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April 2015

April 26, 2015

斎藤明美「高峰秀子の捨てられない荷物」332冊目

たまに買う「クロワッサン」に、この人はほぼ同じ内容のエッセイを連載してます。単なる転載かなと思うくらい同じエピソードが多いけど、タイトルは別らしい。
文中いつも謙遜してみせる割に冷静な文章を書く人だけど、ほかの内容の本はほとんど書いてないみたいだ。筆者はたぶん、高峰秀子という類まれな英雄と、その類まれな夫に立ち会い、目撃し、伝えるのが自分の人生のミッションと決めて迷わないんだろう。


 


天才女優の桃太郎と、イヌ・サル・キジの全役割を担う夫という役割分担が、1冊通して読んだら見えてきた。日本の男性で、これほど”ナイト”に徹することができる人はあまり見たことがないのですが、結局のところその懐の深さが誰よりも偉大な気がします。英雄の痛みを想像できる純粋さがある人なんだろうなと思います。


 


唯一わからなかったのは、大女優がいつ出汁の取り方を覚えたか。「デブ」と呼ばれる義母が、昔はよく台所に立ったというけど、それはまだ子役の頃だ。結婚してから料理を覚えるしかなかったんじゃないのかな。


 


英雄は、力を発揮するなかで周囲を巻き込んでズタズタにしてしまうことが多い、と思う。すべてを飲み込んで耐えられる高峰秀子って人の強さに圧倒されますが、逆にそれが周囲を狂わせたのかもしれない・・・そういう後ろめたさのようなものを、彼女は養母や兄に持ち続けたのでしょう。
平凡でいることって、本当に幸せだな。としみじみ思います。


高城剛 「サバイバル時代の海外旅行術」331冊目

近所の図書館がリニューアルしたので行ってみたら、キオスクのように、文庫本と売れ線の本ばかりになっていて、がっかりしたので旅行関係の本ばっかり借りてきました。
この本は、かの有名な高城剛氏のいまの本業と思われる、旅行関係のエッセイというかHow-to的な本です。2008年に書かれた本なので、いま見ると新しくない部分もありますが、渡航先情報は外務省じゃなくCIAのサイトを見るといいとか、思わずググって「お気に入り」に入れてしまった点もあります。


 


相変わらずたぶん、海外旅行は安全第一、ハネムーンにパッケージツアーに行く程度、という人も多いと思うけど、今は格安エアラインが旅行好きの間では普通になってきたし、JTBよりHIS、エアもホテルも格安を自分で予約するのも珍しくない世の中です。でもガイドブックは、この当時より状況が悪くなってる気がする。ああいうのって新しくないと役に立たないんだけど、毎年出し続ける体力のある出版社はあまりなくて、「ことりっぷ」と「歩き方」くらいしか書店に置かれてない。旅行に行く人が少ないんだから、しょうがないです。


 


かなり旅行好きなほうだと思うけど、英語の字ばっかりのガイドブックは不便に感じるので、ネットで調べることも多いです。とにかく旅行は楽しい、たまにこうやって出かけなければエネルギー枯渇すると思うくらい。旅を仕事にする、というか、旅する生活にできるだけ若いうちに移行したい・・・。


April 19, 2015

佐藤正午「鳩の撃退法」上、下 329-330冊目

久々の大作。
今回は、「ちょっと腕が落ちた小説家が書いたふうの文体」まで使って、メタ小説のメタ小説を書ききってしまいました。筆力に自信満々ですね。
初回、それに挑むような気持ちで読んでしまったのは無駄、というか無粋だったなぁと今更思います。
いつもみたいに、操られて転がされながらバカのように読めばよかった。あれもこれも伏線なんじゃないかと疑ったりしなければ、もっと結末で驚くことができたんじゃないか。
でも、こうメタメタだと、読む人が疑い深くということは当然の想定なのかな。
「今回は読みにくかった」って感想を書いとけばいいのかな。


 


なんとなく、モヤモヤが残ったままですが、なにしろ長いので再読はもうちょっとあとに取っておきます。


 


ちなみに、「クリーンセンター」は佐世保に実在するらしい。(最近主人公が競艇だか競輪だかに行かなくなったけど、まだ「させぼ競輪」もあるようです)