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May 2015

May 27, 2015

斎藤憲二「株式会社ドバイ」291冊目

これはいい本だった。他がダメだというより、いままでに読んだ他の本と違ってバブル崩壊後に書かれた本だという点が大きいです。猫も杓子もドバイドバイと騒いだあと、確かめもせずに「終わった」という人たちが現れ、現地でずっと状況を見ていた著者=なんと在ドバイ日本総領事館主席領事が、「ああもう、そうじゃないんだよ〜」とばかりに書いた本です。
ドバイの歴史をざっくりとたどったり、経済面についてはデータを示してくれて、学べる部分が多い。

要は、日本のマスコミは新聞雑誌テレビすべてにおいて、とにかく国外の情報が薄いので、ただでも薄い情報を真に受けたりしないで、少しでも一次情報に当たらなきゃなと思いました。

ドバイ行って日本総領事館でビジネスの相談がしたくなりました。マジで!

May 24, 2015

福田一郎「ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか」290冊目

ドバイ本も4冊目になると新しい情報がないです。
著者のせいではないです、4冊目だから。
あと、この本が書かれたのもドバイが万事急上昇中だった2008年の本だから。
そして、お金持ちが集まる理由は、ドバイが0タックスのハブ地、観光地として国をあげて開発を行っているから。

ただ、ドバイはアラブ首長国連邦、そして「GCC」の中の一首長国であり、石油を持っていようといなかろうと、近隣の国が同じ戦略を取ることはそう難しくないと思います。2015年のいま、「5スターエアライン」のリストからエミレーツ航空が消えてカタール航空がランク入り。「砂上の楼閣」の耐久性はどれくらいだろう?興味深いです!

松原直美「住んでみて、わかった!イスラーム世界」290冊目

副題は「目からウロコのドバイ暮らし6年間」。
出版年度は2014年です。

これは「地獄のドバイ」と比較すると”天国のドバイ”といってもいいよう世界ですが、そもそも取り上げられている人々の階層が違います。この本には、家にメイドがいる人たちしか出てきませんが、「地獄の」に出てくるのはメイドやドライバー、より不安定な、建築作業に携わる専門性の高くない外国人労働者たちです。階層が違うと生活はまったく違う。ドバイから重要な貿易相手であり、観光客派遣元と考えられている日本の国民はよほどのことがない限り「メイドがいるほう」。
地獄のほうに陥る可能性のある人は、この国には行かないほうがよさそうです。「地獄」の著者も、シンガポールで働くほうがいいというようなことを書いています。かといって、ふんぞり返って召使いを従える、みたいな世界って苦手なんですよね・・・。日本って、掃除してる人も銀行にいる人も、社長も派遣社員も、わりあいフラットでいいなぁ、と改めて思いました。

May 23, 2015

峯山政宏「地獄のドバイ」289冊目

最近の海外旅行は、老後の移住をうっすらと思い浮かべながら行ってる私ですが(お金ないけど)、ひょんなことからリストに上がったドバイについて、適当に本を取り寄せて読んでみました。良さそうな本も悪そうな本も含めて、こういうときは濫読です。

「地獄のドバイ」の著者はすごく運が悪い。…さらに、若かったからだろうけど、いくつか「あとから考えればわかる」致命的なミスを犯してしまっている。それでも、よりによって日本人が外国人労働者として拘置されるというのは本当に貴重な経験で、おかげで、私のような浮ついた旅行者にもあの国の裏側をまざまざと、リアルにかいま見ることができました。この経験を本にしてくれてありがとうございました。悪いことしてないので、近い将来入国禁止が解かれることを信じます。

で、ドバイの現状だけど、観光ガイドに書いてある「世界一がどんどん作られていて、見どころたくさん」なのは当然、あのような小さな国では外国人労働者によるものなわけで、貧乏を知らない大金持ちが貧しい人たちを雇用するときに、かつてのアメリカとアフリカの問題のようなことが起こることは想像に難くありません。日本人のこの人は4日拘留されただけで済んで不幸中の幸いだったけど、何年もそこに住み続けている人たちのことを考えると、胃が痛んで息苦しくなります。正直、想像することもできない。

「自分が特権階級か何かだと思い込んで、他の人たちに失礼な態度をとること」が、多分私はこの世でいちばん嫌いなんだと思う。あの国に旅行して、もしそういう人たちにしか会えなかったら、もう足を踏み入れることはないだろうな・…。

ということで、次は「ドバイよかったよ」という本を読んでみます。

May 16, 2015

赤川次郎「黒い森の記憶」288冊目

ジャンルはミステリーではなくホラーだそうです。
舞台の脚本のト書きみたいな情景描写がすごく多くて、ストーリーの進行が少ないなぁ。ミステリアスな漫画みたいです。

多分まだ若い頃の作品なんだろうな、60そこそこの主人公が「xxじゃろう」みたいな、昔の老人のステレオタイプみたいな話し方をするの。ストーリーにはわりとひねりがあるけど、おお!というような発見や謎解きのないまま終わります。エンターテイメントとしての、ちょっとゾッとするミステリアスな時間が楽しめる小説でした。

May 10, 2015

雨宮処凛「なにもない旅 なにもしない旅」287冊目

読み終わって暗い気持ちになった。最後まで読んだりしなければよかった。
私はどんな旅行も好きで、なにもなさそうなところのなにもない宿に泊まってさえ、必ず「面白い!」と叫べるほど、好奇心には自信がある。この本もそういう人の心踊る本かと思ったら、「ほーらつまらないだろう」という、がんばらず認められもしない人生を終わりかけているおっさんのやっかみのような本だった。
私はこの著者のことを誤解してたのかもしれない。脱貧困でがんばってるキラキラした目をした人かと思ってたけど、自分より不幸だから貧困層の人たちと仲良くしてる人に見えてきた。

彼女たちの旅は、ときに「当たり」ときに「外れる」んだけど、当たりのときなんて「貧乏旅行」じゃなくて「安くて超お得な豪華夕食の宿」で、外れは予想どおりなのにいちいちわびしいだのがっかりだの、そんな旅行ができて満足だの、私にはとても共感できないものでした。素直に「スッゲーおもしれー」とか言えばいいのに、本当に楽しくないのかしら。

ああ、なんかこの本私はダメです。人それぞれだと思うので、その手がお好きな人にお任せします・・・。

May 06, 2015

村上春樹「Sydney!」286冊目

この本は、村上春樹が2000年9月のシドニーオリンピックを現地取材したときの現地レポート、というよりエッセイです。私は2015年4月〜5月のシドニー旅行にこの本を持って行って、短い滞在だったけどちょこちょこ読みながら過ごしてみました。

15年もたっているのでオリンピックの影はもうなく、オリンピックパークは「Centennial park」となり、彼が滞在した「Royal Garden Hotel」は「Metro Hotel」という名前のくたびれたホテルになっています。彼が退屈でお金ばかりかけすぎているといったオリンピックは、今も多分彼にとっては退屈だろうし、お金はますますかけすぎているようです。
でも、走らない私にとっては、マラソンこそが一番冗長で退屈で体に悪そうに思えるんだけどなぁ。

それにしてもこの本は、ふつう推敲に推敲を重ねる小説家が、なにかの間違いで一発書きの文章を発表することになった、という感じで、ちょっと頑固で子どもっぽい部分が見えてきてとても興味深かったです。
こういう普段の文体や感性は、NHK広報のtwitterアカウントをやっていた「浅生鴨」さんに似てるなぁと思います。

現地の人と積極的に交流するわけでもない人の本なので、現地の雰囲気はあまり伝わってきません。
私が経験したシドニーは、コーヒーがおいしくて人はどことなく明るく健康的で、なかなかいいところでしたよ。