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December 2011

December 31, 2011

私立探偵 濱マイク 8 石井聰亙監督「時よとまれ、君は美しい」321

久々に二回見ました。やけに見応えがあるなと思ったら、監督が石井聰亙です。
バイオレンスのシーンが胸にガツンと響きます。構成の起伏もシーン転換のタイミングもスカっと決まっていて、45分間という短さを感じさせません。ゲームやニュースサイトの画面もそれぞれのキモをとらえているし、なにしろドアを開けるシーンひとつをとってもカツーン、カツーン、と決まって、いい音楽みたいにゾクゾクしますね。どの回も、少なくとも静止画を見るととても魅力的だけど、この長さをしっかり構成して見せることとか、タイミングの妙とかが、映画というサイズをずっと作っている人とそうでない人の差なのかもしれません。

今回のストーリー:依存性の高い「YES」というネットゲームが禁止されたが、ユーザーたちがその開発者をカリスマにまつり上げて新興宗教を興す。実はそのカリスマは、マイクが子どもの頃に一時期一緒に過ごした孤児の姉弟の、弟のほうだった。マイクに助けを求めてきた姉を救おうとして、マイクは事件に巻き込まれていくが、裏には裏があり…。

弟役に、まだ若い瑛太がEITA名義で出てます。(影が薄いけど)
姉役の渡瀬美遊がとても素敵で、まさに、この瞬間の彼女の美しさを記録した映画です。

今回も、マイクが着てる、いったいどこで買ったんだ!?という感じの青い花柄のシャツがステキ☆

December 30, 2011

福井健策「ビジネスパーソンのための契約の教科書」320

著者のTwitterで知って、さっそく買ってみました。
これは海外との契約交渉のスキルがない人が、次の交渉に備えるために読んでおく本のようです。ターゲットは国内の交渉経験が豊富で、むしろその経験に縛られている、企業法務スタッフや、これから交渉に乗り出していく新人営業マン…とかをイメージしました。契約書とか法律とかの言葉にアレルギーのある人向けに、やさしくやさしく書かれているので、キヤノン顧問の丸島儀一氏の著書を読んだときのような「ニヤリ」はあまりない本ですが、英文契約書を読み違えている大企業の法務部長とかにもし出会ったら、読んでほしいなぁと思いそうです。

社会人一年生にはちょっと早いかもしれません。最低限、仕事ってどういうもの、計約ってどういうもの、というイメージが自分なりに持てるようになった人が、次のステップとして読む。あるいは長く似た取引先とばかり交渉をしていたのに、新しい分野に進出しなければならなくなったベテラン、にも良い本のように思えます。以上。

December 20, 2011

ジョナサン・サフラン・フォア「イーティング・アニマル」319

肉食、というタイトルの本。
私の好きな小説家が書いた、ノンフィクションというか、著者本人の意見が強く出たルポルタージュのような本です。

タイトルからは、ベジタリアン礼賛を予想するかもしれませんが、「そうではなく、動物を殺して食べるのであれば、せめて少しでも苦痛をやわらげて、心して食するよう願う」という強いメッセージが込められています。著者はアメリカで(多分日本でも)広く行われている工場式養鶏や養豚のあまりにもむごい実態を見てベジタリアンになった
そうですが。

日本には古来、「いただきます」と毎食事前に手を合わせる習慣があって、年に一度「感謝祭」をやるキリスト教文化とは出だしから違うような気もします。魚介類は小さいけれど一般の家庭でもまるごと調理することが多いので、生き物を食べているという意識はどんな人も多少は持っていると思います。工場式で飼われていた家畜より自然な状態で育てられたものの方がおいしいというのは一般的に常識です。でも、意識しようとしなければ、パックにきちんと入って安く売られている肉を何の気なしに食べるようになるし、卵の値段がほかの食べ物と比べて安すぎることに疑問を持たなかったりもします。

私はこれを読んで、ベジタリアンになろうとはやっぱり思わなかったけど、肉を買うときは自分に本当に必要な分量を考えよう、できるだけ自然に飼われていた家畜を食べよう、できるだけ自然な材料を使って昔ながらの製法で作られた加工食品を選ぼう、という気持ちは強くなりました。

前に朝のバラエティ番組にほんものの子ブタが出てくるのが、私はすごくイヤでした。
毎日殺して食べている生き物をペットのようにして朝の食卓に見せるのって、悪趣味な気がして。止めたようでほっとしています。

私は猫を一匹飼ってます。家族として仲良く暮らしてますが、そいつをもらって帰るとき、道路で事故にあった猫を見ました。たまたま出会えた命のありがたみに感謝して、自分のまわりにいる生き物たちを大切にして生きるしかないのだ、と思います。

…なんてことも言えなくなるくらい、実際はかなりキツイ本です。まともに読むと肉なんて食べられなくなるかもしれないので、お勧めはしません。今日はこんなところで。

December 18, 2011

大庭秀雄監督「雪国」318

主役が木村功と岩下志麻+加賀まりこの1965年公開作品。

間違えた・・・。
評判の高い豊田四郎版(主役が池辺良と岸恵子+八千草薫)を借りようと思ったけど、レンタルに出てなくて、こっちを借りてしまいました。

この版はとても原作に忠実だと思います。おおきな誇張も省略もなく、原作に忠実。原作の時間の流れを実際の時間の流れに置き換えて、きれいに並べ変えたようです。
芸者としてしたたかに生きていける駒子のイメージは、岩下志麻のほうが合っているかもしれません。が、原作で「小太り」とあるのに都会的で女にもてる島村は、木村功も池辺良もちょっと違うかなぁという気もします。

DVD化されてるのにレンタルしてない映画って多いですねー。数千円のDVDを買うのはちょっと敷居が高いので、もっとレンタルが増えるといいなーと思います。劇場に行くのも苦にならない方だし、もっと名画座もチェックしてみようかな。以上。

December 11, 2011

私立探偵 濱マイク 7 岩松了監督「私生活」317

今回は、パチンコの景品交換所にいる”情報屋”の謎の女=小泉今日子の裏の顔がフィーチャーされています。当初、男に尾行されているマイクが彼女に情報を求めると「私はあなたの私生活を知らない」と何の情報ももらえないのですが、実際に知られていないのは彼女のほう。狂言誘拐事件の影の黒幕らしいのですが、それ以外にも妻子ある男性の病室に通い続けるのはいったい…?

今回もちょっと不可解だったなぁ。わずか48分の中に映画的な世界を作っていたとは思いますが、この1回だけで結びきれてないような印象です。毎回監督が違っていて、1回読み切り風ですが、続きもののドラマなので、今回は続きものとして最後の回にまとまるための途中経過という部分があったのかもしれません。

キョンキョンと永瀬正敏はこのシリーズのあと離婚したっけなぁ、そういえばキョンキョンと友達らしいYOUはこの頃は松岡俊介と結婚してたんだっけ、などと下世話なことを考えながら見ると若干スリリングな気もしてきます。(ほんとか)

引き続き見ていきます。以上。

December 10, 2011

渡辺英伸「生活シーンでこんなに使える!Facebook41の提案」316

私はIT企業に16年もいたので、SNSもずいぶん前からあれこれ使ってきました。
ブログとかSNSなんてもはや、WordやPowerPoint並みに何の予備知識もなく、いきなり使いこなせるように作られてるはず…と、ずーっと適当に使ってます。
が、実はセキュリティの脅威は知らないうちに大きくなってるし、設定機能は複雑になってきていました。昔は仲良しの友達しか使わなかったSNSが、本名登録が当たり前になり、会社や学校の仲間や取引先、親類縁者まで友達リクエストを送ってきて、だんだん面倒になってきてました。Mixiまでは友達とコミュニティ作ってせまーく楽しんでたけど、Facebookではすっかり大人しくなってしまった私です。

改めてこういう本を見ると、設定がおっくうになってたんだな、と怠惰な自分に気づきます。Facebookにもちゃんとプライベートグループを気軽に作る機能があるし、いろんなアプリで分析なんかもできるようになっていたのね…。ネットだけでこういう情報を集めることも可能だけど、ページを折って使えるこういう本も便利です。

「もっと楽しい機能をたくさん使おう!」というより、「大切な人との緊急時の連絡手段」とか、「失敗しないためのプライバシー設定」といった、基本的かつ重要な部分に注目している点も良いと思うし、読みやすく簡潔な文章も好感が持てます。むしろ、表紙のラブリーな雰囲気より中身のほうが濃いです。ぱらぱらっと読み終わった後は、手元に置いてしばらくFacebookをあれこれいじってみようと思います。(設定が終わったら、ITが苦手な友達に回そう…)

以上。

December 06, 2011

私立探偵 濱マイク 6 青山真治監督「名前のない森」315

これも2002年作品。

濱マイクらしくない、サナトリウムのようなところが舞台。閑話休題というか、外伝というか。
施設長が鈴木京香で入居人に大塚寧々など。おっとまだ初々しい菊池凛子が出てる。(余談:彼女のプロフィールを見てたら、新藤兼人「生きたい」でデビューしたとあります。ちょっと見てみたくなりました)

そして、「マイクに似た木」が近くの森の中にあります。森は本人の心。森の奥に何を見つけるかは、人によって違うのでしょう。鈴木京香が、入居人それぞれに、ヒントのような答えのようなことをささやき、彼らは「本当に欲しいものを見つけるとそこを出ていく」。

おもしろ・・・くもあるけど、深いというより、若いときの感受性のままの世界という感じです。これを濱マイクシリーズであえて作る必要はべつにないと思うけど、作ってみたかったのかな・・・。

私立探偵 濱マイク 5 須永秀明監督「花」314

2002年。濱マイク テレビ版の5本目。
Number Girlの演奏がかっこいい。窪塚洋介の狂いっぷりがすごい(奇しくも、日曜に見た映画では安倍清明役でした)。9年たつとみんな大人になるなぁ。

画面のかんじはいつもの濱マイクの世界で、カラフルでヒッピーでいかれてて最高ですが、かわいそうな女の子や茜の誘拐といった事件が次々に起こって、あんまりストーリーは頭に残りませんでした。

冒頭で書いたNumber Girl、窪塚のほかにも、hitomiの「バーン!」は彼女らしく非常にチャーミングだしその他すべてビジュアルのレベルはとても高いです。以上。

December 05, 2011

鶴橋康夫監督「源氏物語~千年の謎」313

2011年12月10日公開予定作品。
友達が試写会を当てたので、見てきました。
”鶴橋康夫監督”とタイトルに書いてますが、むしろ”角川歴彦製作総指揮”と書くべきかもしれません、この作品に関しては。

ストーリーは、「紫式部はなぜあのような源氏物語を書かなければならなかったのか?」
光源氏はどうして足ることを知らず、次から次へと女性を求め続けなければならなかったのか。御息所はどうして生霊にならなければならなかったのか。それは紫式部自身の、秘めた苦しい恋愛から生まれたものだった・・・。

美男美女が美しい衣装と舞台背景で演じる、ロマンチックでミステリアスな物語を、大スクリーンで2時間以上も見せてもらいました。面白かったですよ。

おおらかで美しい、昔の日本の高貴な人たちの生活の雰囲気が、よく伝わってきます・・・伊勢神宮で見た御神楽と同じような落ち着いてゆっくりとした雰囲気です。光源氏を演じる生田斗真も彼が焦がれる藤壺を演じる真木よう子も、藤原道長を演じる東山紀之も紫式部を演じる中谷美紀も、みんな美しいです。それぞれの衣装も派手すぎずたいへん上品。

ストーリーもいいんだけど、ちょっと説明的なせりふが多いです。普段映画を見ない、行間を読むのがツライ人でも十分ついていけます。なにしろ生霊が呪い殺しちゃう映画なので、おどろおどろしい映像エフェクトも多くなりがちですが、衣装や演技がわりあい抑え気味なのに比べてエフェクトは派手です。

ダヴィンチ・コードがいい映画だったとも、その原作が名作だとも言うつもりはないのですが、タイトルから古の謎を解く!というパズル的なものを期待するとたぶんがっかりすると思います。しかし源氏物語という世界にどっぷり浸って映画館から出てくるので、映画を見ると原作が読みたくなります。という意味で、啓文堂グッジョブ!
かなり長そうですね、現代語訳も。原作に忠実そうな瀬戸内寂聴バージョンに挑戦してみようと思いますが、きっとこの人が書くとすごくエロいんだろうなぁ・・・。以上。

December 02, 2011

マーティン・バーグ監督「バトル・オブ・シリコンバレー」312

1999年作品だそうです。
Apple2~Lisa~Macintoshあたりのアップルの歴史と、PC-DOS~Windows3.0あたりのマイクロソフトの歴史を、ジョブス&ウォズニアック、ゲイツ&バルマーを中心に描いたドラマ。Facebookをテーマにした「ソーシャル・ネットワーキング」と比較して感想を書いてる人がたくさんいますが、映画としての出来は比較にならない・・・こっちはテレビのクイズ番組のスキットのようなものです。なんかちょっと品がない。

ただ、学生によるスタートアップを、仕事の中身より起業家の人間関係に注目して描いた映画という点は同じです。こういう映画って日本ではあんまり想像できないですよね!?ホリエモンと三木谷氏の友情や恋愛の映画なんてあまり見たくないような。・・・それ以前に、本田宗一郎や松下幸之助の恋や友情の映画もあまり考えられないですよね。知りたいのは、「仕事上どうやって成功したか」のほうで、なんとなく、恋や友情で青春を謳歌するやつは仕事には身が入らないようなイメージってありませんか?・・・実際は恋も友情も出世も謳歌してる人は大勢いるはずですが。

Windows vs Macの初期の話を身近に感じたい非ITの世界の人にだけ、まあ見てもいいんじゃないと言える、そんな作品でした。

原題は「Pirates of Silicon Valley」。パイレーツオブカリビアンの洒落でしょう。「海賊版」って言葉があるくらいで、Pirateという言葉はソフトウェアを違法コピーする人のことも指します。この映画ではゼロックスパーク研究所で初めて開発されたグラフィック・ユーザー・インターフェースを持つパソコンOSを、結局ビルゲイツもスティーブジョブズも真似したんだろ、という意味かなと思います。その後違法コピーを大いに取り締まって訴えたりしていた彼らを海賊と呼ぶのは、たいそうな皮肉ですが。

以上。