諸田玲子「恋縫」138
ううむ、女は怖い!
4つの短編を収めたコレクションですが、どれにもファム・ファタール、妖婦ってやつが出てきます。
性根がよかろうと悪かろうと、騙す気があろうとなかろうと、男を惑わせて奈落の底に突き落とすという点では同じ。男も懲りずに次から次へと湧いて出てきては、引っかかる。まるでセクスィ~部長に出会った女性たちのようです。
しかしよく描けてます。チンピラだろうと極悪だろうと、いかにもいそうで憎めない。常識的な、あるいは高潔な男たちが堕ちていく様子がリアルでぜんぜん不自然じゃありません。とても力のある作家だなぁと思います。女流でなければここまで書けないでしょう。
イヤミもなくすーっと読めて後味も悪くない。ただしひとつ、初出のときから結末を(!!)書き換えた作品が含まれてるそうです。最初は「藪の中」的に、どうともとれる結末だったらしいんだけど、今回すっきりとした結末に書き換えられてるんですって。解説者はそれを肯定的にとらえてますが、私も同感です。江戸ものは、疲れた現代人が読んで、さわやかであったかい気持ちになるようでなきゃ!
という訳で、星4つ。
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