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May 2012

May 28, 2012

古澤憲吾「ニッポン無責任時代」352

※※映画ブログを移動しました。これからはこちらを更新しております。http://d.hatena.ne.jp/enokidakeiko/ ※※

1962年作品。
NHKBSでやってる「山田洋次監督が選ぶ100本」を録画して見ました。
おかげで、山本晋也監督による詳しい解説もあって、ありがたい。

ま~適当な映画だなぁ!・・・と楽しく、かつ苦々しく?見ました。
見るときの気分によるんだけど、私にはこういう映画で笑われるコツコツ社員のようなところもあります。今日はなんとなく谷啓になって「してやられたぜ」って感じ。
現実にはこーんな要領のいい男なんかいないし、ここまでだまされ続けるやつらもいないし、やれるもんならやって笑わせてくれよ、ってくらいなのですが。

植木等の底のない明るさがまぶしい。日本より湿度の低い、カリフォルニアかどっかで生まれ育ったとしか思えません。この種のアカルさは所ジョージにもみられます。(原田泰三はちょっと違います。)
ところでクレイジーキャッツはとてもカッコいい。植木等もすらっとしてスーツが似合います。ジャズバンドとしてまずクールで、知的な雰囲気があります。彼らが演じる高度成長期の敏腕サラリーマンはなかなかステキで、周りの女性たちは“お色気たっぷり”、ミッドセンチュリーモダン風の渋いインテリアのキャバレーの名前は「Madrid」・・・そんなところも素敵な映画でした。以上。

May 17, 2012

篠田正浩監督「はなれ瞽女おりん」351

1977年作品。

いい映画でした。
始まってからしばらくは、見てるのが切なくてたまりません。芸は一流だし、前向きに毎日歩いて行く彼女たちですが、外から見ている私たちには小さく寂しく見えるのです。

「ごぜ」というのは盲目の女性旅芸人。同じ立場の女たちが集まってひっそりと暮らしています。田舎の家々に呼んでもらっては、三味線を弾いて歌を歌っていくらかのお金をもらいます。弱い女たちが固まって生きていくために、男を知ることはご法度。とある宴席で酒に酔って男に夜這いをされた「おりん」はごぜ衆を離れて一人で旅立つ。それが「はなれ瞽女」。

哀れな境遇なおりんですが、映画のなかでおりんはカラっと明るく歌い、「男に抱かれてみたかったんだぁー」と言い、通りすがりの男に「帰らねえでくだせえ」とすがります。だけど岩下志麻だからちっとも下品になりません。なんとも清潔であかるく乾いた女性です。このあたりから見ているのが楽になってきます。

おりんは旅の途中で出会った男(原田芳雄)と合流します。彼はずっとおりんと行動を共にしますが、一切彼女に手を触れようとしません。

ミニマルな生活、って感じだなぁ。
夜這いってのは強姦なんだろうか。瞽女って障害者がだれからも守られずに、固まって自分たちだけで歩いて生きていくなんて大丈夫なんだろうか。…今の時代に生まれた自分の価値観がぐらぐらしてきます。

ところで。この映画の岩下志麻がとてもいいです。
強くて前向きな性格をもった女優さんだからか、ちょっとやそっとの辛い境遇にあっても、イヤなくじけかたをしない。変に汚れることもない。最後の最後まで、けろっとした顔をして、ひとりでどんどん歩いて行きます。男に抱かれて、大切な人を思って、懸命に歩いていきます。

この人は、下町の太陽だったのだわ…。
男たちもすてきです。原田芳雄の野性味、彼もまた澄み切ったような愛情の強さを感じさせます。憲兵の小林薫がつめたくてまたいい(新人だったらしい)。ごぜのお母さん役の奈良岡朋子のやさしさと切なさもいい。

なかなか今この映画をあえて見ようという人は少ないと思うけど、見てよかったです。以上。


May 14, 2012

ジョン・スタージェス監督「荒野の七人」350

1960年作品。
「七人の侍」の流れでどうしても見たくなりました。

当時きっとスター・ウォーズのように受けたんでしょうね。スケールが大きくて俳優さんたちがカッコよくて、痛快で勧善懲悪。
映画そのものは、何度繰り返して見ても見逃してるシーンがたくさんある…これは多分、サムライ映画と違って銃を撃ちまくるシーンはうるさく感じて知らず知らず目をそむけてしまってるからだと思います。私には日本の時代劇のほうがいいらしい。

この映画もちゃんと見たのは初めてで、知っていたこともあったけど新しいいろんな発見がありました。
私がレンタルしたDVDは「特別編」と称するメイキングが60分も入っていて、わりと最近制作されたインタビュー映像がたっぷり見られます。これでいろんなことがわかりました。
黒澤の「七人の侍」はハリウッドで本当に大ブームになっていたこと。しかしリメイク権はわずか250ドルで取引されたこと。ジェームス・コバーンは剣の達人「久蔵」役に憧れていたこと。しかしこの人と若造の役以外は、元の映画とそのまま重なる役柄は少ないこと。

俳優についても、改めて調べてみて知ったことがあります。
ユル・ブリンナーってほんとハンサムだなぁ、と思って見てみたら、もともとは「ユーリ」って名前のウラジオストク出身のロシア人なんですね!(スイス、モンゴル、ユダヤの混血らしいですが)この人に髪を生やしたらどんな風貌だろう?
ちょっと「オースティン・パワーズ」のDr.Evilの表情がちょっと似てるような。

そして、メキシコ人かしらと思っていたチャールズ・ブロンソン(うーんマンダム、といっても30代くらいからもうわからないんだろうな)はリトアニア移民だそうです。ちょっと強面な感じだけど、「メイキング」によると誰とでもすぐ仲良くなったらしい。「いそしぎ」ではアーティスティックなコミューンのメンバーの役でしたね。

スティーブ・マックイーンはすぐに目立ちたがって余計な演技をして怒られていたらしい。…私この人とかジェームス・ディーンとかあんまり興味ないんです…。大人気俳優だと思うけど、特にコメントがないので流します。

全体としては、こういうのがアメリカ人が好む映画なんだなぁと刷り込まれました。
オリジナルにも勝る殺戮の数々だけど、本質的に男の人って(なかには女性もいるだろうけど)こういう戦闘シーンが嫌いではないのかな?

そんなわけで、ストーリーがちゃんと追えない有様ではあったけど、アメリカ映画を知る上で欠かせない1本だったと思います。以上。


May 10, 2012

篠田正浩監督「心中天綱島」349

1969年作品。

近松門左衛門の人形浄瑠璃(今は歌舞伎の定番的な演目)の映画化。タイトルを見て誰もが、不倫の果てに男女が心中していく様子を楽しみ?に見るわけで、心中する方もする方だけど喜んで見る方も見る方です。いまでいう、ケータイ小説のようなものでしょうか。世をすねた男女が切ない恋に落ちて、どちらかが不慮の事故か病気で死ぬ、みたいな。

おもしろい作品でした。
外国人が外から見たような日本的な美を、日本人たちが作った異色作、という感じです。人間ってのはあきれるほど愚かでせつな的だなぁと思う一方、常に画面のどこかにいる奇妙な黒子が場面に客観的な視点をもたらしていて、この美を自分たち以外の“観客”に向けて演出しているのは治兵衛と小春自身、という感覚を見る人にもたせています。

遊女小春の純情、義理でがんじがらめになっている紙屋治兵衛の弱さ。どうしてもこの人でなければと思いつめる、愛情というか執着というか性欲のものすごさ。夜中に墓場で髪を切り落とし、振り乱してもつれあう…というあさましさが、人の性というものなんでしょう。生命をつないでいくための営みは、父母たる男女の死につながっている。

紙屋治兵衛を演じるのは歌舞伎そのままに中村吉右衛門。優しくて情にもろい若旦那にぴったりはまっています。遊女小春と女房おさんの二役を岩下志麻。両方とも激情の女で、違うのは立場だけといっても過言ではない…と思います。

墨で書いた文字を拡大して壁や床に貼り付けた派手な舞台とか、“前衛的”な舞台美術なのですが、歌舞伎を見に行っていると思えばすぐにお芝居の中身に入っていけます。吉右衛門と岩下志麻の演技が端正だし、ストーリーも歌舞伎通りだし、むしろクラシックな印象もあります。

歌舞伎に数回だけ行ったことがあるけど、最初はシアターに感動し、着物やメイク、その他しつらえに驚き…と一通り儀式のようなのが済んだらやっと中身に入っていって、誰誰が可哀想だとかあれはあんまりだとか、最後は筋に夢中になっていきます。この映画も、異端的な趣向を用いていても普遍的なストーリーの作品で、美術を楽しみながらも自然と、人間というものに思いをはせてしまう正統派の名作だと思います。

以上。

May 09, 2012

黒澤明監督「七人の侍」348

1954年作品。
うう、面白かった。最高おもしろかったです。
207分という長尺作品ですが、夢中になって一気に見ました。
むかしからうっすら知ってた映画でしたが、実際に見てみて驚いたのは…
・あまりに長い、DVD2枚組、しかし飽きさせない。
・百姓が侍を「雇う」というありえない設定であり、そのために合戦に入る前の描写が長く取られている(その間に登場人物のそれぞれの人間性が観客に刷り込まれる)(「百姓」は避けるべき差別語という人もいるようですが、祖父が誇りを持って自分は百姓だと言ってたらしいので、気にせず使います)
・三船敏郎演じる「菊千代」がこれほど道化キャラだと思わなかった…(先に「隠し砦の三悪人」を見てしまったり、後年の大御所化した姿しか知らなかったので)

この映画での百姓は自然や災害や野武士(彼らのことばでは「野ぶせり」)の脅威にただ耐え、大事な娘や妻を差出し、地面に頭をこすりつけて武士に懇願する弱い存在です。今はこういう絶対的な身分差って日本にはないけど、100年やそこら、3代くらいの世代を経たくらいで完全に侍と対等っていう意識がもてるようになるんだろうか。とか思ったりする。

役者さんたちについて。
三船敏郎ってあまりに迫力がありすぎてちょっと怖かったんだけど、この映画の彼は大きい野生の犬みたいで、力を持て余してるけど優しくて可愛い。ちょっと好きになりました。
チーム侍のリーダー、志村喬は重厚さがすばらしいです。いつもの名わき役、加東大介は今回も、かしこくたくましく、生き延びていきます。この人の顔って日本人形だなぁ。少年侍は初々しい木村功・・・あれ、でもこのとき31歳だ!ストイックな剣豪は宮口精二。いろんな映画で、堅くてアクのある実力者を演じていて、この映画でも実在感のある演技をしてます。7人ののこり2人は千秋実と稲葉義男なのですが、温厚な性格が似ていてちょっと区別がつきにくかったです。

百姓側も個性派揃いで、左卜全演じるユーモラスな中年もいい味だし、いつも渋いじさまの高堂国典はやっぱりヨーダのような長老だし、美しい百姓の娘を演じる津島恵子(なんとなく高岡早紀に似てる)と、犠牲になった利吉の女房の島崎雪子は繰り返して見たくなるくらいステキです。

前半の群像劇もいいんだけど、後半の合戦は迫力満点。抑えることなくドッカンドッカン闘いますが、過剰に血なまぐさくならず私でも十分楽しめました。

安易なハッピーエンドでもなく、教訓めいた締めくくりでもなく、まさに傑作ですね。見てよかったです。黒澤作品、ほかにも見てみます。


May 06, 2012

田中正道「ボイス-ソーシャルの力で会社を変える」269冊目

ボイス=voice、声ですが、この本ではユーザーボイスつまり「お客様の意見」のこと。

キヤノン、ソニー、マイクロソフトを経て独立した著者が現在手掛けているのは、企業が顧客から寄せられた意見を最大限に自社ビジネスに生かすためのコンサルティングだそうです。そしてこの本は、そのコンサルティングビジネスを立ち上げるに至った背景、目的、ターゲット企業にとってのユーザーボイスの重要性、ゴールなどをまとめたもの。ターゲット企業に対して、自社サービスの詳細以外に伝えたいことを1冊にしたという感じでしょうか。タイトルだけ見てクリス・アンダーソン「フリー」みたいに、1つのキーワードのアイデアについてつきつめた本かと思ったら、ちょっと違っていて、ソーシャルメディアやコミュニティを介したユーザーボイスの収集・分析(これが中心)+企業どうしの協創によるイノベーションなどを、ビジネス本を読み慣れない人にもわかるように解説しています。

ユーザーボイスを企業が本当に生かすのは、きわめて難しいんだろうなと思います。たとえば「こうしてほしい」という意見を集めて、多い順に実現しても、ユーザーは欲しいと言ったものを全部買うわけでもないのでまず成功しない。…ということは経営の勉強をする人にはもはや常識です。企業や研究者は、ペルソナを作ってみたり、密着調査をしてみたり、ユーザーが「買ってくれるもの」を求めていろいろな手法を編み出してきました。著者が着目したのは、雑多なユーザーボイスの生かし方なのですが、その中でも特に重要視しているのは、ボイスをツールで解析し、その結果を人間が分析し、各部署が協力して生かしていくための「システム作り」です。ソフトウェアにできることは最大限にさせておくけれど、結果の分析には熟練が必要であることを認め、その上で外部の専門家だけに任せずに組織が一団となって努力することが何より重要だといいます。

会社全体で成果を最大限にするための仕組みづくりって、簡単じゃないです。お客様の声を生かすと決めても、全員で片っ端から意見を全部読んで会議をするというような方向にいきがちじゃないでしょうか。コンサルティング費用がゼロでも、休日出勤のコストがかかったり、結局成果を出せなかったりしているかもしれない。データってのは取り方、分析の仕方、読み方によって価値がまったく違ってくる…ということは私も前の会社で学びました。スキルを身につけていくものなんですよね。だから最初だけは外部の知恵を借りるのが有効なこともあるのでしょう。

あらゆる業界に同じ手法が有効なわけではないと思うけど…うーん…またデータ分析やってみたいなぁ(←意外と好きだったらしい)

今日はそんなところで。。。