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October 11, 2008

中根千枝「タテ社会の人間関係」136

産業集積論ってのを今年の4月からすこし勉強してたのですが、
伝統的な産業のある地域に大学と大企業とその周辺企業を集めても、産業集積が起こって継続していくとは限らない。条件ではなく、なにか”マジック”みたいなものが必要だとしか思えなくて、そうである限りはgoernmentがいくらお膳立てしても産業集積がうまくいくはずがない・・・と行き詰り、むしろ文化人類学的な検討が必要なんじゃないかという気がしていたのです。で古典的かつ基礎的なこの本を読んでみました。

ちなみにこの本の中では専門は「社会人類学」とされてますが、wikipediaではほぼ文化人類学と同義だとされてます。

この先生のことは、中尾佐助「秘境ブータン」に、自分より先にブータン横断した人として紹介されていたり、講演会に行ったときに「日本の男尊女卑は文献だけで入ってきて曲解されたものだ・・・チベットでは男はみんな入り婿で女は強い」という話を聞いたりしてたので、さぞかし豪傑だろうと期待して読みました。
この本は、日本の社会を、表面からでなくその成り立ちから科学的に分析しているようなので面白そうだと思って読み始めたんだけど、スカっとした歯切れのよさは、本の終盤にいくにつれて「あれ?」となっていきます。
・日本人は理性でなく感情で人間関係をとらえる、と何度も書いてるけど、終盤は学会や探検での序列に対する批判が若干筆者自身、感情的に感じられる(理論の正しさを裏付けているわけではあるけど)
・海外経験がたくさんあるのに、日本と類似の例が一つも出てこない(英国やインドと対比するだけ)
・MECEじゃない感じ

日本人は同質な単一社会で、タテ(組織の在籍期間、nearly equalls年齢)につながる人間関係をきわめて重視し、ヨコ(同じ「資格」を持つものどうし)どうしは激しく競争するが、英国やインドではヨコのつながりを重視する。というのが趣旨で、1967年にこの本が書かれて以来、いまやタテ社会という言葉をこの人が作ったことなど知らなくても困らないくらい誰でも使ってます。40年たって日本の社会は変わったのかしらん?それほど変わってない部分も多そうだけど、日本人は外からの影響を受けやすいというのもこの本に限らずよく言われることで、外国帰りとか外資系とかでは、表面的な行いは少なくとも「イギリス・インド」に近い部分も生じてるかもしれない。かつ、そういう外国めいた人たちが従来の社会で気を使う or 孤立するのは変わってない。

以下、思ったこと。
下辺がつながってない二等辺三角形の図が日本。タテ関係を重視し、ヨコのつながりが薄い。思い出したのは・・・ライブで観客がみんなステージだけを見てて、観客同市で友達ができたなんてほとんど聞いたことがない。駅前広場で演奏してる駅前ミュージシャンも、彼らどうしはバラバラでうるさい。なんかセッションでもしてみればカッコいいのに。「クラブ」ってところで、みんながDJを向いて踊ってるのを見たときはちょっと気色悪かった。(いつの話だ)・・・・でもこの本の話とは全然関係ないかも。

日本人とそれ以外のアジア人はどうも一様ではない、と感じることはよくあるんだけど、この本でも常時日本 vs インドと英国(筆者が長く滞在したことから)という不思議な対比が出てくる。アメリカって国はこの人のいう意味ではむしろ日本に近いところがあるんじゃないかな。歴史が浅い国だから資格=身分は極めて流動的。アジア移民の3世や4世が名門大学を出てprestigeousな職業につき、初の黒人大統領が生まれようとしてる。

じゃあインドにも英国にも米国にもない日本だけのタテ社会性の正体はいったいなんだ!?・・・日本人だけ先祖がニホンザルなんじゃないか。
とか言うと冗談でも怒る人がいるかしら。ニホンザルってほんと日本人みたいだよね。あの家族愛、あのヒエラルキー。農村の大家族を見てるようだよ。

女子大(筆者は実は先輩)のクラス会を卒業15年後くらいにやったときに、みんな変わってなくて驚いた。年はとったけど、服装や髪形が同じなのだ。思えば当時から私たちのファッションはバラバラだった。8人グループでお揃いのものを着たり持ったりしてた試しがない。こういう孤立を恐れない日本人は孤立することに慣れるか、外国に行っちゃうんだろうな。

で、産業集積とからめて知りたいのは、「シリコンバレーはタテかヨコか?」
たまたまそこに集まってきた人(タテ・場)なのか。スタンフォードを出てIT業界を経験したアンチ大企業の移民たち(ヨコ・資格)なのか。やっぱヨコな気がするなぁ。MOTは資格(所属業界も年齢もバラバラ)じゃなくてやっぱり場だなぁ。タテ社会の日本の産業集積はシリコンバレーと同じではいかない気がする。どうやって形成すればいいんだろう。

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