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March 2011

March 05, 2011

渡辺淳一「エ・アロール」241

いや、わざわざ選んで手に入れたわけじゃないですよ。いわゆるパパ'sライブラリーの中の一冊です。
その中から今これを読んでみようと思ったのは、父がこの先どういう施設に入るのがいいのか考えてたから。
この小説は、豪華で自由度の高い老人ホームで、入居者たちが年齢差の大きい恋愛やら不倫やら二股やら三股やら、酒池肉林かよ!?と突っ込みたくなるような華やかな生活を繰り広げるという小説です。

そう何冊も読んでないけど、この人の小説ってまったく体温が伝わってこなくてリアルじゃないなぁと感じます。むしろ、あえて極端な事例を寓話として提示することで、読者を啓蒙しようとする意思が伝わってくる。お医者さんの書く小説には不思議とそういう「読むと考えが変わる」効能を忍ばせた感のあるものが、ときにあります。

この作家の啓蒙の目指すところは、日本の生真面目でお堅いシャイな大人たちに、性愛を楽しんで顔ツヤも気持ちも身体も元気になってください!というものでしょうか。だから、恋愛に必ずともなう痛みとか苦しみについてはほとんど触れず、「それでも恋愛はいいものです」という結論に必ず行きつく。効能を優先すると、文学としての深みが後回しにならないかな?とも思いますが。

で、私が読んだ目的は達せられたのか?まじめな話、入院して外に出られないという状態は、普通かなり不自由です。看護師や介護士がどんなに親切でも、自由の代わりにはならない。そんな状況で少しでも楽しみを持たせるにはどうすればいいか、と考えています。「エ・アロール」に出てくる人は、高齢にしてはかなり元気。もともと病弱だったり気力が弱かったりする人たちには、脇役しか与えられません。だからそのまま参考にはできないけど、「なるべく自由に、タブーは少なく」という主旨は私の感覚と近く、賛同できます。(小説はやりすぎの人ばっかり出てくるけど)

実際は人によって考えは違うし、ほとんど私には何もできないのですが、なんとなく少しほっとしました。以上。