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August 2009

August 21, 2009

村田喜代子「人が見たら蛙に化れ」172

ミスドで読んでたらコーヒーをこぼしてしまった!せっかく古本じゃなく新品で買ったのに、、、

さて内容について。
私のいちばん好きな作家の比較的新しい作品です。ひじょーに達者かつクレバーで、しかもコンシューマ的に自分の作品に対して厳しいrequirementを持ち続けていて、何十年書き続けても「おっもしろ~~い!」と思える作品を輩出しています。

今回のテーマは骨董屋。しかしビューティフルなものを売るのでなく、ガラクタぎりぎりの民具を廃屋から盗んでくる「ハタ屋」、打ち捨てられて土に埋もれた昔の窯を掘り返す「盗掘屋」(犯罪です)、欠けた陶磁器を修復する金継師、そういう壊れたものばかり欲しがる客、そういう骨董屋と暮らす訳ありげな女たち・・・といった怪しい人ばかりが出てきます。

一箱いくらで売っている雑多なガラクタの中に、ホンモノが混じっていることがある。買い手はそれに気づいても知らぬ顔でタダ同然の値段で引き取る。・・・タイトルの「人が見たら蛙に化れ」というのは、いいものだと気づかれないように、骨董屋がモノに対してかける言葉です。

目つきも顔色も悪そうなステテコ姿の田舎のおっさんばっかり出てきて、読み進む意欲がそがれる部分もありますが、相変わらず面白い。小説で「面白い」というのは私の場合、表現力も大事だけどそれだけじゃなくて、先が読めない、結末に広がりがある、ということかな。想像力をかきたてられる、目の前に情景が浮かぶ。

小説の中で売り買いされる「朝鮮民画」というものについて検索してみたら:
http://www.koryomuseum.or.jp/2008/04/202008412525.html
うわ、下手くそ!てか高麗美術館なんてものが京都にあるのか。
http://www.nikkannet.jp/dentoubi-5.html 
カラフルだともっとすごいなぁ。

最近、日経新聞で「勝手にアーティスト」と題して精神病院に入院中の患者の作品などを紹介してたのをみたとき、どれもすごいパワーを発していてあてられたのですが、何か美術教育ってパワーを育てるのにはあまり役立たない・・・(パワーをそぐ、とまでは言わないけど)という気がする今日このごろです。

・・・以上。

August 16, 2009

宮永博史「理系の企画力!」171

ここではおなじみ、宮永氏の新著です。今回は祥伝社新書、喫茶店コーヒー1杯で読める分量。でもでも中身は新ネタのテンコ盛り、かつ十分掘り下げてまとめられているので、今までにも増してお得感たっぷりの1冊。

まだまだ新しい本が書けそうなこの著者のすごいところは、いい仕事をしている人たちと知り合う力、話を聞くそばからエッセンスを抽出して脳内データベースに蓄積し、適当なタイミングで分析をかけて抽象化する力…なのかな、と思います。百メートル走のペースでマラソンを走るような多忙な生活の中で、こんな本を新たにかけてしまうというのは、ちょっとスーパーです。

さて内容について。
昨日美容室で髪を切ってたら、いつもの美容師さんが、海外のバカンス地で日本人はたった一週間しか休まないのかと笑われたそうな。で、ヨーロッパの人が長く休むのにいい製品や流行をたくさん生み出すのはなぜか、という話になりました。この本の「第1則」の章に出てくる「ぶらぶら社員」の話を読んでて、その話を思い出しました。「ぶらぶら社員」については太田氏のこの本(注:自費出版なんで流通には乗ってないかも)がネタ元なのですが、1年間本来の業務につかずにぶらぶらしながら新製品のアイデアを探す、というアサインメントのことです。

人は同じ環境の中で気持ちを切り替えろと言われても、簡単にできない。会社生活の日常を中断することは、目に見えない肉体的精神的変化を人に与えるんじゃないか…。たとえば3週間の休暇は、1年間のぶらぶら社員よりは短いけど、完全に普段と違う生活を送るには十分かも。少なくとも、休日に仕事ばっかりしてないで普段とまったく違うことをすることは大切だ、と思えます。

第4則で「技術ロードマップの危険性」に触れてる箇所で、「ムーアの法則という”経験則”」という表現を使ってます。経験則というのは、過去の半導体の集積度を計算すると確かに1年半で倍になっている、という意味で正確な表現だと思います。法則なんかじゃありません。これは他社の人が言った目標をなぜか業界一団となって掲げて研究開発を続けるという、世にも不思議な現象。なんで守るんだろう?これが独禁法に触れなくて、生き残りをかけた談合がどうして触れるのか?・・・とか、私にはわからないことがたくさんあるのですが、そういう技術ロードマップを忠実に守ることに慣れているハードウェアメーカーにとっては、マイクロソフトが予定通りに次のバージョンを出すことが半導体集積度と同じくらい当然なことに思えてたんだろうな、と思いました。ハードウェアとソフトウェアの違いとか、そもそもロードマップをどうして守るのかとか、価格破壊が進んだ今はいろんなファクターを考慮せざるを得なくなってると思いますが。

それにしても、この章で鍛造と鋳造の違いを「餅とパン」に例えてるのは秀逸!!混ぜて焼いただけのパン=鋳造、杵で叩いてコシを強くした餅=鍛造。これ、流行らせてほしい。以上。

August 02, 2009

樋口泰行「変人力」170

「愚直論」を読んだ後に買ったんだけど、読んでなかった気がするので予習(何の?)のために読んでみた。

感想:・・・もう読んだ気がする。でも「愚直論」を見直してみても、重複はない。思うに、おそらく「愚直論」の感想に書いた講演会で聞いたはなしと重なってるんだな。
興味があったのは、ハーバードMBAを卒業し、コンサルティングファームも経た彼が、その後どんな風にその経験を現実の経営に生かしているか、という部分。折り合いのつけ方?なのか、最適な適用の仕方、なのか。習ったことをそのまま使えるわけじゃないし、現場の反発や挫折もあるけど、でもやっぱり視線を高く持って全体を把握し、計画するのにビジネススクール的な手法は有用だと考えているようです。某先生がよく使う、ホワイトボードのように巨大な付箋を普段からプランニングにも使ってるらしい。

その手の勉強をした人は、みんなそういうことを思いながら仕事をしてるんだろう・・・。私は仕事に生かすというほど身についてないので、まだ勉強しなきゃと思います。。。