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June 2010

June 27, 2010

志水辰夫「情事」215

同じ作家の本がもう1冊あったので、読んでみました。こっちも、なかなかよく書けていました。(←何様目線?)
中年男性の気持ちや、周囲の人たちのようすをとても丁寧に書いてあるので、無理がない。ああ、そうなんだろうなぁ、という気持ちで読み進められます。そこはかとない不安で胸騒ぎを覚えながら進んでいく「サスペンス」の感じも、次を読みたくさせる効果十分。

しかしタイトル通り、官能小説かよと思うくらい、そーいう場面が頻出するのには、参った。いずれもねっちりコッテリとした描写で、電車で読んだわたしがバカだった、と後悔したりしました。

そんな1冊です。家で読んでください。以上。

June 23, 2010

志水辰夫「行きずりの街」214

「余暇に軽く読めるミステリー」のつもりで読んだら面白かった。よく書けている。
とはいっても、うだつのあがらない中年男+超いい女との純愛+唐突に巻き込まれた凶悪事件+唐突なのにふつうの人なのに大活躍、という定石を踏んでいるのは事実。

土曜ワイド劇場と同じで、水戸黄門と大岡越前とも同じで、人は(私も)定石を求めてTVの電源を入れる、本屋の店頭に立つ。それで得られるのは、自分を投影した大冒険活劇であり、俺は命をかけて小さきもののために戦い、血まみれで顔は赤黒くふくれあがっているが、愛する女は俺を見て涙を流して抱きついてくるのだ。・・・という設定に、私もなんだか入り込んで(女じゃなく男のほうに)カタルシスを得る。すごい夢を見て目覚めたような、さわやかな疲れ。

そのお膳立てがどれくらい真に迫ってくるか、というのがエンターテイメント小説ではかられる力量なのだ。と思う。
でも疲れるなぁ、殴られたり監禁されたりばっかりで。ほんとのふつーの人なら、何度か死んでるんじゃないかな・・。
以上。

June 20, 2010

桐野夏生「残虐記」213

週末、気分転換に軽いミステリーでも・・・って読むもんじゃないですね、この人の本は。
タイトルからしてキッツイけど、実際のところ、「柔らかい頬」より「グロテスク」より、私の読後感はまだ軽かったのですが。

25歳の工員が10歳の少女を誘拐、監禁して、1年ちょっと後に解放された、という事件から25年。そのときの少女が小説家として名をなしていたが、刑務所を仮出所した犯人から手紙をもらって、家を出てしまう。残された原稿に書かれたのは何か・・・。

この小説の9割以上がその原稿なのですが、その「小説家となった少女」の妄想がどんどこどんどこ繰り広げられて、いつもながらすごいです。今朝「日曜美術館」でとりあげていた「パリで開催中の日本のアール・ブリュット展」と重なって感じられました。どんな人の中にも、負のエネルギーとか妄想とか、いろんなものが隠れてるものなんじゃないかと思うけど、ことばという形で出てくることもあれば、絵や粘土細工になることもある。整理されて口当たりよくなってることもあれば、生々しくてとげとげしてることもある。

出せてる人は出せない人よりは健康だと私は思うのですが、自分はぜんぜん出せてない気がするので、今年もこれを何らかの形で放出することを目標としてみます。以上。

June 06, 2010

「ビデオ技術マニュアル」212

ビデオαという雑誌を読んでみたら、わりあいわかりやすかったので、同じ「写真工業出版社」が出しているビデオ撮影入門用のこの本を買ってみました。

ビデオ技術マニュアルというタイトルを見ると、ビデオカメラを買ってきた人が上手に運動会を撮影するのに役立ちそうだけど、そういう本では全然ありません。放送局における番組用ビデオ制作のうち、実際の撮影に関わる部分(企画~シナリオ作成や、放送にかかわる伝送技術とかは除外)の技術をいくつかに分類し、概略を述べたものです。

目次を見ると内容がよくわかると思うので、出版社のサイトへリンクしておきます:
http://www.shashinkogyo.co.jp/sk-betu/alpha/video-gi.html

まぁ素人(わたし)がいきなり読んでもわからないことが多いけど、「タイムコードの基礎」とか「MAシステムの基礎」とか、プロのビデオ制作で絶対に必要になる基本が説明してあるので、手元に置いてちょこちょこ参照するのに良さそうです。

プロを目指す入門者には得難い情報源ではないかと。各章を、それぞれ専門家が分担して書いてあるので、3000円という価格を出しても惜しくないのでは。

引き続き、映画やアニメーションの制作関係の本なんかも読んでみようと思います。以上。

ビデオ技術マニュアル