本)著作権・特許その他知的財産関連

August 26, 2012

松倉秀実「黒船特許の正体」280冊目

副題は「Apple、Amazon、Googleの知財戦略を読み解く」。

この本は電子書籍と紙の同時発行。もともとは、impressの電子“雑誌”である「OnDeck」に連載された記事を、EPUB3とプリント・オンデマンド(注文に応じて即座に印刷・製本)の形で発刊したものです。そんな発行形態からして新しい、松倉さんらしい新時代の書籍!です。

タイトルの「黒船」については、「はじめに」で以下のように書かれています:「本書では、電子デバイスメーカーとしてのアップル、インターネット上の情報管理企業としてのグーグル、インターネット上の物販システムの変革者としてのアマゾンの3社を平成時代の「黒船」ととらえ、これら3社のビジネスモデルを分析し、それぞれのモデルに対応した知財戦略(特に、特許戦略)があるはずだという仮説のもとにこれらを検証・分析してみました。」

誰でも毎日のように使っているアップル、グーグル、アマゾンの機器やサービス。日本国内には、彼らに匹敵する商品やさーびすはまだ存在しません。誰もが知りたい、この3社のビジネスモデルの強みを、著者お得意の知財分析から読み解くという、専門的かつ知らなかった情報たっぷりの本です。

ぶっちゃけ薄い本です。70ページで、電子版だと680円、紙だと1080円。私が買ったのは紙ですが、印刷や製本は市販の書籍と同じ高品質だし、下手なメルマガや「この記事の続きが読みたかったらxxx円」と比較して高いと感じないのは、内容が濃いからでしょうね。

具体的には、各社のビジネスの根幹と思われる特許出願の内容、その査定や変更の経緯をたどって、戦略とその修正の経緯を読み解きます。同じ特許庁に対する出願である限り、特殊なやり方は通用しないことから、特許戦略というもののあり方自体は、専門家がきちんと読み解けばそれほど実体とかい離しないのではないかと思われます。この本、今後新ビジネスを始めようと思う人にはけっこう得難いヒントになるかもしれませんよ?

もっと続きが読みたいんだけど、書いてくれないかなぁ・・・。
以上。

January 02, 2012

岡田斗司夫+福井健策「なんでコンテンツにカネを払うのさ?」323

これも、twitterでいまフォローしている福井健策氏の新著。というか"オタキング"岡田斗司夫氏との対談です。
二人ともかなーり異端な意見の持ち主で、突っ込みどころも多いが思い切りのいい持論を気持ちよく展開してくれます。
副題が「デジタル時代のぼくらの著作権入門」。といっても入門書では全然ありません。むしろ大学院課程を終えたくらいの人が、思考実験サンプルとして読む本だと思います。
福井氏が、本だけでなく映像や音楽のすべてをアーカイブ化して、著作権者からオプトアウト方式で許諾をとる(これを有効にするにはまず法改正)という「全メディアアーカイブ構想」をぶちあげると、岡田氏は日本の全国民が株主になる「株式会社日本コンテンツ」を語りはじめる…。あるていど制度上の難しさがわかる人のほうが、壮大な夢であり大言壮語のこの話が思い切り楽しめるのでは?と思います。

この二人は、立場は違うけれど意外と考えもアプローチも似ていて、日本人にはむずかしい"大きなシステムをデザインして構築する"力のある人たちだと思いますが、意図的に人間の心理に触れてないからか、な~んとなく、自分が彼らの提唱する世界にぴたっとはまる気がしません。具体的にいうと、売上トップ100のすぐれた作家やミュージシャンと同じくらいすばらしいアマチュア作家やミュージシャンがたくさん存在することは知ってるけど、一般の人はいちいち1万人の本を読んだり音楽を聴いたりして選択するより、誰かが適当に選んでくれたものの中から選べれば十分なんだと思います。"キュレーターの時代″でも"目利きの力"でもいいし、それが中村とうようでも芥川賞でもロッキングオンでもいいんだけど、膨大な横並びのアーティストの中から、数個を選び出して提示してくれるものがふつうは必要な気がします。全アーカイブスができると、その中に「目利き」が必要に迫られて登場して、やがてそれがレーベルに似た役割を果たすようになって、それをマネタイズする必要が生じてきて、そのうち意外と今とかわらない世界になっていく気がします。

お金を稼ぐための仕事をしながら音楽を続ける…ということを、私もよくミュージシャン希望の人に薦めますが、実際のところは、2つのことに真剣に取り組める人ばっかりではないとも思います。聴く側はもっとそうで、もうダンスミュージックのコンピレーションCDで十分だと思ってる人もいるくらいです(私はとってもpickyなので、うそ~と思ってしまうほうですが)

多分わたしは何においても、「一般の人は、たいがいのことはどうでもいいと思っている」という考えなんでしょうね。私自身、ウルサイのは音楽くらいで、それ以外のことは割とどうでもいい人間だからでしょうか…。

いろいろ言ってますが、言いたくなるくらい面白い本で、考え方のヒントや著作権制度のOK/NGスレスレが見えてきて、考えるきっかけにもなります。なんでもかんでも、プラットフォームをアメリカのしかも一企業が決めてしまう世の中はイカンという二人の意見には、couldn't agree moreという気持ちです。以上。

December 30, 2011

福井健策「ビジネスパーソンのための契約の教科書」320

著者のTwitterで知って、さっそく買ってみました。
これは海外との契約交渉のスキルがない人が、次の交渉に備えるために読んでおく本のようです。ターゲットは国内の交渉経験が豊富で、むしろその経験に縛られている、企業法務スタッフや、これから交渉に乗り出していく新人営業マン…とかをイメージしました。契約書とか法律とかの言葉にアレルギーのある人向けに、やさしくやさしく書かれているので、キヤノン顧問の丸島儀一氏の著書を読んだときのような「ニヤリ」はあまりない本ですが、英文契約書を読み違えている大企業の法務部長とかにもし出会ったら、読んでほしいなぁと思いそうです。

社会人一年生にはちょっと早いかもしれません。最低限、仕事ってどういうもの、計約ってどういうもの、というイメージが自分なりに持てるようになった人が、次のステップとして読む。あるいは長く似た取引先とばかり交渉をしていたのに、新しい分野に進出しなければならなくなったベテラン、にも良い本のように思えます。以上。

June 19, 2011

稲森謙太郎「女子大生マイの特許ファイル」251

表紙だけ見ると、「もしドラ」の特許バージョン。たぶんドラマ仕立ての「特許とは」入門本だろうなと思って読み始めたら、冒頭に「本書を読む前に」というセクションがあって、特許についての基本的な説明が出てきます。あれ、ちょっととっつきにくいなぁ…と思って読み進めると、マイや先生が出てきますが、会話部分はそれほど多くなく、具体的な特許公報がどんどん紹介されていきます。とりあえずドラマはありません。…で、堅い本かなぁと思って読み進んでいくうちに、紹介されている特許がちょっとヘンなのばっかりだとわかってきます。三洋電機がなぜか出願した「老人ホームの運営法」特許、新潟大学の「地球温暖化防止法」、iPS細胞や漢方薬の特許。等々。まるでシドニィ・シェルダンの小説のようなスピードでするすると読み進むうちに、だんだん面白くなってきました。第一印象とはかなり違うけど、「トンデモ特許をまじめに解説することによって特許システムや発明を保護する方法についてちゃんと学ぼう」という面白まじめ本だと受け取ればいいのかな、と思います。

でも可愛いマイちゃんやレイちゃんが最初の口絵にしか出てこないのが寂しすぎます。挿絵ボリュームアップ希望!それに、表紙+タイトルと中身がちょっと違うので、読者の期待値にズレがでてきてしまいそうな…。特許関係は興味があってけっこう本は読んでる(詳しくないけど)私としては、自分と同じようなマニアックな人にも中身でアピールできるように、タイトルと表紙とAmazonとかの紹介文を変えてほしい…。「女子大生マイと探すやさしいユニーク特許の世界」とか…「女子大生マイの『なぜこれが特許に!?』」とか…あんまりいい案がでないや。でも面白かったです。以上。

May 04, 2011

マーシャル・フェルプス&デビッド・クライン「マイクロソフトを変革した地財戦略」242

ちゃんと感想を書こうと思ってたのですが、あまりに長い間借りていたので返してしまいました。
そういうことで、要領が悪いのですが、思い出しながら感想を書いてみます。

印象は「知財版『闘うプログラマー』」。第一線でさまざまな軋轢にもまれながら、前例のないビジネスを作り上げていく専門家たちの姿が実感をもって伝わってくる、よい本だと思いました。
いかんせん翻訳が悪い。翻訳という作業をプロフェッショナルとしてやったことのない人たちが複数で訳しているからか、読みづらいし、誤りではないかと思われる個所もあるし、統一感もない。
(でもたぶん「じゃあ原書を読むからいい」と思って読み始めると、途中で投げ出しちゃうんだけど)

将来にむけた著者の提言の項も、大変含蓄のある素晴らしい内容でした。つってもちゃんと覚えてないので、時間があるときにまた図書館でも行って読みなおそうと思います。
とりあえず知財に関して少しでも新しい方法論に興味のある人は一度読むべき。以上。適当ですみません!!

August 31, 2010

鹿毛丈司「最新音楽著作権ビジネス」223

一口に著作権と言っても、モノが違えば法律も違う。

テキストデータやコンピュータープログラムなんて、単純なほうだったのです。
原盤権って何よ?なんで著作者以外のレコード会社や放送局が、著作権法で特別に定められた権利を持ってるのよ?もうその辺、オリジナルをクリエイトした人に対するリスペクトとか当然の対価とかの世界を超えて、商売としてやっていくための規定になってるんですね。流通に関してはすべて契約で好きなように決められるようにしてくれればよかったのに。

その程度の知識と意識しかない私にとって、こういう本はまず入口に立つために必須という感じです。ただ、この本はヤマハから出ていて、著者もレコード業界の人なので、インディーズとかCreative CommonsとかGPLとかの人が読むと、”この業界ってなんか搾取してるっぽい”などと感じてしまうのかもしれません。

搾取というよりは、規定しすぎて自分たちの首も締めてるかもしれない。流通コストがゼロに近くなっていって、楽曲の著作者=著作権者=実演家=レコード会社=放送業者になった暁には、まったく違った権利が主張されるようになるのかもしれません。

その道の権利処理で食っていくためには、この本の事例だけでは全然足りません。場数&知識を増やす努力を続けていきます。以上。

April 10, 2010

福井健策「著作権の世紀」208

新書で200ページ強。カバンに入れておいて、移動時間や待ち時間にとぎれとぎれに読んでもOK。専門用語をほとんど使わず、きわめて平易な文章で、法律論をさけて今世界で起こっているさまざまな事象を紹介し、それらの置かれた状況を解説した本です。

著者はネットでも紙の上でも積極的に執筆を続ける著名な弁護士ですが、知らずに読むと弁護士じゃない人の本みたい。これってすごくほめてるつもり。法律家の書いた本の中には、文章が硬すぎて、苦手な人は逃げ出しそうになるものもあると思うけど、この本は本当に気軽に読めます。

著者がさまざまな新しい音楽やアニメやネット文化にも関心を持ち、それゆえにそれぞれの魅力や弱点を理解してるのも重要なポイントです。

今後の著作権法のあるべき姿について安易に結論を出さず、自論を展開してそっちに導こうという偏りもなく、むしろさまざまな主張を紹介して、「判断するのは読者自身」という姿勢を徹底しています。なにか単純な答が欲しくてこの本を買った人は不満かもしれないけど、法律って「大勢でみんなのために決めたルール」でしかないので、これが現実だということを思い知って、当事者意識をもってみんなが苦労して考えることが大切ではないか・・・と、著者はしずかに訴えているようです。

・・・しかしほんとに法律ってぐちゃぐちゃだなぁ。いくら努力しても、どうにもならないんじゃないの?と、考えるのを辞めたくなる瞬間もありますが。

この著者の講演会とかナマであったらぜひ聞いてみたいと思いました。以上。

November 17, 2009

八代英輝「コンテンツビジネスによく効く著作権のツボ」184

最近ちょっとこういう世界から遠ざかってるなーと思って、できるだけ新しい著作権の本を図書館で探してこの本を見つけました。2006年発行だけど、著作権法は変化が早いから、事例はすでに懐かしく感じます。

表紙を見るとかなり初心者向けっぽいけど、中身はマンガでもなく特に絵が多いわけでもなく、ふつうの法律の解説書です。でも決して難しい本ではないし、事例が身近だし読みやすいほうだと思う。

しかしちょっと物足りない気もします。もうすぐジュリストの著作権判例百選の最新版が出るので、忘れずに買おう・・・。

October 02, 2008

藤野仁三「特許と技術標準」135

改めてちょっと標準化のお勉強をすることにしました。で、これが参考書その1。
筆者は知財畑の法律家で、だからなのか、いままでの自分の経験とぴったり重なってうんうんと実感でき、面白かったです。内容はタイトル通り、公共性の強い標準化と独占排他権を付与される特許とのコンフリクトに絞ってあって、まとまりのある内容です。(2800円で146ページ、割高感はあるけど)

特に、特許と標準のせめぎあいによって標準が形骸化していくという懸念について語るときに、「だから難しい」と終わらずに、積極的に特許のJASRACみたいなのを作ろう!という提案をしているところが、なんかポジティブで楽しくなります。

さてもう一冊も読み始めよう。