ウィリアム・バロウズ「ゴースト」348冊目
「裸のランチ」はあんまりよくわからなかったけど、これは面白かった。
といっても、わかったとは言えないし、どこがどう面白かったか説明するのも難しい。
奔放だけど知的でなんか学術的っぽくもあるイマジネーション。みたいな感じ。
ただ、「自由」は好きだけど、クスリでイマジネーションを広げる感じはあんまりピンとこないので、ビート派はもういいかな・・・。
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「裸のランチ」はあんまりよくわからなかったけど、これは面白かった。
といっても、わかったとは言えないし、どこがどう面白かったか説明するのも難しい。
奔放だけど知的でなんか学術的っぽくもあるイマジネーション。みたいな感じ。
ただ、「自由」は好きだけど、クスリでイマジネーションを広げる感じはあんまりピンとこないので、ビート派はもういいかな・・・。
すばらしい小説だった。
たぶん原文も良いんだけど、翻訳がとても自然で(少し古めかしい日本語。それこそ小津安二郎の映画みたいな)、なんの違和感もなく読めた。
池澤夏樹の解説もすばらしい。作品も深いけど解説はさらに深い。
池澤は、イシグロの作品は普遍的な「人と人との思いのずれ」を普遍的な主題としている、といいます。名画の監督のように、自分の姿を完全に見えなくしている、とも。
戦後とか娘の破滅とか、いろいろな事象がからむのですが、そういうものを積み重ねて読む人を興奮させるのがこの作家のゴールではないのです。最後の最後まで、主人公は長崎でしばらくお隣さんとして過ごした女のことを、共感するでもなく、明確に反発するでもなく、当時こんなことがあったという第三者のような視点で思い出しています。凡人の私は、もやもやした気持ちで読み終えるしかないのですが、池澤夏樹の解説ですべてのピースが一つにまとまって全体像が見えてきました。
作家が作り上げようとした世界の普遍性もすごいけど、それを読み解いてきわめて簡潔に言い表す解説者はもっとすごい。
図書館で借りた文庫本で、ここまではっとすることができるなんて。
やっぱり、日本人or日系人でいまノーベル文学賞をとるとしたら、村上春樹よりカズオイシグロなんじゃないか〜〜?なんて思ったりしました。
だいぶ時間が空いたけど、「オン・ザ・ロード」「吠える」に続いてビート派を読んでみました。
というか飛ばし読みしただけ。
ユニシスの前身のバロウズ社の社長の息子だったんだ、この人。
とんでもない放蕩ボンボンだなぁ。でもこういう人が思いの外長生きしたりするんだ。薬物って、それで死なない程度に続けてれば、実は長寿の秘訣?
文章としてきちんとしているのは、序文とか補講くらいで、あとは効いてるあいだに見たり聞いたりした幻覚を綴ったものなんでしょうかね。カラフルなビジュアルというより、実在しそうな少年少女などが、普通ではやらないこと(カジュアルな殺人など)をする、という、「昨夜怖い夢みたよ」という感じの内容でした。
全部読むのはキツくて、三分の一くらいしか読んでないです・・・。すみません。
なぜ今魯迅?…とくに理由はないんだけど。
借りてきた文庫本には、表題の「阿Q正伝」、「狂人日記」などの短編がたくさん収録されています。
改めて読んでみて…この2作の主人公が、あまりにもダメダメでちょっと驚いた。
ニューシネマか何かか?
阿Qは貧乏で字が書けず、独り者だけど割合ひとなつこい男。プライドばかり高くてちっとも働かないし、そもそもちっともいい奴じゃないので、みんなに疎まれるようになり、あとは野たれ死ぬだけ。。。
「狂人日記」の狂人も、どこか愛嬌があるけど妄想がどんどん大きくなっていって、こっちも野たれ死ぬだけだ。
偉大な作家が書いた、学生の読書感想文の課題がこれなんだ。
なんとなく、こんな生き方だってアリだよ!と校長先生にでも言われてるようで落ち着かない。
まさか「こうなっちゃダメだよ」という意図ではあるまい。少なくとも、そういう印象はまったく受けなかった。不思議な本だ。
だけど阿Qと比べて、自分のほうが高尚って気もしないな。澄ました顔で、心の中ではひとをうらやんだり妬んだりしてるし。まじめな大学も出て定職についてても、そうではない人と何か違うわけじゃない・・・。
呑んだくれのトリックスターと市井のひとびと。暖かいとまでは言えないけど、パワフルに日々を過ごす人たちのパワーも生き生きと感じられる短編集ではありました。
やっぱりこの人は面白い。
ベルギーといえばビールとチョコレートくらいしか知らないけど、日本に生まれ育って自分を日本人だと思っていた、気が強いベルギー人の幼児がいたなんて、愉快でたまりません。
やっぱりベルギー行こう。作者にも、いつかどこかでお目にかかってみたいものです。
非常に多作な人なのに、未読の日本語訳があと1冊しかないのがすごく残念。がんばって英語訳(それすら日本では容易に手に入らない)をかき集めて読んでみよう。
「殺人者の健康法」「畏れ慄いて」「午後4時の男」を過去に読んで衝撃を受けたこの作家ですが、その後またいくつか翻訳されているようなので図書館で借りてきました。
彼女がどれだけイジワルな作家か、もうわかっているつもりなので、きれいなハッピーエンドなどあるわけないと思ってましたが、やっぱりそうきたか。思い切り自由な書きっぷりです。
初めて「殺人者の…」を読んだときは心底度肝を抜かれましたが、最近かなりショッキング系の映画をたくさん見るようになったので、アンチクライマックスにも救いのない結末にも慣れてきました。それでもやっぱり、この人の作品には読み応えがあります。若い女性たちの心理を丁寧に描いているからかな。読めば読むほど興味深い作家ですが、残念なことにかなりの数の作品があるにもかかわらう日本語訳がほんの少ししか出ていない。フランス語はまったくわからないので、せめて英語訳を探してみるべきか…。読めるかなぁ…。
これも文春で読んだだけですが。
「火花」と対比して読むと面白い。こっちに出てくる人たちは、一見みんな腹黒い。人の顔色を伺ったり、腹を探ったりばかりしてる。その実どこか誠実でまっすぐなんだけど。
そして、こちらは書き慣れていてこなれてる。楽しくどんどん読める。これからどうなるんだろう?と思う。お祖父さんのその後をずっと読みたくなる。
ただ、登場人物のまっすぐさが(cf. LIFEに出てくる「まっすぐ彦助」みたい)底のないそのまんまのまっすぐさだと、広がりはあんまり期待できないのかなと思う。様子をみたいです。
文藝春秋を買っただけだけど、感想書きます。
すごく熱いものを感じさせる作品で才能あると思うけど、内向的すぎるのと、オチが一般の人から見るとちょっと突拍子ない感じじゃないかな、と思いました。でも、次も読みたいと思うし、プロの作家としてやっていけそう。…というのが印象。
主人公も先輩も、先輩の昔の彼女も今の彼女も、みんなみんな優しすぎる。とことんいい人ばかり。それぞれ特徴があっていとしくなるけど、又吉氏が「もっといやなやつ」をどう描くのか、見てみたいな。
特に前の彼女のマキさんが、「美人でいつも笑っている」「ご飯を作って待っている」「芸人の男のためにキャバレーで働いて食わせている」というひたすら献身的なだけの女なんだ。芸人と別れて客と付き合い始め、その後子供を連れて幸せそうにしているのを目撃される。
作者はとっても純粋な人なんだろうな。でも、マキの心の中の真っ黒な部分(あるかも)にも目を向けて、もっと深く深く切り込んでもらってもいい、と思います。
そして落ちのつけかた。これは、ユニークな芸人のコントの落ちだ。小説を読みなれた人はびっくりする。書きなれてきたら、こういう突拍子もないエピソードが、さらに増強されるのか?だんだんマイルドになるのか?違う何かに化けるのか?ちょっと楽しみです。