« June 2009 | Main | August 2009 »

July 2009

July 28, 2009

逢坂剛「砕かれた鍵」169

・・・なるほど。こう続くわけか。(←感想)
で、その後は?・・・と、ぱらぱら「よみがえる百舌」を読み直してしまった。こっちの方がよっぽど意味深な終わり方をしてるので、「帰ってきた百舌(仮)」もアリなのではないか。

・・・あっ、あった。百舌は出てこなさそうだけど、大杉・倉木の出てくる「のすりの巣」という続編が2005年に出てます。(Amazonの読者評は若干きびしめ)

他系統のシリーズがまだ何冊かあるけど、他にも読みたいものがあるので、いったん後回しにしよう。

July 27, 2009

逢坂剛「幻の翼」168

しまった、また読む順番を間違えてた。
「百舌」シリーズはこれが2冊目だったらしい。すでに読んだ「よみがえる百舌」は4冊目!めちゃくちゃ飛ばしてしまった。どうりでヒロインの苗字も違うし夫は死んでるし・・・でもおかしいとは気づかなかったけど・・・。

まとめますと:
1冊目「百舌の叫ぶ夜」2007年9月読了(85)
2冊目「幻の翼」この本
3冊目「砕かれた鍵」これから読む
4冊目「よみがえる百舌」2008年9月読了(134)

この著者はシリーズものが何種類もあって、表紙裏のイントロダクションを読んだだけでは、それがどのシリーズかもわからないし、あるシリーズものだとわかってもその中で何番目かがわからない。今回も面白かったので、それだけが残念です。これは著者じゃなくて出版社の問題ですね。

もちょっと感想を書くと・・・
1冊目の終わった時点から書かれていて、続編というより下巻って感じです。ストーリーは面白いけど、私もそろそろこの人の書く犯人像に慣れてきて、誰が本星かはすぐにわかりました。でも犯人探しパズルじゃなくて、エンターテイメントですから、この人のミステリーは。密室ものとか、パズル系のミステリーとは楽しむところが違います。

短編集を2冊読んだ後ですが、長編はさらに力強いですね。ぐいぐいと読ませます。短編と長編両方ここまで書けるのはすごい。かつ、「くっだらな~い」とか「無理やりだなー」とか感じさせません。法律とか医学とか、緻密に細部まで調査してから書くらしいので、リアリティがあるからかもしれないですね。というわけで、続いて次を読みます。
現実逃避は続く・・・

July 26, 2009

トーマス・クーン「科学革命の構造」167

とうとう読み終えました。この本買ったのは2年前ですが、内容が難しい・原文も翻訳も表現が難解・引かれている例が専門的すぎ、という三重苦で、半分くらい読んだ後そのままになっていました。

このたびありがたくも、某教授の指導のもと、ほかの人たちが要約してくれたもの+専門的な引用例の解説+ディスカッションに参加することができて、なんとか最後まで読み通せました。みなさまありがとうございました。

内容は「パラダイム」という語を、現在使われている意味で初めて定義した、科学史あるいは科学哲学の歴史的名著です。大学院では、先生方から耳にタコができるほど「原典に当たれ」と言われ続けましたが、私もそう思います。著者の迷いや出版時の大きな反応、戸惑い、といったものすべてを含めて、オリジナルには原始的な濃さと味わいがあります。

「パラダイムって何?」を手っ取り早く調べたい人は、Wikiでも見ればよろし。
じっくり何十時間もかけて、眉間にしわを寄せて、頭痛がするまで脳みそを使い切ってみたい人は、ぜひ読んでみてください。でも一人で読むより、ケンケンガクガク議論しながら読むほうがいいです。自分の理解が正しくても間違ってても、かならず理解が深まります。

July 25, 2009

逢坂剛「しのびよる月」166

165の前に書かれた短編集。短編のタイトルが、「しのびよる月」だけじゃなくて「裂けた罠」「黒い矢」etc、まったく正しく内容を表してるんだけど、なんとなく、それだけ見ると実際の内容よりシリアスな印象で、ぴんと来ません。でも気になったのはそれだけで、今回も気軽に楽しく読めて、スキのない内容でした。パパありがとう。以上。

July 24, 2009

逢坂剛「配達される女」165

つかの間の逃避・・・。久々のパパ’sライブラリーから。

「軽ハード・ボイルド」というジャンルだそうです。くたびれたコートを着た男性刑事二人+謎の女性刑事一人が、ときに無茶をしながら、町の事件を次々と解決していきます。昔からの確執あり、ほのかな恋愛あり、現実にあったら懲戒免職!な暴力あり。疲れた頭をくつろがせてくれる、楽しい短編集です。この作家はやっぱり達者ですね。無理やりな設定も、フィクションだと割り切って楽しめます。日々の仕事に疲れた人にはオススメです。

しかし・・・シリーズものの2冊目から読んでしまったらしい。順序が逆だけど、次に1冊目のほうを読みます。

July 20, 2009

D.A. ノーマン「誰のためのデザイン?」164

ずーっと前に買ってあった本を連休中にやっと読んだ。
「デザインとは」を考える人が必ず読むべき本のように言われている本。
読んだ印象は、アート関連とは思えない、ビジネス書(いかに売れる製品を開発するか、の範疇)ですね。これがアートとビジネスの接点だとしたら、ずいぶんビジネス寄りです。

「ここでいう「デザイン」ってどの範囲?」の答は、見た目というよりモノの設計、ユーザーインターフェース+その裏にある仕組みすべて、というくらい広いです。
で、この本のテーマは、読む前は「人間工学(予想される人の自然な動き)に従った設計をすべき」だろうと予想してたんだけど、むしろ「失敗学」・・・「人が起こす誤りを見越した設計をすべき」ということでした。荷物が合計3つ以上になると必ず1つ置き忘れる、ヒューマンエラーの見本のような私としては、少し励まされる内容でした。

欧米の電気機器って、特にUIがすぐれたものしか本に出てこないし、輸入されることもないから知らなかっただけで、ずいぶんひどいのがいっぱいあったんだなぁ。日本では発売される前に却下されるだろう、というものもたくさん載ってました。アメリカ人がこういう本を書くのっていいことだと思うけど、「経験価値マーケティング/経験価値マネジメント」と同じで、East Asiaでは当然のことを仰々しく取り上げることで、欧米では「目からウロコ!」とか言って騒ぎ立てるのだな。

三鷹光器の社長が、望遠鏡をマイナス30度でも調節できるよう、余裕を持たせて作った話をしてた。脳内用顕微鏡も、手術中に医師の視界をさえぎらず、作業がしやすいように(ミスをしにくいように)頭の上からアームが下りてくる設計にした、と言ってた。そういう配慮がモノの側にあると、心配事が少なくて済むので、気分が楽なんですよね・・・。

「デザイナーが賢ければ」エラーを回避する仕組みを作れるだろうに・・・といった文章がよく出てくるけど、ここでいうデザイナーは製品の設計責任者だろうか、と思う。会社に「デザイナー」と呼ばれる人が存在するとしても、ケーキの最後のデコレーションをするくらいの微調整をする権限しか持たないことも多いんじゃないかな・・・。

考えうるヒューマンエラーの8割くらいはやらかしてしまう私は、コンシューマーモデルとして金を出して雇ってでもテストに参加させるべき存在ではないかと思うんだけど、すぐれたプロの人たちはオバサンの言うことに耳を貸そうとはしないものです。ジョブスは「カリスマ」がつく普通のオバサンで、彼がワガママと称する強制力を発動するからアップルはコンシューマー(あるいはマニア?)が喜ぶ製品を作れたのでは・・・。

第6章に「Creeping featurism(なしくずしの機能追加主義)」のことが書かれています。ユーザーが求める機能を律儀に追加しつづけて、やがてどでかく重たく複雑怪奇なモンスターができあがるという話。どこかで聞いたような話だ・・・。「ユーザーがなくて困ると言っている機能のほとんどが、すでに入っているのに気付かれていない。隠れた機能をもっと使ってもらうための仕組みを考えてるんだ」という話を聞いた後でリボンというUIが発表された。長年のユーザーである私としては、位置を覚えてたボタンが見つからなくなっただけなんだけど、このバージョンが初めてという人には便利なんだろうか?機能を減らすという勇気は、どうしても持てないらしい。
ユーザーが本当に求めているものを作ることが、収入減につながるとわかっている場合、私企業はふつう減らす決断はしない。もっと見込みのある新しいビジネスを開発できれば、そのビジネスを捨ててそっちに資源を注入するべきだけど、縦割りの組織ではそれも無理。
てかこの本が書かれたのは1988年・・・Windowsのバージョンはまだ2だ。ならMacやVisiCalcしか褒めないのも無理もない。(著者が評価してるポイントには共通のコントロールや標準化されたプラットフォームも含まれるのですが。)

July 15, 2009

ペニー・スパーク「20世紀デザイン - パイオニアたちの仕事・集大成」163

A4変形サイズ、272ページオールカラー、ハードカバーの豪華本。
最近集中的におっかけている「デザイン史」関連ですが、この本はいわば「デザイナー図鑑」です。

どんなにうまくやろうとしても、個別のデザイナー(画家とかもだけど)をひとくくりにしてなんかのグループに入れようとするのは無理がある。従って、デザイナーごとにその作品サンプルを多数カラーで配し、ごく短いテキストを添えたこの本は、アーティスト別に編纂された美術全集と同様、何より参考になります。(1万円超もするので買えないのがツライ)

かつ、日本の人が書いた本よりイギリスの人が書いた本を読んでみたかった。この人はV&Aミュージアムと共同で開設した王立芸術大学のデザイン史コースの教授らしい。だからか、網羅的でかつ理論に流れず冷静です。実物に囲まれていて初めて、流れも見えてくるはず。

とても楽しく面白く読めました。(眺めた、というか)字ばっかりの本をいくら読んでも人名が覚えられないけど、これが手元にあったら、事典がわりに使えていいだろうなぁ・・・(買えないけど)

この本で目立つのは、Mr & Mrsなんたらという項目が多いこと。著者が女性だからでしょう、著名なデザイナーの妻もデザイナーである場合、妻のほうの影響度も実は大きいことがある・・・という点まで掘り下げて調査しているようです。

昔アルビン・トフラーの講演会に行ったら、質問に答えてるのは奥さんだった。その後の本は夫妻の共著ばかりだし、実際は本を書いてるのは奥さんの方なんじゃないか・・・という話を某教授から聞いたことがあります。Shakespeare's Sisterなんて話もあるし、著名デザイナーの中には実はほとんど妻の作品だったというケースもあるとこの本の著者は思ってるのかもしれません。

July 11, 2009

古田マリ「絶対『間に合う』仕事術」162

「仕事の設計図を描く」に続く、同じ著者の本です。

前の本は、仕事の時間的空間的な全体像を常に把握しながら進めていくための考え方について書かれた本、って印象でしたが、今回は総論よりも徹底的に各論に踏み込んだHow-to本です。

具体的に著者は、建築業界に携わっている自身の経験を踏まえて、4つのツールを提唱しています。その4つとは:
1.ガントチャート
2.クリティカルパス
3.目標管理透視図
4.敷地図

ガントチャートとクリティカルパスは、プロジェクト管理に使っている人も多そう。クリティカルパスはガントチャートの一部?
しかし「目標管理透視図(パース)」と「敷地図(エスキース)」は見たことないでしょ?建築の業務上描く図を元にしてるけど、自分の計画をまとめるのに使えるように思い切り単純化されています。

透視図は視点から最も遠い地点をゴールとして自分の最終目標を置き、現時点からそこに向けて数か所の時点での、自分のマイルストーンとアクションアイテムを書き込んだもの。具体的な目標達成のためのチャートですね。

敷地図は、ポーターの5 Forcesみたいなものですね。自分の内面的な要因だけでなく、社会環境や競合といった外部要因を書き込むようになっています。

マインドマップ研修を受けたけど身についてない私に、こういうツール群が使いこなせる日は来るんだろうか・・・。ガントチャートはボスに言われてプロジェクト計画に使ってるけど、外部リスク要因が大きすぎて役に立ってない。自分にステークホルダーの選択自由がない場合は、「ああ、遅れてる~~」と現状把握してオタオタするだけだったりする。(つまり問題はツールじゃなくて社内の組織)

馬鹿とはさみは使いよう、というくらいで、この本を読むだけで必ず納期が守れるようになる、というような簡単なものではありません。このツールをマスターして使える人は、多分それをカスタマイズしてもっと自分に合ったツールにできる人だと思う。ツール偏重になるのはよくないけど、自分の考えをまとめる補助として、こういったものを使いこなしてる人もいるのは事実。興味のあるところから、無理のない範囲で使い始めてみるといいと思います。

桜井啓子「現代イラン 神の国の変貌」161

授業の流れで読んでみた。

正直歴史はからっきしダメなので、イランの今の国家がどういう風に形成されたかなんて説明できない。つい先日の大統領選のことも、少しあちこちで読んで知っただけ。

たまたま最近、26歳のイラン人の女性と、43歳のイラン人の男性とかかわることがあったんだけど、同じように日本で働いているといっても立場が全然違うんだな。1986年のイランで軍隊を構成していたのは18歳から26歳くらいの、(農地改革で仕事を失って)都市に流れてきた若者たちだったと書いてあるけど、彼はまさにその年齢。そして、戦後祖国で教育を受けても仕事につけない若者が大量にバブル真っ最中の日本に流れたとも書いてあった。私はその頃、のほほんと学校に通ってバンドやったり受験勉強したりしてた。悩み多き年頃ではあったけど、明日人を撃つとか撃たれるなんて心配をしたことはなかった。

10代前半の若い少年兵も、戦争で死ねば天国行きの切符が手に入ると言われてたくさん駆り出されていったらしい。やりきれん・・・。

Winds of Godっていうお芝居が話題になったことがあったな。目が覚めたら自分が戦争の中にいて、周りの人たちがどんどん特攻隊として戦闘機に乗り込んで行ったら、自分も行かなきゃいけなっていう気持ちにならないだろうか?そういう世界を実際に体験してしまったら、20年たっても、友達がたくさん死んでいった戦争の大義名分を否定するのは難しいだろうと思う。

同じ年代を日本の学校で過ごした彼女のほうは生きてきた時代が違うし、環境も全然違う。日本の報道をみて「そんなに単純じゃない」とだけ彼女は言って、そのあとは無言。

単純じゃない理由は、その国が周囲の大国の緩衝地帯として利用された、ということもある。国内のいろんな勢力が、前はあっちの国についてたのに、今度はこっちの国と組んで・・・と振り回されているうちに、本当は仲良くしてたはずの人たちが憎み合うようになってしまう。

知ることで自分に何ができるわけでもないけど、彼らに対して、うっかり無神経なことを言ってしまうことが前よりは少なくなるかな。

July 01, 2009

小池昌代「裁縫師」160

友達に薦められて読んだ。
どの作品にも、一見とても平凡でまじめで目立たない人たちの”物狂い”が描かれている短編集。物狂いというのはここでは、狂気のようではなくシラフで冷静だけど、その人のある一部分だけが常軌を逸した方向性に走り出して止まらなくなった・・・という様子のことを表してるつもり。

たった9歳の女の子が仮縫いの途中にそのまま裁縫師に押し倒されてしまうというシチュエーション、自分の幼いころのその記憶をたどりながら黙々と掃除を続ける年老いた掃除婦。というのが表題作のモチーフで、そういう女性らしいファンタジー(nearly equals 物狂い)がちりばめられています。

発想は面白いんだけど、なんか読んでて照れる。「そこでそう来る!?」と考えさせちゃう隙がある。「(私はそのとき)9歳の娼婦であった」なんてこと、書かなくてもこちらがそう読みとるようであってほしいんだ。有無を言わせずぐいぐい引き込んでほしい。

てか私はなにを本ばかり読んでるんでしょう。他に仕事とかやることもいっぱいあるんだけど・・・。
以上。