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January 2009

January 29, 2009

リリー・フランキー「東京タワー」152

吉祥寺に出かけたとき、古本屋の店頭で300円で売ってたので買ってやっと読んだ。ベストセラーは、読みたくても、買わずに図書館や人から借りられると思って、読みそびれるものが多い。

予想と違って日記のようなエッセイだった。もっとドラマチックで美しい小説のようなものかと思ってた。(違う人の書いた「Tokyo Tower」と間違えてる?)

帯にいろんな人の感想が書かれていて、それ自体とてもいいのだけど、帯からますます大泣きするような本かと思った。実際は笑い、だんだん暗い気持ちになり、全体的にはまるで自分の日記を読み返してるような個人的な入り込方をして、涙ぐんで終わった。

この人とはずいぶんニアミスをしてる。私が高校生の頃、この人は同じ町に建ってるもうひとつの高校に通っていて、この人は友達の友達の友達だったらしい。・・・って他人なんだけど、もっと正確にいうと当時の私のボーイフレンドから、一番仲のいい友達が「中川先輩」の下宿に住みついてるって話をしょっちゅう聞いてたので、その人だと最近聞いてびっくりした。一度も会ったことはないけど。

その後私が行った大学と同じ町に建ってるもうひとつの大学に、この人は通って、同じ玉川上水沿いの似たような下宿に住んでたらしい。

さらに、私が10年間通った会社の近くのボウリング場の上にこの人は住んで仕事をしてたらしい。動線がクロスすることはなくて、永遠にニアミスなんだけど、だから風景になんとなく見覚えがあるのだ。

家庭環境とか違うこともたくさんある。この人は、親が立派だと子供がいつまでも自立できない、の典型のようだ。
とにかくこの人の母親は明るく親切で働き者で、無私無欲の仏様のような人で、一方うちの親は凡人でネガティブでいつも金がない金がないと言ってたので、私は自立を目指してキャリアウーマン養成所へ進学。親に仕送りすることを夢見て勉学にいそしんだ、という訳。

・・・というのはウソで、自堕落で昼夜逆転でバンドばかりやって暮らしてました。すみません。でもなんか、母親が亡くなるという精神的な経験は、この人の経験がみょうにすーっと落ちるように入ってくる。大学卒業間際の11月末に私の母は亡くなり、ますますこの人の経験と自分の経験を重ねて読んでる。書かずにいられなかったんだろうけど、書いても救われるわけじゃなくて、どっかに漂ってるような気持ちでいつまでも暮らしてる。いい大人が。・・・というのが、とてもすっと落ちる。

おっと、ただの日記になってますね。書評っぽいことも書こう。とにかく驚くほどよい文章です。美術の才能がある、というか絵で写実ができる人は、シワやゆがみや陰を先入観なしに写し取って描くことができるから写実がうまいのであって、そういう人がペンを持って感じたままをそのまま文章にするといい文章になるんじゃないかと思う。

これはエッセイだから、二度と同じ題材のものを書くことはないだろう。魂をこめて一回だけ書いたんだろうな。普遍的な名作なのでいろんな言語に翻訳して遠い国で売っても受け入れられると思うけど、何億人の人が共感しても、この人のうすら暗い気持ちが明るくなるわけじゃない。かけがえのない人の死に際して罪の意識みたいなものを持ってしまった人は、それ以外の境遇がどんなに違っていても、同じ種類の暗闇にずっと悩まされる。

世話を怠ってウサギを死なせてしまうというエピソードが出てくる。・・・昔よく変な夢をみたなぁ。家でいろんな生き物を飼ってることを忘れて暮らしてて、あるときふっ、と思い出す。青くなって見てみると、いつから餌をやってないか思い出せないくらいなのに、なぜか生きてる。ああ、夢でよかった、って目を覚ます。自分は本質的に罪深いんじゃないか、わきまえて気をつけて暮らさなきゃ、という気持ちになる。・・・こういうのが、母親を亡くした人の気持ちに共通するところがあるかもしれない。父親ではなく。

作品そのものではなく、自分について語りたくさせる作品は、たいがい名作なんだ。ていねいに読んで自分の半生を振り返ってみてください。

January 26, 2009

東山彰良「逃亡作法 Turd On The Run」151

この本を読み始めて何に驚いたって、ここ数十年の新刊本でおよそ見かけることのなかった●●●とか■■■■みたいな表現が伏せ字なしにふんだんに使われていることです。宝島社おそるべし。こういう●●●とか■■■■って、私が聴くような日本のロックですら一般発売される前にきれいに書き直されてるんだけど、宝島社ではOKなんですね。

ワイルドでバイオレントっていうのを目指してちょっと力んでるかんじで、感想としては、読みづらかった。熱帯魚の水槽が並ぶ部屋で大麻を乾燥してたり(カビが生えるぞ)、凶悪犯ばかり入ってる刑務所で残虐なシーンをみて一斉にみんな嘔吐したり(意外とデリケート?)。。。作り話でいいんだけど、リアルに見せるためには細部が大事だと思う。

Amazonの評価はこれより後に書いた他の本の方がいいみたいなので、もうちょっとこなれた後の作品を、機会があれば読んでみたいです。

January 25, 2009

トム佐藤「マイクロソフト戦記 - 世界標準の作られ方」150

ビジネススクールで取り上げずにいられないデファクト・スタンダードの典型例・・・といえば、マイクロソフトのWindowsですが、また聞きにまた聞きを重ねた人が想像で書いたもの(世の中の本のたいがいがこれだ)を読んでも、ビルゲイツがIBMと交渉したときの空気や、日本のメーカーとライセンスしたときの雰囲気はもはや伝わってきません。割と、1995年あたりに書かれて今はAmazonマーケットプレイスで1円で売られてるようなゴシップっぽい本なんかを読むと、当時の雰囲気が残ってたりするけど、この本はもっと実感がありますね。80年代にマイクロソフトに入って日本のWindowsのライセンスに最初に携わった人が日本語で当時を語り、分析していますので。

PC業界が形作られていった時代を実際に生きていた一人の人による、Another story、という感じ。生の声ってのはいいもんです。ひとりひとり見たもの、感じたことが違う。だからリアルなんですね。

この本の強みは、淡々と、面白おかしく、事実を語っているところ。感傷にふけることなく、MS批判にも礼賛にも傾かず。600ページに及ぶ「インテルの戦略」のような戦略分析本ではないので、文献というより参考資料という感じで読むとよいかと。

出だしはなぜかロンドン大学に(著者はイギリスで高等教育を受けています)安置、というより堂々と展示されているジェレミー・ベンサムのミイラの話から始まります。ベンサムってむかし教科書に出てきた人じゃないですか。そのひとが遺言でミイラになって、今も学生たちを監視?しているそうです。・・・

というトリビアのためにミイラを持ち出したわけではなくて、彼の説いた「最大多数の最大幸福」こそがWindowsの勝利の真髄だ、とつながっていきます。

そうなんだよな。メーカーは商品を差別化したいけど、マニア以外のユーザーはコンピュータなんてどれでもいい。ちゃんと動けばデザインがカッコイイ方がいい(ここを熟知してるのがSteve Jobsだ)。OSなんて正直動いてくれれば何だっていいので、差別化なんかしないでできるだけ安くて互換性が高いものがほしい。

マイクロソフトって会社が、設立当時からとっ散らかった会社で、現場の優秀でまじめなスタッフが、トップのおおざっぱな号令をinterpretして実践し、会社を支えてきたことが、よくわかりました。著者の明るい語り口が、そういうすべてを笑い話にしている、読後感のいい本です。

January 17, 2009

山田 祥寛「10日でおぼえるXML入門教室 第2版」 149

最近本読んでないな。でもそういえば冬休み中に斜め読みした本があったので、書いておこう。
XML・・・最近これ重要なんですよ。Webサイト関連の仕事をしてるので、わからないでは済まされない。かつ、少しでもわかるようになると、仕事がずっとやりやすくなる、ということがわかってきました。

HTMLとどう違う?っていう部分とか。自分が担当しているページがどういう構造になっているか。それくらいはわかるようになっておきたいです。

この本はマジメに課題をやると、自分のやりたいことをこじんまりとXMLで始めてみるのに役立つと思うけど、最初から複雑な構成ですでに公開されてるサイトに関わってると、この本だけでは全然知識や情報は足りません。あとは自分でそれぞれの担当者に聞いて回るしかないだろうなぁ。

がんばります。はい。