デカルト「方法序説」304冊目
なんで今この本を読むかって?
いちおう入会してるけど全然行ってない、とある勉強会の課題図書になったから。
読み込んで要約して発表する気はないけど、いつも課題図書は読んでる。
感想:おもしろかった。笑えた。
デカルト氏はたぶん、この時代のフランスで一番疑い深く、重箱の隅をつつかせたら右に出るものはないようなMECEの達人だったのに違いない。インチキ錬金術や、疑うことを許さない宗教家が跋扈する世の中で、真実を追い求めて追い求めて、たどりついたのがイマココです、という宣言を記した本でした。「方法序説」というのは、いくつかの自然科学論文の前文として、著者のスタンスを宣言するための文章だったのでした。(知らなかった)
この几帳面さがなんとも人間味あふれていて、たとえば
“…わたしの意見の批判者として、わたし自身よりも厳格で公正だと思われる人には、まず一度も出会わなかったわけである。それにわたしは、学校で行われている討論というやり方で、それまで知らなかった真理を何か一つでも発見したということも、みたことがない。"(p90ー91)
ニコリともせずにまっすぐ前を見て、とうとうと語る“空気読めない”かんじの哲学者の表情を想像して、愉快な気持ちになります。そして彼の言っていることは、その几帳面さゆえにいちいち正しい。もっと正確にいうと、非常に確からしい。
“…ある種の精神の持ち主は、他人が20年もかかって考えたことすべてを、2つ3つのことばを聞くだけで、1日で分かると思い込み、しかも頭がよく機敏であればあるほど誤りやすく、真理をとらえる力も劣り…”(p100ー101)
SNSであいまいな情報を垂れ流してる私たちへの警鐘でしょうか。
勉強会には出てないけど、いつも本を選んでくださる先生の慧眼に驚かされます。こんな薄い本だけど、読んでみて良かったです。
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