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July 14, 2008

大野耐一「トヨタ生産方式」126

いまさら、と言わずに読んでみました。トヨタ生産方式に一生をささげた著者の思いの詰まった名著です。

普通だと、やっぱすごいよトヨタ、とあくまでもポジティブに読むんだけど、最近知り合いがたまたまトヨタの工場見学に行ってきた話や、そこで働いていた人が起こした事件のことも思いながら、少し複雑な気分で読みました。

気になるのは、この本で一貫して説く「無駄をはぶいて人間が何もしない時間を徹底的に排除する」というやり方。ある工程で金型を組み替えるのに、昔は1時間かかった。これが今では3分でできるようになったそうです。

工場に行ったこともないのに想像で言ってるだけなんだけど、「あそび」というものも、人間には必要じゃないのかな?体だけじゃなく、脳みそも使えば疲れる。人間が機械のように無駄なく働いているという状態が続くと、疲弊しないのかな。見学に行った人(学校関係ではない)が、”あんなに人間がラインに組み込まれて、何か不具合があるとラインが止まって工場じゅうにブザーが鳴り響くという状況では、自分だったら1日ももたない”って言ってたのが心に残ってるのです。

著者の大野氏自身、フォード社の生産方式はその後、フォード氏が言ったことを誤って解釈してしまって、 なんでもかんでも大量生産、流れ作業・・・という方向に流されてしまったと言ってますが、今のトヨタは大野氏の考えの本質をきちんと実践できてるのか、ということも問い続けないといけないのでしょうね。(p182 )

印象に残った部分。
p84 いまの工業時代は「農業マインド」と「コンピュータ・マインド」の中間に「工業マインド」があってしかるべき。コンピュータのあまりの性能に振り回されていないか?・・・といいます。
この人の理屈は、”作りすぎ、高性能すぎ、というのも、あってはならない無駄である”というものなので、性能過多や情報過多はNGなのです。この考え方は筋が通ってて、いつの時代にも一貫して通用するものだと思います。

p94-トヨタ生産方式における「経済性」の考え方を、「工数低減」と「原価低減」の関係を通じて具体的に述べるところ。「1つの目的に対してその手段なり方法は非常に多いので、考えられる改善案を数多くあげ、それらを総合的に1つ1つじっくり検討して、最善の策を選ぶべき、といいます。
十万円の機械を買って人を減らすことを考える前に、作業手順を変えて減らすことを考えるべき。それをせずに機械を買うのは十万円の無駄だ!

p97- 過剰在庫は無駄な倉庫、無駄な運搬費用、無駄なメンテ費用を生む。

p100- 外注か内製かの判断をするとき、外注するより中の作業の無駄を省いて余力を作って、中でやるほうが経済的有利だと決まっている。

p114 古い機械も大切にメンテして使い続けるのがお得に決まってる。「原価償却」というような数字にだまされてはいけない。(個人的には、その場合、金属疲労とか部品の摩耗とかにはしっかり気をつけてほしいです。)

p120 「0.1人も1人である」・・・まったくその通りです。なんか新しいシステムを入れることによって0.2人減らしました、とか言っても、ひとりひとりの仕事が少しずつ減るだけで、その分の新しい作業がなければ、無駄を作り出すだけ。
でもここで私が思うのは、一人の労働の中の無駄(あそび)は100%なくすべきものではない、ということ。徹底的な合理化には、心理学とか組織論とかも加味してほしい。

p180 「労働の価値全部に対して支払いができるようにするために、労働の価値全部を利用したいというのがわれわれの希望である。」天然資源はもともとタダで、それを採掘したり運んだりする人間の手間に対価が発生する・・・というくだりで、この発言が出てくる。天然資源も土地も、もともとタダだけど、対価は労働だけに発生するわけじゃなくて利権とかロケーションの付加価値とかで投機的に値段がつけられるところもあると思う。

モノは無駄にしないのが鉄則。リサイクルには多大な資源がかかるので、最初から廃物を出さないようにするのだ、といいます。これは強く同意。

p196 フォードが、車体に使用している繊維素材のほとんどが綿だが、本当にそれがベストなのか?単に手に入りやすいという理由で、最適ではない材料を使い続けていないか?と自問し、会社の近くで亜麻の栽培を始めるところが引用されてる。常に自問自答する姿勢が大切なのですな。

・・・この人の理論は、同種 or 異種 x 大量生産 or 少量生産、のどれにもたぶん当てはめることができるけど、災害時には在庫が少なすぎて脆弱だし、パイ自体が小さくなったときに耐えられないという点は他のどの生産システムとも同じだ。今はその「パイ自体の縮小」なので、そうなると生産技術の改善じゃなくて、新しい市場の開拓や新しい分野への進出といった、製品イノベーションが必須になってきます。

この本は100%生産技術の話だけで、製品イノベーションとはまったく無縁。クルマはこれからますます大変だろうけど、逆に楽しみでもあります。

以上。

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