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May 2016

May 30, 2016

米原万里「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」347冊目

まさかのノンフィクション。
まず、ノンフィクションにこのタイトルをつける感覚がすごい。
かつて、当代一のエッセイストと呼ばれた故・米原万里の本をちゃんと読むのは初めてです。


まず何が面白いかというと、人物描写が率直でおかしい。
”あけすけ”過ぎて、そこまで言うのはあんまりだ、と思いそうになる直前のところで、明るさと人間愛のようなものに引き戻される感じ。
第二に、このシチュエーションは普通ない。父親が日本共産党の幹部ということも稀だけど、その父がチェコにある共産党の出版物の編集部に出向することも普通なく、その子供としてそこに住んで、ルーマニアやユーゴスラビアの同様の子供たちといっしょになって遊ぶという機会を得る確率は、かなり天文学的に小さいはず。
そういうある意味平和な時代など、共産党というものが起こってから今に至るまで、連続10年間もなかったんじゃないか、と思えるくらい、時間軸的にも貴重。
第三に、著者が30年後に当時の友人たちを各国に訪ねるという行動は、時間もお金も行動力も情熱も、非凡でなければできないことだからすごい。
この本全体に流れているのは、青年のように清潔な理想主義なんだ。共産主義というものが、不平等を解決できると真剣に信じた人たちがいて、それが時間を経てあとかたもなく散り散りになってしまったことが、彼女にはすごく切なかったのかもしれない、私たちは面白く読んでるけど。


May 25, 2016

児島和男「ナスレッディン・ホジャのお話」346冊目

「ナスレッディン・ホジャ」というのは、日本でいえば一休さんというより吉四六さん。とぼけていて、馬鹿なのか賢いのかわからないトルコのおじいさんなのですが、先日旅行したウズベキスタンでも絶大な人気。みやげもの屋で、このおじいさんのいろいろな場面をかたどった人形を見ないことはありません。スイカを食べていたり、楽器を奏でていたり、"チャイハナ"と呼ばれる喫茶店でくつろいでいたり。あちこちに、ロバに乗ったおじいさんの銅像も建っています。常に顔いっぱいの笑顔。なんとも覚えにくい名前ですが、あまりにしょっちゅう見かけるので、帰国してから本を探してみたら、何冊かありました。


どのエピソードも、単純に笑える感じでも、賢さに感心する感じでもなく、微妙~なのが多いです。その辺が一休さんじゃなくて吉四六さんふう。それでも、当り前を疑ったり、視点がユニークだったりと、実に愉快なおじいさんです。中央アジアの人たちの気質が、少しはわかるかな・・・?


中山恭子「ウズベキスタンの桜」345冊目

さまざまな重要任務を歴任してきた官僚・政治家ですが、1999年にタシケントの日本大使館に大使として赴任した直後に、隣国キルギスで現地で働いていた日本人が誘拐される事件が起こったのは彼女のキャリアの中でも特に大きな難局だったのではないかと思われます。
誘拐事件の時の状況や、ウズベキスタンでの日々を、ひとりの滞在者の視点でつづっていて、決してセンセーショナルな事件本ではなく、現地の人々の優しさや親しみやすさが伝わってくる本になっています。


May 24, 2016

片田珠美「自分を責めずにはいられない人」344冊目

続いてもう一冊読了。
「自分を責めずにはいられない人」にも、当てはまるなぁ。がっかり。
私の場合は、親から間接的に期待されたり追い込まれたりしたんじゃなくて、明らかに家族のなかで一番困った子という扱いをずっと受けてたんだけど、そういう人たちが家の外に救い?をどうやって見出していったか、という実例が紹介されるわけではなく、悪い該当例ばかりで、やっぱりちょっと滅入る本なのでした。


でもはっきりしたことは、私が求めてるのは、「人に当たり散らす人から、最適なターゲットと見なされないための、いかつい外見の作り方」だな、ということ。わりと単純な、眉毛をうんと尖らせて描くとか・・・化粧濃くするとか、怖そうに見せるとか?たとえばね。わりとそういう単純なことから始めたほうがいいのかも。


一番直近で私に八つ当たりしたおばちゃんは、最初は「あなたは優しすぎるのよ」と言いだした。別に優しくないんだけどね。でも、集団のなかで特にお人好しに見えたことでターゲットにされたんだとしたら、やっぱり外見を怖そうに(笑)するのは効果あるかも。


あと、私はいまそれほどこういうことで悩んでないって自覚した。むしろ今は、悩んでた時期のこととか考えたくないなぁ。わりあい幸せだから。という思いを新たにしたのでした。


片田珠美「上手に「自分を守る」方法」343冊目

わりと、ものものしいタイトル。
私は、わりと「いいよいいよ」と仕事を引受けては、最後にやりきれなくなったり、「お前が全部悪い!」と逆切れされたりするという悪いクセがあって、わりあい被害者意識も持ちがちだと自覚してる。
悪いクセを断ち切るコツがあるなら教えて欲しいなぁと思って、人からきいて本を買ってみました。


この本は、”迷惑・自己中心・鈍感な人から”(自分を守る)ということで、そういう人たちを特定して対処法を提示する形になっているのですが、読めば読むほど、”迷惑、自己中心・・・”のほうに自分が当てはまりやしないかと、かえって不安になってしまったのでした。実際どうなんだろう。自分の心のなかにイヤな部分があることは、自分だからわかってる。それを人にぶつけたりすることは、最近はあまりないはずなんだけどな・・・。


そんなイヤな気分になってしまった本だけど、たまには自分を省みる時間も必要なのかもね。


May 22, 2016

堀川恵子「永山則夫 封印された鑑定記録」342冊目

ノンフィクションです。集団就職で上京して、19歳のときに、たまたま手にした米軍の拳銃で、縁もゆかりもない4人を殺害して、裁判の末死刑になった永山則夫という人について、本人の手記を含めて本はたくさん発行されました。これは、最近になって知られるようになった精神鑑定記録をたどりながら、彼の人間性に深く深く入り込んでいこうとする本です。


新藤兼人監督の「裸の19歳」という映画を見て初めて、どういう事件なのか知ったのですが、この本を読むと、特別な人じゃない、私と同じような素質を持って生まれたひとりの人間が、踏まれて傷つけられてないがしろにされて、そういうことに慣れたり諦めたりしながら、終局にまっすぐ向かって行ってしまったことがわかっていって、なおさら切ない気持ちです。


誰か一人が悪いのでもないし、こうなることを避けるのは難しかったんだろう。人間関係や社会のしくみのひずみが、一番小さい者の中に溜まって重く重くかたまってく。今起きている事件と同じだ。
幸せになれなかったこの人のことを、同じ一人の人間として大切に思っていたいと思いました。


May 18, 2016

東田直樹「自閉症の僕が飛びはねる理由」341冊目

ジャンルとしては、エッセイかな?
「ビッグイシュー」に連載している彼の”往復書簡”で、考えの深い人だなぁと常々思っていたので、単行本を借りて読んでみました。この本は、短い一問一答を集めた形になっていて、自閉症というもの(どこからが”病気”か、という区分が私にはよくわからない)についてわかりやすく答えてくれています。

巻末の短編小説や短いコラムも含めて、私この人、人間的に好きだなぁ。わかりにくくても、いつか通じ合うってわかっていればコミュニケーションを続ける努力ができる。でも、結果が予想できない状態で、ここまで彼を開いてあげられた家族や周囲の人たちの愛情ってすごいと思います。


May 02, 2016

佐々木圭吾・高橋克徳「イキイキ働くための経営学」340冊目

新卒3年目くらいまでの若いサラリーマン向けというかんじの、初心者?向けビジネス書。
「経営学とは」「組織論とは」といったことを、ざっくりざくざく解説しています。
広く浅く、これだけでは「ちゃんと理解すること」はむずかしそうですが、”もやもやとした不安”を抱え始めた人にとっては、経営について考え始める格好の入口になりそう。


なるべく若いうちから、自分の個性を生かせる道を考えられるようになると、年をとってからが少しは楽なんじゃないかな・・・。