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April 2019

April 30, 2019

朝井リョウ「世にも奇妙な君物語」456冊目

朝井リョウってすごく「うまい」作家だと思うけど、この小説では文章より、着眼点やギミックの巧者という印象がありました。

どの短編も視点がちょっとイジワルで、しかも最後の最後に”脇役バトルロワイヤル”という趣向を持ってくるというひねくれっぷり。この後もこういう小説を描き続けてるのかな。

ただ、人があまり注目して欲しくない部分・・・例えば、脇役役者(ほぼ実名じゃん)自身の脇役たる部分を執拗にほじくる、ということをしていても、冷たくはない。笑いものや、晒しものにしておわり、ではなく、みんなが見ていなかったところにすっごく面白いものがたくさんあるんだよ!って言いたいのかな。

書けば書くほどますます力をつけていきそうな作家さんだなぁと思うので、また読みます。

April 21, 2019

パブロ・ネルーダ「2000年」「大いなる歌」454、455冊目

「イル・ポスティーノ」という映画を見ました。イタリアの小さな島に、南米チリを政治亡命した詩人がやって来て、彼の家に毎日郵便物を届けるだけの仕事をしている地元の青年と交流する、という映画。その詩人が実名でパブロ・ネルーダなのです。彼がそういう島に移り住んでいたというのは史実で(郵便配達人とそういう交流が実際にあったかどうかは不明)、口伝えした詩も本物だったんじゃないかと思います。

「2000年」は晩年の著作で極めて薄い、本文40ページ程度の本だけど、「大いなる歌」は500ページ近い大著。記された言葉は、「大いなる歌」の方が、行間から美しいエネルギーが立ち上るようです。

政治犯という存在は、私からは遠すぎて理解も共感もできてません。革命に走るほどの困窮や、その中から立ち上がる人の姿を目の当たりにしないとわからないのかな。いつか南米に行けたら、もう少し知ることができればいいと思います。

April 20, 2019

川村元気「億男」453冊目

ヒットメーカーの小説、さすがの面白さ。

ただ、人気漫画のあらすじを読んだような気持ちで、理解できるし面白いけど、きれいにまとまりすぎていて心に引っかかるものがなかったです。「シェルタリング・スカイ」?と思われる北アフリカが舞台の映画が出てくるのとかマニアっぽいけど、グッとくる!というには、癖とか匂いみたいなものを感じない。そして、意外に「教訓」がちゃんと示されているところが、クラシックな印象。芸術家じゃなくて、全体を見渡して弱点を補強して最強の作品を作る「プロデューサー」っていう才能のあふれてる人なんだな、と思いました。一般読者の私ごときがいうことじゃないけど。

April 14, 2019

朝井リョウ「何様」452冊目

面白かった。実に面白かったです。

「桐島」は”スクールカースト”という、存在するのかもしれないけど私が一番無視したいものについて語られることが多すぎて、この作家を評価できないままになっていたんだけど、この本を読んで、朝井リョウという人の観察力、洞察力、表現力等々について見逃していることがたくさんあったと気づきました。

学校はいつか卒業(orドロップアウト)するもの。長居したいと思ってもすぐに終わる。私は学校での人間関係にあまり興味がなかったけど、特に夢や希望があったわけでもなかったなぁ。などと遠い昔に思いを馳せることは誰にでもできるけど、こういう作品に結実させられる人はほとんどいない。すごく平凡な日常しか描かれてないのに。

他の作品ももっと読んでみよう。

April 05, 2019

さだまさしと愉快な仲間たち「うらさだ」450冊目

すごく面白かったし、さだまさしのことを私はずっとあなどっていたなぁと認めざるを得ない気持ちなんだけど、看板に偽りあり!

だってさだまさし自身は、一行も書いてないんだもん。

さだまさしを愛する、あるいは崇拝する、あるいは果てしない友情を注ぐヤケに旬な男たち女たちが、語る語る。

高見沢俊彦はわかる。泉谷しげるも、今ならわかる。でも小林幸子、ホリエモン、カズレーザー、若旦那(湘南乃風)というのは、”一周回って戻ってきた”のかなという印象。

泉谷しげるに、カッコばっかり突っ張ったロッカーなんかよりずっとパンクだロックだ、なんて言われるのは最高の栄誉だと思います。本当にそうで、黙って自分の信じることをやり続けるほど根性があってカッコいいことはありません。

生さだ見なきゃ!!と強く思わされた一冊でした。

というか、これからも私は彼の音楽には五感的にはあまり興味ないと思うけど、ますます尊敬してるよ。