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June 2016

June 26, 2016

萱野稔人・小林よしのり・朴順梨・輿那覇潤・宇野常寛「ナショナリズムの現在」351冊目

これは面白かった。
最初の、5人の対談が特に面白い。5人バラバラに見ると、アクが強いな〜〜と思って引くことも多いのに、3すくみ、ならぬ5すくみというか、あっちに偏りこっちに尖っている意見が、大きな円のなかにすっぽり包み込まれたように、生き生きと前向きに感じられてきます。なんかすごい。


言葉に引っ張られるな。えらそうにテレビやネットで批判をくりひろげる人たちの意見の本質を見抜け、中身のなさを突け。自分の目で見て頭を使って疑え、考えろ。日本が、自分が、今こうなっているのは誰のせいだと責める暇があったら、何をどうすればいい方向にいけるのかを提言できる大人になれ。
この本の伝えたいことを、そんなふうに私は受け取りました。


図書館で借りちゃったので返すけど、この本はもう少しゆっくり読み直してみたいです。


June 21, 2016

C.ダグラス・ラミス、姜尚中、萱野稔人「国家とアイデンティティを問う」350冊目

わりと面白かった。
この3人が、国家って何よ、国民って何よ、といったことを議論する、わずか60ページの岩波ブックレットですが、それぞれの立場がそのままそれぞれの意見を形成していて、やっぱりいろんな立場の人と話をしないと面白くないなぁ、と実感します。


ろくに選挙にもいかずに「国が悪い」「政府が悪い」という人たちには食傷していて、国籍ってのは選べるものなんだから、嫌ならお金をためたり資格をとったりして外国籍をとって海外に行っちゃえばいい、と思うのですが、「それでも住み続けるの当たって」の覚悟を持つのも潔い事だと思います。


萱野稔人「ナショナリズムは悪なのか」349冊目

津田塾大学に総合政策学部というものができるらしい。
社会科学系の学科は国際関係学科しかなかった。
そもそも学部が一つだけだった女子大に、いまなぜ新しい学部が。
その謎をとくのが、同大学きっての著名教授、萱野稔人ではないかと思って、読んでみました。


この本自体は、うすっぺらい感覚的なナショナリズム批判を批判するもので、根拠も検証もなにもない議論が嫌いな私としては存在意義はあると思うんだけど、批判だけの本って読んでもあんまり面白くないですね。


むしろ批判される側にたって持論を繰り広げる本を読んでみたいと思うので、次にいきます。


June 15, 2016

ジャニス・P・ニムラ「少女たちの明治維新 ふたつの文化を生きた30年」348冊目

面白かった!
津田梅子や山川捨松のことを書いた本は何冊か読んだけど、どれも偉人伝ばかりで、この本は彼女たちの肉声をたっぷり拾い上げていて、ここにきて初めて彼女たちに出会ったような気持ちです。
生まれ育ちから渡航、お人形のようにどこに行っても注目され、可愛がられる少女時代、帰国後の手のひらを返したような孤立、充実の中年期から晩年。この二人に永井繁を加えた3人の一生を思って、涙がでました。


どうやってこんなに調べられたんだろうという驚きでいっぱいなのですが、アメリカ的なドキュメンタリー手法なのかもしれません。徹底的に調べて詳細までがっつり書き綴る。日本ではあえて書かないような、当時のアメリカ人になりかわったかのような身分トークや「私が一番!」という少女らしい自慢も書いてあって、ひたすら高潔なだけの梅子のイメージを持っていると、最初は「ええっ」と引いてしまうのですが、最後には、ああやっぱりこの人も、私たちと同じような人間だったんだ、と感動します。


すごくすごく良い本です。このまんま連続テレビ小説にして、魅力的な若い女優さんたちに演じてほしい。そしたら彼女たちのことを、みんな本当に好きになると思います。