« December 2007 | Main | February 2008 »

January 2008

January 27, 2008

小葉誠吾「お不動さん絹蔵捕物帖・浮草みれん」106

台北からのフライトの中で読みました。おもしろかった。
元々は笹沢左保の創造したキャラクターを、彼の没後に「小葉誠吾」なる作家が使って新しい作品を書き下ろしたものだそうです。(某有名作家の変名らしいですよ。誰なんだろう・・・ちょっと検索したくらいでは出てきません)

はー、時代ものに関しては毎回「おもしろかった」って書いてますね、私。
このお話は、「一見色白で優男、実は少年ギャング上がりのヤケに腕っ節の立つ岡っ引きが、自分の前科と関係のありそげな事件を解決していく・・・というミステリー仕立ての作品です。
どうしてこう時代物はおもしろいんだろう?独特の江戸ことば、服装から食べ物から何から、時代の空気があまりにも魅力的だからかなぁ。(時代ものっていって江戸以外のことってあるのかしら。)

学校もなにやら江戸ブームだし・・・私もしばらく、時代物から攻めてみようかしら。なにやら、はまりそうな予感・・・。

太田文夫「感動開発の伝承」105

松下電器で長年、数々の洗濯機などの開発に携わった著者の自費出版による本です。
副題は「実践MOT、ヒット商品の方程式・創造的開発風土づくり」とあります。感想をひとことで言うと、「おもしろかった!」。布量センサー、W滝洗い、滝すすぎ、おうちクリーニング etc・・・完全な飽和市場だと思われていた洗濯機で、高額・付加価値製品を発売してヒットを飛ばしてきたエピソードがたくさん。家電って身近でよくわかりますね。

でも研究者・男性にとっては、家電って意外と遠い存在・・・。明確なタスクをまったく与えられない「ぶらぶら社員」を任命されて、著者が毎日行ったのは「家の洗濯」。ここからアイデアも生まれたし、その後の開発作業でも消費者の気持ちを理解して判断することができたそうです。「消費者と同じ行動をしてみる」。学校でも、「とにかく出かけてみろ、やってみろ」と言われます。野に出ると、五感で感じられる。文字になったものの情報量は、事実の数万分の一・・・くらいじゃないかと思います。

著者のお話を、ライブできいてみたいな~と感じた本でした。

January 10, 2008

横山利香「頭金0でマンションの大家になった私の方法」104

たまたまもらった本です。
でも、タイトルにちょっとグッときました。

お金にそうとう興味があってネット株で儲けてる主婦が、全額銀行からの借り入れで、マンションの一棟オーナーになるまでの体験談を書いた本です。

ネット株の本も書いてるし、ファイナンシャル・プランナー資格も持ってるけど、確かに感覚が主婦っぽい、世間知らず的なところも見受けられます。でも、徹底的に地価や収益還元法の勉強をし、知り合いに話を聞きまくり、不動産や銀行に行きまくる・・・という地道な時間のかかる努力を経て、やがて夢を実現していきます。

欲しいマンションのイメージが、私とかなり近い。自分=きちんと家賃を払って安全便利できれいな部屋に住みたい人、が住みたいマンションが、よく借り手のつくマンションですね、やっぱり。ただ、私は転がす感覚が持てないので全額ローンってのはありえないし、一棟買いをするほどリスクを負えないです。

資産運用は、性格や時間の余裕や運用金額によって、人それぞれ。
私が資産を増やしたり運用する対象として、不動産ってのは前から興味がありました。
株や為替や貴金属より、自分で選んだり建てたり維持したりできる分、予測できる部分が大きいと思うからかな。手元に土地や建物っていう、目に見えるものがあるし、借り手がつかなければリフォームしたり、自力で改善できるからね。株を買っても、「もの言う株主」になろうとは、日本ではあまり思えないし。


それにしても全額ローンで一棟買いってすごい度胸だよなぁ。私は、今のマンションの借金を返し終わったら、また居住用のマンションをローンで買おうと思ってるていどですから、ちいさいですね。

しかし、私はこの忙しいときに、何を毎日本ばかり読んでるんだ・・・。

January 08, 2008

桐野夏生「ジオラマ」103

例によって、人間が誰でも持っている暗い、いやらしい部分だけをいろいろとピックアップして、いろんな風に展開した、短編集です。読まなきゃよかった、と思いそうになったけど、それほどでもないのは、バラエティな暗さが細切れで楽しませてくれるからでしょう。この人の長編は、読み終わると登場人物の重荷を引き受けてしまって、立ち上がれなくなります。

桐野夏生ってさ・・・ひとのカサブタをはがしてそこを突く、みたいな人だよね・・・。
どの人にも美しいところもあるんだけど、そこは見ない。「蛇にピアス」の・・・金原ひとみか。あれを読んだときもそんな風に思った。

赤い髪の常軌を逸した女、階下の部屋に住む女におぼれていく、倒産した元銀行員。
「どうして千恵に夢中なのかなと思って」と男。
「あなたが骨の髄まで銀行員だからよ」と女。
、、、このフレーズが、頭にみょうに残ってるんだなぁ。

陰と陽のバランスなのかな。誰の心にも明るいところと暗いところがあって、みるみるうちに落ちていく人と、落ち始めても踏みとどまろうとする人がいる。明るいところを歩き続けられる人ほど、自分の暗さや弱さを知って見切ってるのかもなぁ。私は、踏みとどまろうとしてオタオタする凡人だな。電車で人の流れをうまくかわせずに入口にへばりついてるオバサンみたいなものかも。

うーむ。なんで読んじゃったんだろう・・・。
以上。

January 03, 2008

藤田宜永「奇妙な果実殺人事件」102

いろいろやることがあるのに、つい読んでしまった。
この本は密室トリックのある「本格推理小説」だけど、この人は探偵小説などいろいろなジャンルのものを書く作家で、直木賞も受賞しています。むしろミステリーは珍しいらしい。

内容はタイトル通り、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」のような死体が発見されて、犯人はこの中にいる!・・・から始まるミステリーです。p14「ショートヘアの前の部分だけがカールされた髪」「浅野温子ばりの美人」・・・ここだけ読んでも、これが書かれた時期がわかりますね?そう、バブルのど真ん中の1990年に刊行されています。(文庫は2006年)

人情ものの小説をいくつか読んだ後なので、次々とたいした理由もなく人が殺されるし、平気で家族が家族を疑ったりして、どうも人の命を軽視していると感じてしまったりして・・・。いや、たとえばミステリーでも動機から攻めるタイプだと、人物描写が鋭いんだけど、この人は殺人というのはアイテムのひとつであって、パズル解きを楽しませようとするタイプなんでしょうね。そういうミステリーでは、あまりにも安易に人が殺されてしまうことが多い。

しかし・・・最初のミステリーと言われている「モルグ街の殺人」が1841年ですか。それから170年近くの間に、密室トリックってのは相当の作家が書き続けているわけですが、まだこれから新しいアイデアを思いつくことができるのかな。動物や植物を使う、鍵穴や換気口を使う、バネやテコやゼンマイを利用する、時間や空間の錯覚を利用する、催眠術を使う、実は抜け穴がある、実は語り手か刑事か子供か登場人物全員が犯人、およびそれらのバリエーション、を使わないとしても?

だいいち密室ってのは、この本の中でも語られてるけど、儀式的なものであって、殺人事件に必要なことではぜんぜんないんだよね。だから現実の殺人事件では普通、死体は密室に閉じ込められずにどこかに遺棄される。

一方、心理ミステリーには底がないから、力のある人なら読み応えのあるものがまだまだ書ける。
でも私はトリックが大好きなんですよ・・・。しかも殺人はあんまり好きじゃないんですよ・・・。
誰か、殺人は起こらないけど背中がゾクゾクするような、すんごい本格推理小説を、私のために書いてください!!