立花珠樹「ニューヨーク人生横丁〜光の海の街から〜」289冊目
GWにニューヨークに行って7泊してきました。
仕事でUSの西海岸には何度も行ったけど、東海岸は大昔に3日間行っただけ。去年大好きなロンドンをじっくり味わってきたし、こんどはNYの特徴にも触れてみたいな~と思ってました。でもNYのガイドブックで紹介されているのは「オーガニックフードレストラン☆」みたいな、ヘルシーなものばかり。麻薬と銃とスパイク・リーとルー・リードのNYはもう存在しないのか??…実際に歩いてみると、印象に残ることもたくさんあったけど、知識がないせいで、いまひとつ深く理解できないまま帰国してしまいました。
1976年の映画「タクシードライバー」のNY、私が一瞬見た1989年のNY、2005年の映画「レント」のNY、行ったばかりの2013年4月のNY。
2001年にはあの事件がありました。アメリカはどう変わったんだろう?
そういえば映画の師匠の立花さんがこんな本を書いている、ということで、読んでみたところ、点と点がつながって、いろんなことが見えてきました。
この本はNYのリアルな人たち、立花さんの愛する、エリートじゃないけど自分の人生を選びとって生き生きと生きている人たちを一人一人物語った本です。取材が行われたのは、1988年から1991年。私が初めて行ったのは1989年だから、ちょうど私が見た、今よりちょっと怖い印象のNYが舞台です。2ヶ月前のNYと24年前のNYのあいだの空白を埋めてくれたポイントが、いくつかあります。
私が今回泊まった51丁目のホテルの向かいに、ユダヤ教のシナゴーグ(教会)があったり、ブルックリンでは、丸い帽子をかぶった敬虔なユダヤ教徒の人たちをたくさん見かけました。西海岸にもユダヤ系の人は大勢いたけど、丸い帽子の人は見なかったので、この本でその「正統派ユダヤ教徒」の一人をとりあげた章で、彼らの考えに初めて触れることができました。なんとなく、20数年前と比べて、オバマ大統領の時代になった今は、アメリカはもっとユダヤ系やアフリカ系の人たちの国になっているんじゃないか…と私は感じています。
レズビアンのカップルは、いまはこの頃より認められやすくなっているんじゃないかと思う。HIVの治療薬は、かなり役に立っている。ブルックリンやイーストビレッジは、おしゃれな若い人が集まる町になりつつある。その分、たぶんどこかの近郊の町に移民が増えてるのかもしれないし、国全体が“よくなった”とは限らないんだけど、NYはたしかに明るくなった、と思う。
電車とバスで移動して、家族連れに混じって映画を見て、デリカテッセンでパストラミサンドも食べたけど、「地元の人と同じ生活」ができたかというと、今ひとつ物足りない旅行でした。でも、この本のおかげでちょっと空白が埋められたかな?
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