佐藤正午「月の満ち欠け」396冊目
一番好きな作家の"20年ぶりの書き下ろし長編小説”ということで、4月発売だしそれなら大きい書店の店頭にあるかなと思ったら、1軒目にはなく、2軒目でやっと買えました。こんな新作があるなら、ゴールデンウィークは旅行しないで家でまったり読書でもすればよかったかしら、と一瞬思ったけど、半日で読み終えてしまったので、やっぱり旅行して正解でした。
どうでもいい前置きはこのくらいにして、感想を言いますと、いつもの圧倒的な筆力でグイグイ読ませるし、じわっとそれぞれの登場人物に引き込まれていくし、面白かったけど、なんでこの「生まれ変わり」っていうテーマに行き着いたのかがちょっと謎。この人の小説には、何かに突き動かされて一人の人を追い続ける人がちょいちょい出てくるけど、生まれ変わってまでストーキングを続けるような「愛情」だとは思ってなかった。そういう一途な思いを持ち続ける人は主人公ではなく、悪役的な脇役のことも多いし。
幸福な結婚をして添い遂げる、というのでなく、未婚のまま、あるいは婚外恋愛として思い続けることも多い。
誰かをそこまで思い続けるってどういう感じなんだろう。
誰かをそもまで思い続けながら、形ばかりの結婚生活を送るのって、どういう感じなんだろう。と、ちょっと戸惑っています。
「何かを追い続ける」または「何かから逃げ続ける」というテーマを深掘りしていくうちに、時間や場所を超えてさらに現世を超えてみた、という実験なのかな。
個人的には、正木が生まれ変わった少年に出てきてもらって、二人を邪魔してみてほしかったです。
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