度の高さと、その背後にいるプロデューサーの凄さで、その理解のためにこの本も読んでみたわけなので、継続してゆるくアンテナを張っておこうと思います。以上。

January 02, 2011

西田浩「ロックと共に年をとる」237

帯にはこうあります:ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン・・・(中略)etc.「伝説」たちに聞いた、音楽の話、人生の話。

タイトルからは、最近はやりの「大人でもロックを聴こうじゃないか運動」(どこで誰がそんなことやってるんだ)を促進する内容を想像したのですが、帯を見ると音楽ゴシップ本のようです。こういう不一致感が、読んでいる間もずっとつきまといました。著者の中にもそういう矛盾があるような印象で、みんな、またロックを聴こうよ!と呼びかけているのに、足りないものがある。自分はどんな音楽が好きで、仕事ではいつ誰と会ってどういう話をして・・・と語るんだけど、音楽そのものやミュージシャンに対する「愛情」が伝わってこないのです。

もうひとつ言うと、文章表現が平板すぎます。会って態度がよかった人は「潔い」ばっかり。そうでないと彼が感じた人に関しては「復活のための戦略だ」といってみたりして、自分の立ち位置がロックファンだと言っているのになんだか興味本位のワイドショーのレポーターのように感じられることも多いです。

わたしと同じようなやりかたで音楽を愛してる人が書いた本ではなかった・・・というのが感想です。以上。

August 11, 2010

桂歌丸「極上 歌丸ばなし」221

この本は渋いよ。新宿末広亭で入手したサイン入り本を人にいただいたものです。発行元は「うなぎ書房」(笑)。私は特別な落語ファンでもないし、ちゃんとした噺を聞いた経験は数えるほどしかないけど、歌丸さんは私の一番好きな落語家です。(その前は桂枝雀さんが好きだったなぁ。)

この本で歌丸さんは、聞き手を相手に自分の生い立ちから落語家としての修業、今に至るまでの道のりを語ります。「軽妙洒脱」という表現は歌丸さんのためにあると思う。粋で清潔で軽くて色気がある。知的で紳士的。

彼はとある歓楽街の遊郭の家の子として生まれ育ったのだそうです。「遣り手ババア」と呼ばれた祖母と彼と遊郭に出入りする人々の生き生きとしたエピソードが、まずかなり面白い。

落語家になるのを決めたのは14歳のとき。1年後にはもう入門し、わりあい師匠に可愛がられたけれど、ちょっとした行き違いからそこを飛び出してやがて別の新しい師匠につく。最初は新作ばかりやっていたけど、その後は古典の面白い話を発掘してアレンジすることに専心するようになる。・・・落語の団体は複数ありますが、老舗のひとつ「落語芸術協会」の会長を2004年から務めている・・・というのが、この道に進んでからのあらまし。

聞き手の山本進氏は、歌丸さんのファンでもあるのかもしれないけど、つとめて彼を客観的に噺家のひとりとして語ろうとしている印象です。だから私も、珍しく「大好きな歌丸さん」ではなく「歌丸という一人の噺家」として離れてみている。

そうして見ても、やはり彼は清潔であかるい人だ。たぶん家で家族といても、仕事で人と会っていても、あのあかるい目をしていて、きたないことなど決してしないんだろう。・・・でもそんなことどうでもいいのだ。ミュージシャンも俳優も自分たちとあまり距離を感じなくなってきているいまの時代だけど、落語家ってちょっと特別な感じがする。今でも長屋に住んでるんじゃないか、なんて思ってしまう距離感がある。

だからこの本は読んでも読まなくても、私の歌丸さんの芸に対する気持ちは変わらない。ただね、近いうちにまたライブで聴きたい!とやけに強く思いました。
以上。

June 28, 2009

やまだないと「家族生活」 in 文芸別冊、他 159

このマンガ家はかなり昔から知ってるけど、エロマンガを描いてる男性だと思ってた。当時流行の、スタイリッシュな感じの絵と、突き抜けた感じのやばいストーリーが印象的だった。そういうイメージがあったので、ちょっとチュウチョしてたけど、この人の本をとうとう買ってしまった。

「家族生活」って本は、ゲイの中年カップルが誘拐してきた女の子と一緒に、定住せずにずっと旅を続けている話。10年以上前に連載されたものだけど、完結してない。完結しなくても許されるマンガ家は江口寿史とこの人しか知らないので、きっと大したものなんだろう。で、「文芸」がやまだないと特集をやったときに、その未完の作品を全編収録したわけ。

感想:おもしろかった。私「私立探偵濱マイク」好きなんだけど、あれみたいなフィクション臭さがぷんぷんする。

この人は「好きな仕事しかしない」と公言している。不満たらたらの私の対極だ。彼女はロングインタビューで自作について語ったりはせずに、未完の作品をさらすことを選ぶ。彼女の妄想(マンガの中での)は、共感はしないけどなんとなくわかるところがある。

一緒に、いま連載中の「Beatitude」ってマンガの1巻も買って読みました。続き物なので完結してから感想を書くつもりだけど、なにかこの人の作品にはやさしすぎて、切ない気持ちを胸の中に抱えてるような人ばかり出てくる。相手を傷つけたくないから、決して爆発させることはない。「家族生活」の12歳の女の子は無邪気な子供を演じ続けるし、「Beatitude」のフジオは押し入れの天井に残酷な絵を描きつつ、人が来ると笑顔を作ってみせる。・・・私はけっこうすぐ爆発しては、周りの人たちを傷つけてきたような気がするな。

西洋占星術、四柱推命等の生年月日がものいう占いの場合、私とこの著者は同一に近い診断が下ることになる。なにかの占いで「若いころに好きなことをせずに我慢ばかりしてきた人は、中年期以降爆発します」と言われたのがずーっと頭の中に響いてるんだけど、私と彼女は我慢するポイントと好きにやるポイントが対極的な気がするんだ。

「ラマン」って本も買って読んだけど、これはちょっとアレなネタなんで感想は書きません。
以上。

November 24, 2008

「オーダーメイド・イン・キョウト - 京都でおあつらえ」142

カスタムメイドというジャンルで、また一冊。これは一般消費者向けのオーダーメイドカタログ本です。
オーダーメイドとかカスタムメイドといってもいろいろあって、掲載されてるオーダーメイドシャツやギターは完全なオリジナルだけど、名前を入れてもらうだけ、生地を持って行って決まった形の小物に仕立ててもらうだけ、というものも載ってます。

自分でも欲しいと思うのは、「書画」、オーダーメイドシャツ、ぽち袋、・・・ってところかな。
わがままな消費者である私には、自分だけのすぐれたものが欲しい、自分にぴったり合ったものが欲しい、自分で作ったものを使いたい、の3つの欲があって、その中でも「自分で何か作りたい」が一番強いんだけど、自分で作ったものがさらに「自分だけのすぐれたもの」かつ「自分にぴったり合ったもの」だと最高にうれしいんだなぁ。図画工作の世界。

最近デッサンひとつ下手くそでロクにできなくなってるので、少し練習してみるべきか。

岩淵明男「驚異のパーソナル・オーダーメイド ビジネス」141

カスタムメイドということに興味があって、関連する書籍をたくさん買って徐々に読んでます。およそアカデミックな本というのが見つからなくて、これも流行本みたいなもんなんだけど、一通り。
家に猫が来たんで最近じっくり本を読む時間を作るのが難しくて。

この本は、「え、こんなのもオーダーメイドできるんだ」というのを集めた本なのですが、ただ集めただけではなく、”大衆はバブルとバブル崩壊を経て、大量生産された製品に飽き足りず、「個衆」となって「ハートウェア社会」を形作っている”という著者の主張が展開されます。その辺はあまり興味がないのでカタログとして読みました。書かれたのが1995年なので時代がもはや違う・・・けど、この分野はまだブームに至ってないからか、あまり状況が変わったという印象はありません。

取り上げられているのは、1枚だけのプリント生地を作れるシステム、自分に合ったフレームをオーダーできる自転車、完全オーダーメイドまたはイージーオーダーできる靴、など。

本が書かれた1995年と比べて盛りあがってる会社は、たとえばセーレンという、どんな色でもデザインでもプリントした布を作れる会社。http://www.seiren.com/この会社のこと私は知らなかったんだけど、カネボウの紡績部分を引き受けた会社だそうです。今やそれだけの力をつけてるのですね。13年の間に、3D CADのシステムにかかるコストはたぶん劇的に減少して、ソフトもだいぶ進化しただろうから、店頭で採寸→工場で生産、ってのもそろそろ質的にもコスト的にも商業ベースでいけるように・・・ならないかなぁ。(基本的に私はこういうの応援してるんで)

靴の完全オーダーメイドをしてる菊地武男http://www.dinus.co.jp/は、洋服のデザイナーのTakeo Kikuchi=菊池武夫とは別人。今はカスタムではない「プレタポルテ」靴もさまざまな種類を売ってるようですね。カスタムの経験を活かせば、いい靴が作れそうです。カスタムがいくら良くても30万円では誰でもオーダーできるわけじゃないから・・・(今はもっと安いオプションもあるみたい)。

ナショナル自転車=今はパナソニックの自転車事業部、のフレームオーダーも、今も継続してますね。
http://cycle.panasonic.jp/products/pos/index.html 下手すると自動車が買えそうな価格。自分に合ったスポーツ車の需要はまだまだあるんじゃないかなーと思います。

思うに、体に身に付けるものを作るために3Dレーザー計測をしただけでは、サイズしかわからないから、筋肉の流れやどこに力がかかるか、力を入れるとどこが膨らむか、足首周りは朝と夜とでどれくらい違うか、といったことはわからない。でも元になるデータが手に入ってから実際に身につけてみたりして、経験を蓄積していくことで、他の重要ポイントがわかってくるはず。短絡になんでも自動化できるわけではないけど、じっくり時間をかけて取り組んでいけば、徐々に蓄積していって実用レベルのシステムができるはず。というわけで、なんかのヒントにはなったかも、この本。