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July 2008

July 28, 2008

門田泰明「美貌のメス」128

うーん、これは・・・なんてつまらない本を読んでしまったんだろう。

きっとこれは、サラリーマン向けの退屈しのぎとして書かれたのだろう。
美貌で超ナイスバディの敏腕女性外科医が、男性医師のネタミやソネミを受けつつも、小児患者に母のような慈愛のまなざしを向け、腫瘍には強い憎しみを抱きつつ、文章のソコココで「豊かな乳房を両手で持ち上げるようにして」腕組みをしたりしながら、次々に難しい手術をこなしていく。

きっと、5ページに最低1回はそういう描写を入れろと、それでも、あくまでもポルノではなく医療小説であると。
そういうものを書かなければ二度と仕事はやらない!と、編集者に言われて泣く泣く小説家としての良心をcompromiseしたのだろう。

わざわざ旅行に持ってこなきゃよかった。この本は部屋に置いて帰ります。
以上。

July 21, 2008

「千葉ロッテマリーンズ 変革の300日」127

私は元々野球に限らず、競技スポーツ全般にうとい。だから以前のマリーンズがどういう球団だったのか知らない。でも、プロ野球を観に行ったことがないわけじゃないんだ。だから、人があんまり入ってなくて盛り上がらない球場と、観客が心から楽しんでる球場の違いは、実感できる。

私が野球を観に行ったことのある球場は、西武球場と横浜スタジアム。西武球場では、ライオンズとイチローがいた頃のオリックス戦をみた。週末の昼間だったし、イチローがちゃんとホームランを打ったので、歓声を聞いた(ちょうど私たちは席を移動してて見損ねた!)けど、ポップコーンとビールくらいしか売ってなくて、試合直前に到着して、試合後もすぐ帰ったのを覚えてる。

横浜スタジアムに行ったのもかなり前だけど、たぶんもうベイスターズになってたはず。このときはさらに球場がガラガラだった。日本に滞在中のアメリカ人夫妻と一緒で、彼らが選手のサインを集めてた。外国から来た野球ファンだというと、意外と簡単にサインに応じてもらえると言っていて、実際いとも簡単にサインをもらって出てきて驚いたのを覚えてる。

日本の球場なんてそういうのが普通だったってこと。

一方、シアトルのSafeco Fieldsには3回行ったことがあるけど、全然違うのだ。初めて行ったときは自分でいい席を取って行ったら、あまりに席とフィールドが近くて、高さも同じで、びっくりした。それだけじゃなくて、球場には売店がたくさんあるし、観客はみんなマリナーズのシャツを着てるし、巨大な電光掲示板と巨大スピーカーから絶え間なくメンバー紹介や宣伝が流れていて、どこを見ても「さびしい一角」がない。コンサートホールよりもっと明るくて賑やか。ディズニーランドのアトラクションと売店を合わせたみたい。試合が始まると観客はうるさく騒ぐやつばっかりで迷惑なんだけど、でも楽しさはなくならない。みんな力いっぱい楽しみに来ていて、そこでもますますイチローはファンを常に意識して楽しませようとしてた。

という訳で、アメリカの球場と日本の球場はまったく別もので、日本のはぜんぜんつまらない、と思ってました。だから、この本を読んで私が思い浮かべたのはSafeco Fieldsなわけです。日本の盛り上がらない球場がSafeco Fieldsになった。・・・言うは易し、行うは難し。球団運営サイド、選手、ファン、その他関係者が一団となって前向きに楽しみながらがんばって、本当に楽しい野球体験が出来上がったということなのですね。
盛り上がってない一角がたくさんある会社が、みんなが本当に楽しめる会社に変わるという決意をする。まず変化後の会社を明確にイメージすることがかなり難しい。実現するための仕組みを作るのも難しい。実現させるのはもっと難しい。継続するのはさらに難しい。

やりとげた人たちの話を聞くと、その途中でくじけそうになる気持ちにエネルギーを注いでくれます。そういう意味で、読む人にポジティブな力を与えてくれる本です。

July 14, 2008

大野耐一「トヨタ生産方式」126

いまさら、と言わずに読んでみました。トヨタ生産方式に一生をささげた著者の思いの詰まった名著です。

普通だと、やっぱすごいよトヨタ、とあくまでもポジティブに読むんだけど、最近知り合いがたまたまトヨタの工場見学に行ってきた話や、そこで働いていた人が起こした事件のことも思いながら、少し複雑な気分で読みました。

気になるのは、この本で一貫して説く「無駄をはぶいて人間が何もしない時間を徹底的に排除する」というやり方。ある工程で金型を組み替えるのに、昔は1時間かかった。これが今では3分でできるようになったそうです。

工場に行ったこともないのに想像で言ってるだけなんだけど、「あそび」というものも、人間には必要じゃないのかな?体だけじゃなく、脳みそも使えば疲れる。人間が機械のように無駄なく働いているという状態が続くと、疲弊しないのかな。見学に行った人(学校関係ではない)が、”あんなに人間がラインに組み込まれて、何か不具合があるとラインが止まって工場じゅうにブザーが鳴り響くという状況では、自分だったら1日ももたない”って言ってたのが心に残ってるのです。

著者の大野氏自身、フォード社の生産方式はその後、フォード氏が言ったことを誤って解釈してしまって、 なんでもかんでも大量生産、流れ作業・・・という方向に流されてしまったと言ってますが、今のトヨタは大野氏の考えの本質をきちんと実践できてるのか、ということも問い続けないといけないのでしょうね。(p182 )

印象に残った部分。
p84 いまの工業時代は「農業マインド」と「コンピュータ・マインド」の中間に「工業マインド」があってしかるべき。コンピュータのあまりの性能に振り回されていないか?・・・といいます。
この人の理屈は、”作りすぎ、高性能すぎ、というのも、あってはならない無駄である”というものなので、性能過多や情報過多はNGなのです。この考え方は筋が通ってて、いつの時代にも一貫して通用するものだと思います。

p94-トヨタ生産方式における「経済性」の考え方を、「工数低減」と「原価低減」の関係を通じて具体的に述べるところ。「1つの目的に対してその手段なり方法は非常に多いので、考えられる改善案を数多くあげ、それらを総合的に1つ1つじっくり検討して、最善の策を選ぶべき、といいます。
十万円の機械を買って人を減らすことを考える前に、作業手順を変えて減らすことを考えるべき。それをせずに機械を買うのは十万円の無駄だ!

p97- 過剰在庫は無駄な倉庫、無駄な運搬費用、無駄なメンテ費用を生む。

p100- 外注か内製かの判断をするとき、外注するより中の作業の無駄を省いて余力を作って、中でやるほうが経済的有利だと決まっている。

p114 古い機械も大切にメンテして使い続けるのがお得に決まってる。「原価償却」というような数字にだまされてはいけない。(個人的には、その場合、金属疲労とか部品の摩耗とかにはしっかり気をつけてほしいです。)

p120 「0.1人も1人である」・・・まったくその通りです。なんか新しいシステムを入れることによって0.2人減らしました、とか言っても、ひとりひとりの仕事が少しずつ減るだけで、その分の新しい作業がなければ、無駄を作り出すだけ。
でもここで私が思うのは、一人の労働の中の無駄(あそび)は100%なくすべきものではない、ということ。徹底的な合理化には、心理学とか組織論とかも加味してほしい。

p180 「労働の価値全部に対して支払いができるようにするために、労働の価値全部を利用したいというのがわれわれの希望である。」天然資源はもともとタダで、それを採掘したり運んだりする人間の手間に対価が発生する・・・というくだりで、この発言が出てくる。天然資源も土地も、もともとタダだけど、対価は労働だけに発生するわけじゃなくて利権とかロケーションの付加価値とかで投機的に値段がつけられるところもあると思う。

モノは無駄にしないのが鉄則。リサイクルには多大な資源がかかるので、最初から廃物を出さないようにするのだ、といいます。これは強く同意。

p196 フォードが、車体に使用している繊維素材のほとんどが綿だが、本当にそれがベストなのか?単に手に入りやすいという理由で、最適ではない材料を使い続けていないか?と自問し、会社の近くで亜麻の栽培を始めるところが引用されてる。常に自問自答する姿勢が大切なのですな。

・・・この人の理論は、同種 or 異種 x 大量生産 or 少量生産、のどれにもたぶん当てはめることができるけど、災害時には在庫が少なすぎて脆弱だし、パイ自体が小さくなったときに耐えられないという点は他のどの生産システムとも同じだ。今はその「パイ自体の縮小」なので、そうなると生産技術の改善じゃなくて、新しい市場の開拓や新しい分野への進出といった、製品イノベーションが必須になってきます。

この本は100%生産技術の話だけで、製品イノベーションとはまったく無縁。クルマはこれからますます大変だろうけど、逆に楽しみでもあります。

以上。

July 13, 2008

浦沢直樹「20世紀少年」125

前にいちどネットカフェにこもって読んだんだけど、完結してから改めて読み直してみました。(滞在7時間)いつもながら、この人の作品はスケールが大きくて読みごたえがありますね。

しかし、タイトルが20th Century Boyでしょ、主人公の名前がズバリ遠藤ケンヂでしょ、スーダラダで世界征服を阻止って、なんというか壮大な酒の席のネタを本当にマンガにしちゃったの!?えぇ!?・・・とも思う。

カルト宗教なんて、10歳の子供の狭い世界をそのまま現実に持ち込んだようなものなのかもしれないけど、数百万人の信者の中から反乱分子が生まれたり、悪を暴くジャーナリストや弁護士が現れたりしないまま、USやEUから科学的合理的政治的な反対勢力のひとつも現れないまま、教祖の10歳の頃の10人未満の仲間を中心にして日本だけでなく世界征服まで実現してしまうってのは、ちょっと大ボラすぎないか?

Monsterがリアルに感じられたのは、舞台が外国だったからなのかな?あれは背筋がぞーーーっとしました。

音楽って同じ世代に同じようにラジオから流れる曲を聞いてても、そのエクスペリエンスはとてもパーソナルでエモーショナルなので、意外と同世代でも共有できないもんです。今日もT.Rexかけながら車をぶっぶーと走らせてきたけど、20th Century Boyと地球を救うってのがまったくつながらない。いくらウダツのあがらない中年ロッカーだとしても。

Wikiにかなり詳しく説明がありますが、「西日暮里の十字路でエロイムエッサイムズのギター・ダミアン吉田が、「悪魔くん」(ケンジ、相手のバンド名にちなんで名乗る)と遭遇し演奏を聴く。 」はロバート・ジョンソンとか映画クロス・ロードを引用すべし。チャック万丈目の出所はウルトラQの主人公だけでなくチャック・マンジョーネも記載すべし。これ書いてる人、若干若い世代なのかなぁ・・・。

続々編も書くつもりなのかなぁ?いつも、書けるくらいの伏線は残しておくけど、MonsterⅡも書いてないし、ないのかな。書こうとすれば、敷島教授の娘+名前不明のイケメン幹部(Monsterの主人公ヨハンに似てるー)が高須の子供を新しい「ともだち」に祭り上げるとか、(陳腐ですね、すみません)いくらでも書けそう。

ちなみに、続々編でも、新しい作品でも、きっとまたこもって読みます。またぞ~~っとするやつ書いてください。
以上。

July 12, 2008

常盤文克「コトづくりのちから」124

「モノづくりのこころ」に続く第2弾。「コト」とは形のある「モノ」に対して言葉や暗黙知といった、形のないものを広く指すことばとして、ここで取り上げられています。たとえば、人々が力をあわせて力を発揮できるようになるきっかけや、意識、目標、といったもの。ホンダがF1に出たりアシモを開発したりすることは、社員の士気を高める「コトづくり」、というわけです。

こっちの本では、大企業に頭を下げる必要のないニッチトップの中小企業も多数取り上げられています。Management of Technologyの重要性についても説いている。その分、東洋思想に深く傾倒している前作と比べてMOT本の色合いが濃いですね。

引き続き3部作の三冊目も読み進めます。

July 06, 2008

ゼロから学ぶWebプログラミング(日経BPパソコンベストムック)123

いやー勉強になった。
わかったことは、Webプログラミング技術は日に日に進歩している、とか言うけど2004年に出たこのムックですでに現在メジャーである技術はほとんど確立されてたということ。

例えばPHPのバージョンはこの時点で5.0が出たばかりで、使われているサーバー数は1700万だったけど、2008年7月現在のバージョンはまだ5.2.6だし、サーバー数は2007年7月の時点で(古いな)2000万ちょっとと、その進化は極めてリニアで持続的です。

ビジネスぜんぶをカバーする大きなお勉強をしばらくしたので、そろそろ本業に戻ってちゃんと技術の勉強をするか・・・(Tの字の横幅は広がったけど、肝心の縦棒が短すぎる)、と思い、その入口を探してこの本から入ってみました。目的通りの本で良かった。

AdobeによるMacromedia吸収合併が発表されたのは2005年4月。でも2004年にすでにエディターのメジャーはDreamweaver、FlashのActionscriptも2003年にデビューしてる。基本的な技術や勝ち組ソフトウェアは、2004年の時点ですでに決まってたんだなぁ。

もっと新しい本をぱらぱら検索してみると、AjaxとかWeb APIとか、「Web 2.0」と呼ばれるテクノロジーが取り上げられてるの。でもなんとなく、どれが主流になるかまだわからないものが多い気がする。次のサイクルはまだ始まったばかりなのかな。