小野正嗣「水死人の帰還」325冊目
この作家の一番初期の、学生時代のちょっととんがった短編などが収められています。
これは面白い。
どろっとしたイメージが渦のように回りながら混じり合っていく、というのがビジュアル的な印象。
押し込めていたエネルギーが、どっと放出されるています。
なんとなく、この人の描く「暗黒」の描写があまりぴんとこないんだ。
擬態語として「どろどろ」とか「ぐちゃぐちゃ」のような一般的なものがよく使われていて、いまひとつ感覚的というか音楽的・美術的じゃない。私は自分の母が、田舎のおばちゃんが笑う様子を「ヒーダラ、ヒーダラ」って言ってたのを感動をもって記憶していて、プロの人にはそれを超える表現をしてほしいと思っています。
平らだったところが「ぐちゃぐちゃ」になるというのは、どこがどうなっているということなんだろう。描くならもう少し詳しく書いてほしい。説明じゃなくて、感覚をそのまま伝えてほしい。
物足りないのは擬態語だけなのかな、どうなんだろう。いずれにしても、この作家は一番得意な部分(ワクワクさせるストーリーテリング?)をあえて避けたような文章が多い気がするので、どかーんとハッピーな大作を書いてほしいです。
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