テリー・ケイ「白い犬とワルツを」309冊目
やさしい小説でした。しかも、ほぼ実話らしい。
かんたんに言うと、アメリカ南部で頑固に家族を守って生きてきた老人が、愛妻に先立たれてから自分が亡くなるまで、徐々に弱っていく彼をどこからともなく現れた不思議な白い犬が支える、という小説。
アメリカ文化講義の副読本として読めば、古きよき南部の、息子に牧師が二人もいるという敬虔なクリスチャンの家庭で、「母のようにして育てられた」ニーリーという黒人女性の使用人との関係が、本当に親しい親戚のようなのが興味深いです。口うるさくて、誰も彼女に逆らえません。
「結婚してほしい。…子どもは何人欲しい?僕はたくさん欲しい。にぎやかな家庭を作りたいんだ」
「ええ。結婚しましょう」(正確な文章はうろ覚え)
これがいいな。そうやって二人は結婚してたくさん子どもを生み育て、老人になって妻に先立たれたときに、毎日何人も子ども達が押し掛けるという、にぎやかで愛にあふれた家庭をつくったのだ。
ひとつの幸せの典型だなぁ。
決して前面には出てこないけれど、とても宗教的な小説でもあります。白い犬も神様がもたらした奇跡のよう。きれいに正しく、人に親切に、家族を愛し、という人として至極真っ当なこの人々の生き方は、実際すばらしいです。
この作家はその後数冊、宗教的な美しいストーリーを書いたあと、“魂の救済”をテーマとした犯罪者の小説も書いたりしているらしいです。
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