堀川恵子「永山則夫 封印された鑑定記録」342冊目
ノンフィクションです。集団就職で上京して、19歳のときに、たまたま手にした米軍の拳銃で、縁もゆかりもない4人を殺害して、裁判の末死刑になった永山則夫という人について、本人の手記を含めて本はたくさん発行されました。これは、最近になって知られるようになった精神鑑定記録をたどりながら、彼の人間性に深く深く入り込んでいこうとする本です。
新藤兼人監督の「裸の19歳」という映画を見て初めて、どういう事件なのか知ったのですが、この本を読むと、特別な人じゃない、私と同じような素質を持って生まれたひとりの人間が、踏まれて傷つけられてないがしろにされて、そういうことに慣れたり諦めたりしながら、終局にまっすぐ向かって行ってしまったことがわかっていって、なおさら切ない気持ちです。
誰か一人が悪いのでもないし、こうなることを避けるのは難しかったんだろう。人間関係や社会のしくみのひずみが、一番小さい者の中に溜まって重く重くかたまってく。今起きている事件と同じだ。
幸せになれなかったこの人のことを、同じ一人の人間として大切に思っていたいと思いました。
« 東田直樹「自閉症の僕が飛びはねる理由」341冊目 | Main | 片田珠美「上手に「自分を守る」方法」343冊目 »
「本)全般・その他」カテゴリの記事
- 半藤一利・出口治明「世界史としての日本史」474冊目(2019.10.27)
- モーリー・ロバートソン「悪くあれ!~窒息ニッポン、自由に生きる思考法」471冊目(2019.10.13)
- 井出明「ダークツーリズム~哀しみの記憶を巡る旅~」470冊目(2019.10.09)
- 齊藤成人「最高の空港の歩き方」469冊目(2019.09.28)
- 角田陽子「名門ホテルコンシェルジュの心をつかむ上品な気配り」468冊目(2019.09.06)
The comments to this entry are closed.
« 東田直樹「自閉症の僕が飛びはねる理由」341冊目 | Main | 片田珠美「上手に「自分を守る」方法」343冊目 »
Comments