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March 2012

March 18, 2012

降旗康男監督「駅~Station」341

1981年作品。

日本の港町の風情って、荒っぽくて強くてからっとしてて、いいです。うっとりするような、しかし湿っぽくならない情緒のあふれる映画でした。

この映画ってオムニバスストーリーだったんだな。
高倉健演じる、射撃の名手の警察官と、そのもと妻や、犯罪者の妹、港町の飲み屋の女や、彼の同僚などがからんできて、北海道の町々でひっそりと出会ってはすれ違っていきます。

年を重ねて一人で年の瀬を迎える孤独、というのは、たいそう寂しいものなのかもしれないけど、多分石ころみたいにそこらじゅうに転がってるものでしょう。あえてひとりでいることには多分理由というか事情があって、そのほうがいいこともある、のだと思います。「いい」というのは、楽だとかわずらわしくないという消極的なことだけではなく、楽しいとか嬉しいという心地よいこともあるかもしれません。血気さかんな20代30代の感覚でものごとを判断しないほうがいい気がします。

健さんは素敵だけど、妻のあやまちを許せずに追い出してしまう男ってことか…。ストイックということは自分にも厳しいけど、許されなかった人も一生辛いんだろうな。健さんに憧れる人にも、自分やほかのひとの失敗を認めるおおらかさを持っていてほしいな、とも思います。
今日はそんなところで。


松田優作監督「ア・ホーマンス」340

1986年作品。
新宿大ガードの下を中野方面からくぐって行くときの、オッペン化粧品のあじさいみたいなネオンとか、サクラカラーとかサンペイグッドカメラとか、上京したころに見ていた景色が冒頭から出てきて、フラッシュバックのような感覚をおぼえました。

時代の空気を映した若い映画と当時は言われたんじゃないかな。私より10歳、20歳若い人ならどう見るんだろう。私にはとてもリアルに、空気の冷たさや排気ガスのにおいも感じられます。

私はこの映画好きです。表に出ない人間味やあたたかさが伝わってくるし、松田優作と石橋凌が二人ともすごくいい。

石橋凌、若い!これが映画初出演らしいのですが、じつに自然です。(その後の映画は演じすぎてると言ってもいい)ヤクザの若頭に完全に見えます。ちんぴら、ではなく、わりあいオーセンティックで品のあるヤクザ。バンドマンだったのにどうしてここまではまってるんだろう。(はまりすぎて、その後の役がヤクザばっかりになってしまったのか)

松田優作の演じる役は、記憶喪失してるけどやけにめちゃくちゃ強い大男。最後にSFっぽいオチがあって、そこで鼻白む人もいるようですが、私はSFベースの人間ドラマとしてみたので、ふーんと思ったくらいでした。松田優作を見ても若いとか古いとか感じないのは、彼がこのあとすぐにあっちの世界に行ってしまったからですね。

今まで興味を持たなかった映画をなにかのきっかけで見てみるのって、やっぱり面白いなぁ。以上。


March 13, 2012

ケン・ラッセル監督「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」339

1979年作品。

キノコでトリップしてゴリラになった映画だった。
最近変な映画ばっかり見てるなぁ。(語弊を恐れず、というか、明らかに変わった映画ばっかりだ)

もう少しちゃんと説明すると、とある立派な大学教授が、水の中に浮遊して精神をリラックスさせて自分の内面を覗くという実験にはまってしまい、きのこまで使ってトリップを繰り返すうちに、子ども時代の自分に戻るだけでなく、さらにさらに遡って人類の進化を逆戻りしていくようになり、それが現実の世界まで浸食するようになって・・・ という映画です。

ケン・ラッセルは本当に変だ。異常とか怖いとかじゃなくて、毒もないしいたって正常な人だと思うんだけど、なぜかわざわざ、信心深い人が戦慄したり、良識派の人が立腹したりするような映像を作りたくてたまらないらしい。超自然マニアなのか?この映画の主人公のオカルトマニアの大学教授みたいなタイプの人なのかな?それってまほうのきのこや草の実によって引き起こされるもの?すごく変なんだけど、どこか、まともな人がわざとやってるような、あまり出来が良くない日本のホラー映画を見たときの気持ちとちょっと似ています。どこがどう似ているか説明するのは難しいのですが。

ケン・ラッセルは、猟奇殺人を題材にした血みどろのほんとうに怖い映画とか、人間の内心の怖さや汚さを深く描いたサスペンス映画とかを、どう思って見ていたんだろう?ということに興味があります。

最近ブログへのフィードバックをいただくことが少なくなってるのですが、そうすると誰からも読まれていないかのような気持ちで書いてしまって、だんだん深く考えずに書くようになって、表現も辛辣になりがちな気がします。もうすぐ新年度だし、ちょっと気持ちを引き締めて書くようにしよう・・・。(という反省があると思えない今日の書き出し)

March 11, 2012

原一男監督「ゆきゆきて、神軍」338

1987年公開作品。

なんでこんな日にこんな映画を見てしまったんだろう。
善と悪と運命と人間と、いろいろな思いが渦巻いて混乱しています。

とにかく強烈な実録映画でした。あのマイケル・ムーアが史上最強のドキュメンタリーと評したのも無理はありません。

実在の思想家、というか活動家であった奥崎謙三という人を、カメラを持ってそのまま追いかけた映画です。この人自身があまりにも過激な思想家、活動家なのでそのクレイジーぶりがおかしく、怖くもあるのですが、根本の考えは戦場での真実を暴こうとするもので、理解できるところもあります。リアルに仲間を殺された本物の元軍人である奥崎氏は、1920年生まれだから公開当時67歳。彼が訪ね歩く上官たちは当時もう70~80代でしょうか。撮影されたまま彼は元上官に殴る蹴るの暴行を加えるし、上官の息子に発砲して逮捕されるし、上官たちは脅かされて当時の身の毛もよだつ状況を洗いざらい話していきます。日本軍内で本当にそんなことまで??と思いますが、極限状態で人は実際にそうなってしまうのでしょう。ここで詳しくは書きませんが。

この映画の中で暴かれている戦争の真実は、たとえば「日本海軍400時間の証言」にも通じる人間のおろかしさ。ただ、この映画はあまりにも乾いた日常的な現実の記録であって、効果音も台本もないし構成もほとんどただ時系列なので、感情をあおられることがない分、こっけいな感じもあります。わかりづらくもあります。こういう裸の映画ばかりだと見る方の努力が必要だけど、たまには良いです。生の映像や事実に力があれば、これだけでいい。

かなり勇気が必要だったけど、見てみてよかったし、撮ってくれてありがとうという気持ちです。以上。

私立探偵 濱マイク 12 利重剛監督「ビターズエンド」337

SIONが、マイクの少年院仲間として登場。血も涙もない殺人者として恐れられている彼は、銃の取引で金を持ち逃げした少年を追っています。少年の恋人に暴力をふるって居場所を吐かせて、銃を片手に少年を倉庫に追い詰めたら・・・。

「仲間を命がけで助ける」というマイクの信念が貫かれて、せつなくも感動的なラストでこのシリーズは終わります。
SION自身の歌が流れて、最後はもうSIONが主役…という印象を強くしすぎたのは、シリーズ最終作としてはちょっと微妙な気もします。じっさいこの回はSION以外はそんなに強い印象がありません。このTVシリーズの頂点は、自分としては石井聰亙監督「時よとまれ、君は美しい」だったかなと思います。

さて、今度は改めて劇場映画のほうも見直してみたい…けどレンタルしてないんだよな…。買うか…!?

私立探偵 濱マイク 11 Alex Cox監督「女と男、男と女」336

Alex Cox監督の映画って実は見たことがないので、比較できないのですが、撃ちまくりの銃撃戦が横浜で繰り広げられるというリアリティのなさが魅力?でしょうか。
ギャングがカラカラカラカラと高笑いしながらひたすら撃ちまくるのが不思議なおもしろさです。DVDに収録されているメイキングで、監督が高笑いをやってみせて、日本の俳優たちがそれをまねする様子が見られますが、監督の高笑いのほうがさらに明るさに底がなくて強烈です。
田口トモロヲがマイクの幼馴染役で登場してマイクたちを援護射撃するのが、カッコいい。
「みるく」の生い立ちが明らかになったり、小泉今日子演じる情報屋のことがちょっと明らかになりかけたり、という仕掛けもあるけど、全体的にはもうひとつ一貫した感じがすこし足りない気もします。
続いてラスト、いきます。