映画)日本(90年代以降)

March 11, 2012

私立探偵 濱マイク 12 利重剛監督「ビターズエンド」337

SIONが、マイクの少年院仲間として登場。血も涙もない殺人者として恐れられている彼は、銃の取引で金を持ち逃げした少年を追っています。少年の恋人に暴力をふるって居場所を吐かせて、銃を片手に少年を倉庫に追い詰めたら・・・。

「仲間を命がけで助ける」というマイクの信念が貫かれて、せつなくも感動的なラストでこのシリーズは終わります。
SION自身の歌が流れて、最後はもうSIONが主役…という印象を強くしすぎたのは、シリーズ最終作としてはちょっと微妙な気もします。じっさいこの回はSION以外はそんなに強い印象がありません。このTVシリーズの頂点は、自分としては石井聰亙監督「時よとまれ、君は美しい」だったかなと思います。

さて、今度は改めて劇場映画のほうも見直してみたい…けどレンタルしてないんだよな…。買うか…!?

February 05, 2012

「色を奏で いのちを紡ぐ 染織家 志村ふくみ・洋子の世界」334

2011年作品。

色って何だろう?
それは光がものに当たって反射し、目を通じて脳で感知された反応です。
つまり「色」というものがあるわけではありません。
多分人間一人ひとりが感知している、あるひとつのものの色は、みんな少しずつ違う。
違う生き物が感知している色は、もっと違う。
「かたち」や「時間」が誰にとっても同じなのに対して、色ってのはそれらと全く違う「感覚」なのです。

「草木染め」というと、すべて灰色を混ぜたような色で、なにか年寄りめいていて、枯れて、生命力の弱いもののような印象がありますが、要は草木の血液の色を糸に移したものなんだな、とこの映画を見て思いました。静かにだけど、植物も生きています。糸にその色を移すために植物を殺す場面から、この映画は始まります。

志村ふくみという86歳の現役染織工芸家と、その娘で同じく染織家の志村洋子のことを描いたドキュメンタリーであり、おそらく学習目的で使われる映画なのですが、絵画や染織、あるいは光や色に関心のある人にとっては、とても新しい刺激のある作品ではないかと思います。

ふくみさんは、色はいろであり、人間の中のいろを自分の肉体で表出するか、それとも糸に染めるか、という問題でしかなく、中にいろがなければ染めなどできない、というようなことを言っています。86歳にしてなんと艶やかな。

女性の色は赤だけど、赤という色はどこにもない。若い娘の薄桃色は紅花の花びらを煮出して作る。燃えるような朱色は高野山の槇の木の皮から出たけれど、山を下りてしまうと同じ木からもう茶色しか出ない。藍の色は新月に仕込むと満月の頃にいい色になる。…化学式で書けない、天然の生物のいとなみの多様さが面白いです。

インタビュー、昔からの写真、工房での作業、作品といった映像の合間に入る山や川や木々の映像がすばらしく美しいです。手元に置いておいて、謙虚な気持ちになりたいときに見たいと思います。

と書いても、これを読んでこの作品を買う人はいないと思うけど、図書館にあるかもしれません。発売元は紀伊国屋書店。ぜひ探して見てみてください。

教養映画ということで制作者のクレジットがたいがいの通販サイトには出てませんが、リスペクトを込めてここに記載します。
演出 中村裕
プロデューサー 塩崎健太 深水真紀子
撮影 牛島悟郎
編集 小倉康徳 橋本拓哉
演出補 松本智恵

特記事項としては、2011年キネマ旬報ベストテンの「文化映画」第2位の作品です。
以上。

January 29, 2012

北野武監督「あの夏、いちばん静かな海」333

1991年作品。
90年代といっても、80年代バブルの名残のくりくりソバージュと太眉、巨大なイヤリングなどがさびしく健在。飽食に疲れたバブルの民が求めたせつないファンタジーというかんじの映画です。

聴覚障害者どうしの恋愛なのに、実際に町で見かける人たちのような、手話で盛大におしゃべりするシーンがなく、ひたすら沈黙しています。リアリティじゃないってことでしょうね、監督が求めたのは。

問題は主役の二人のキャスティング?
真木蔵人はサーフィンを始める前から、明らかに身体を完成させている本物のアスリートだし、大島弘子は地方出身で短大に通っているオシャレ大好き少女にしか見えません。
真木に対してもっと野性的な、もうすこし不幸な雰囲気のある女の子をあてれば、もう少し実感できたかも。
大島に対してもっと頼りない、荒んだ雰囲気のある男の子をあてれば(以下同じ)
この主役の二人の間に、ことばにならない愛とか絆とかがあったということが、ひとつも実感できないのです。
マンガかアニメにしたほうがよかった。実写で作るのに実在しない人たちを並べるのって、なんか変だ・・・。
この映画が興行的に成功する理由は、ファンタジーへの郷愁を強く起こさせるからだと思うけど、それはこの映画の完成度と直結してるわけじゃない、と感じます。監督に、これが「実験」でなく「自分にとって一生に1つだけの映画だ」という覚悟があったと思えないのです。すこしだけ、ろうあの人たちに失礼な感じもします。彼ら彼女たちはろうあであるという以外はそうでない人たちと同じであって、せつなさを演出するために身体の不便さを利用するのは安易だと感じます。

1991年以降のわたしたちが心の中に持っていた、なにか本当のものへの憧れを描こうとして、それを掴むことに成功した作品でした。黒澤明の作品にもよく感じるけど、マスで当たる作品ってそういう「ツボ」を突いてるってことなんだなぁ。・・・以上。

January 18, 2012

私立探偵 濱マイク 10 竹内スグル監督「一分700円」330

かつてマイクが世話になった牧師が人探しを依頼してくる。ある人間的な感情をもてない少年の行く末を案じてのことだった。彼は殺し屋になっていた。殺そうとする相手とロシアンルーレットをやって、まだ負けたことがない。スピード写真のブースで、人を殺すたびに神様に「僕はまだ許されてますか」と話しかける。・・・という男のストーリー。

絵よりストーリー重視で作られている作品だと思いましたが、描きたかったのは起承転結のある物語ではなく、上記の設定なのかな、という印象です。浅野忠信が演じる、スピード写真のブースを懺悔室の代わりにして神様に話しかける、若くて美しくて心を失った殺人者。それだけで1本作っちゃった、という。十分に魅力的な設定ではあります。でも、薄いというより、掘り下げる気がそもそもないのかな、とも感じます。見ている人に対して背景や詳細を提示しないだけではなくて、設定そのものがひとつの人格として生きるところまで作りこまれてない、役者さんたちもそこまで深く理解しないまま演じている、という感じもあります。人間を描いた「ドラマ」というより、イメージビデオのつもりで見ればいいのかな。。。
私としては、中村達也が赤いシャツでバーカウンターにいる姿にびりびり来ました。

・・・あ、わかった。この作品を作った人は、浅野演じる殺人者に遠くから恋をしてる人だ。深く知らない、知りたくもないけど、素敵すぎてずっと見ていたい・・・という。小説じゃなくて肖像画なんだな。だから「イメージビデオ」で当たり。方法論自体にはいいも悪いもないと思うし、このシリーズはいろんな実験があって本当におもしろい、学べる、と改めて思います。 ・・・以上!

January 15, 2012

松本人志監督「さや侍」329

2011年作品。

これで、今までに公開された松本人志作品は全部見たことになります。
NHKでやってた「松本人志のコントMHK」スペシャルで、この作品をヨーロッパで上映した時の観客の感想インタビューをやってましたが、絶賛する人たちにまぎれて「大好きだったのに、がっかりした。もう見ないと思う」という人もいました。
この結末は確かに・・・・。

松本人志の笑いって、イジメとスレスレですよね。(欽ちゃんもそうです)不器用な人にわざと戸惑うようなタスクを与えて、うまくやれない様子を笑う。そこには、人間ってダメだよね、切ないよね、はかないよね、そこがおかしいんだ。…という無常感があります。その無常感がこの映画の結末では強く出すぎているような気もします。それはサムライとして、男としてのプライドでもあるのかもしれません。彼の考えを突き詰めていくと破壊的な方向に向かっていかざるを得ないのかもしれないけど、もう少し肩の力を抜いて見られる娯楽作品でいいんじゃない?という気もします。

日本には自分の命を軽くみる文化がある…ということは戦争だけでなく、歌舞伎とかを見ていても思います。愛する人の命は何が何でも守るけど、自分の命を差し出すことを厭わないのが美である、という。
そんなことを考えたりしました。

次の映画は、人を殺し続ける宿命を背負った座頭一とかゴルゴ13のような殺し屋が主人公の血なまぐさい映画なのでは?などと思いつつ今日のところはこのへんで。


January 13, 2012

私立探偵 濱マイク 9 中島哲也監督「MISTER NIPPON~21世紀の男」328

これおもしろい!
この回のこともよく覚えてるけど、あらためて見直して、作りこみの素晴らしさに感動さえおぼえます。この監督、「告白」とか「嫌われ松子の一生」とか、この作品(2002年)のあと最近になって大活躍してますが、そりゃ当然だ。

ファッションブランドのCFのパロディみたいな濱マイクの世界をよく完成させています。松方弘樹、ペー&パー子…黒幕には、いまやサラリーマンNEOや「カーネーション」の母親役でコメディの真骨頂を演じている麻生祐未!大どんでん返しに次ぐ大どんでん返しの果ての光浦靖子、ひるがえって杉本彩!そういった味の濃い有名タレントを、知られているキャラクター込で生かしています。このやり方だと、視聴者がすでに持ってる知識を引き出せる分、説明の時間が要らない。ひっくり返すだけで面白い絵が作れる。このやり方はまさにCMの作り方ですね。

ここに来て濱マイクTVシリーズが完成形に近づいてきている…ような気さえします。

あと、音楽のセンスも大変良いです。ミスターミュージック所属音楽プロデューサー、渡辺秀文という人ですね。覚えておきます。

ファッションセンスは、あくまでもオーソドックス。役者さんの外から色をつけようとしないで、すでにその人がもっているイメージを生かすoutfitを貼り付けてます。永瀬正敏に「ど根性ガエル」のピョン吉Tシャツは似合いすぎ。

たいがいの回に出てくる、みずみずしい美少女が今回は派谷恵美という人です。ほんとに素敵。悪くて勝手でうるさいけど、ガラスみたいに透明。このシリーズに出た人がその後どういうふうに成長していったかを見るのも楽しみです。

うーん、ほんとにこの回いいなぁ。自分で作るならこれがいい。(←かってに言ってろ)

今日のひとこと(ひさしぶり):「超がつくほどのね!」

December 31, 2011

私立探偵 濱マイク 8 石井聰亙監督「時よとまれ、君は美しい」321

久々に二回見ました。やけに見応えがあるなと思ったら、監督が石井聰亙です。
バイオレンスのシーンが胸にガツンと響きます。構成の起伏もシーン転換のタイミングもスカっと決まっていて、45分間という短さを感じさせません。ゲームやニュースサイトの画面もそれぞれのキモをとらえているし、なにしろドアを開けるシーンひとつをとってもカツーン、カツーン、と決まって、いい音楽みたいにゾクゾクしますね。どの回も、少なくとも静止画を見るととても魅力的だけど、この長さをしっかり構成して見せることとか、タイミングの妙とかが、映画というサイズをずっと作っている人とそうでない人の差なのかもしれません。

今回のストーリー:依存性の高い「YES」というネットゲームが禁止されたが、ユーザーたちがその開発者をカリスマにまつり上げて新興宗教を興す。実はそのカリスマは、マイクが子どもの頃に一時期一緒に過ごした孤児の姉弟の、弟のほうだった。マイクに助けを求めてきた姉を救おうとして、マイクは事件に巻き込まれていくが、裏には裏があり…。

弟役に、まだ若い瑛太がEITA名義で出てます。(影が薄いけど)
姉役の渡瀬美遊がとても素敵で、まさに、この瞬間の彼女の美しさを記録した映画です。

今回も、マイクが着てる、いったいどこで買ったんだ!?という感じの青い花柄のシャツがステキ☆

December 11, 2011

私立探偵 濱マイク 7 岩松了監督「私生活」317

今回は、パチンコの景品交換所にいる”情報屋”の謎の女=小泉今日子の裏の顔がフィーチャーされています。当初、男に尾行されているマイクが彼女に情報を求めると「私はあなたの私生活を知らない」と何の情報ももらえないのですが、実際に知られていないのは彼女のほう。狂言誘拐事件の影の黒幕らしいのですが、それ以外にも妻子ある男性の病室に通い続けるのはいったい…?

今回もちょっと不可解だったなぁ。わずか48分の中に映画的な世界を作っていたとは思いますが、この1回だけで結びきれてないような印象です。毎回監督が違っていて、1回読み切り風ですが、続きもののドラマなので、今回は続きものとして最後の回にまとまるための途中経過という部分があったのかもしれません。

キョンキョンと永瀬正敏はこのシリーズのあと離婚したっけなぁ、そういえばキョンキョンと友達らしいYOUはこの頃は松岡俊介と結婚してたんだっけ、などと下世話なことを考えながら見ると若干スリリングな気もしてきます。(ほんとか)

引き続き見ていきます。以上。

December 06, 2011

私立探偵 濱マイク 6 青山真治監督「名前のない森」315

これも2002年作品。

濱マイクらしくない、サナトリウムのようなところが舞台。閑話休題というか、外伝というか。
施設長が鈴木京香で入居人に大塚寧々など。おっとまだ初々しい菊池凛子が出てる。(余談:彼女のプロフィールを見てたら、新藤兼人「生きたい」でデビューしたとあります。ちょっと見てみたくなりました)

そして、「マイクに似た木」が近くの森の中にあります。森は本人の心。森の奥に何を見つけるかは、人によって違うのでしょう。鈴木京香が、入居人それぞれに、ヒントのような答えのようなことをささやき、彼らは「本当に欲しいものを見つけるとそこを出ていく」。

おもしろ・・・くもあるけど、深いというより、若いときの感受性のままの世界という感じです。これを濱マイクシリーズであえて作る必要はべつにないと思うけど、作ってみたかったのかな・・・。

私立探偵 濱マイク 5 須永秀明監督「花」314

2002年。濱マイク テレビ版の5本目。
Number Girlの演奏がかっこいい。窪塚洋介の狂いっぷりがすごい(奇しくも、日曜に見た映画では安倍清明役でした)。9年たつとみんな大人になるなぁ。

画面のかんじはいつもの濱マイクの世界で、カラフルでヒッピーでいかれてて最高ですが、かわいそうな女の子や茜の誘拐といった事件が次々に起こって、あんまりストーリーは頭に残りませんでした。

冒頭で書いたNumber Girl、窪塚のほかにも、hitomiの「バーン!」は彼女らしく非常にチャーミングだしその他すべてビジュアルのレベルはとても高いです。以上。