エドガー・H・シャイン「DECの興亡」82
副題は「IT先端企業の栄光と挫折」。
最初に書いておくと、出版社は「亀田ブックセンター」というところで、Amazonでは2007年9月9日現在この翻訳書は扱ってません。(原書は買える。)
でも、元DEC社員、DECラブな人たち、DECの成功または崩壊に興味のある人は、今あえて全員これを読んでほしい!本です。なぜなら、「インテルの戦略」を思わせる綿密かつ社内事情に通じた事実調査、徹底的な事後的分析などで、時間がたたなければ見えてこないことや語れないことが、今やっと表に出てきた、感があるからです。
感想をいろいろメモしながら読んでたんだけど、大事なことは第14章「明示的教訓と暗示的教訓」に15の教訓という形で全部書いてあるので、ここでその項目だけあげるにとどめておきます。:
教訓1.会社を外見で判断しない。(会社は外見で判断できない、と訳すべきかも)
教訓2.革新の文化はスケールアップしない。
教訓3.革新の文化が組織が小規模の場合にのみ有効であるとするならば、組織が革新性を維持するには、みずからを小さく分割するかあるいは企業戦略における革新の優先度を下げなければならない。
教訓4.非常に長期間にわたって成功と成長をもたらした文化は、仮に機能不全の要素を包含していても、安定化し固定化する。文化の変革は、文化の担い手である主要人物の交代を意味する。
教訓5.文化は時として組織より強力である。
教訓6.成功をもたらす技術ビジョンはやがてそれ自体が競争を引き起こし、したがって技術と市場の状況も変化してしまう。
教訓7.技術ビジョンに基づく大成功によって、事業上の問題や非効率性は覆い隠されてしまい、経済的危機が生じるかあるいは、ビジネス遺伝子が投入されるまで表面化しない。
教訓8.成長中の企業がビジネス遺伝子を欠く場合、取締役会はそうした遺伝子を導入するための行動を起こさなければならない。
教訓9.あらゆることをやろうとすれば、結局どれもうまくやることはできない。
教訓10.市場の動きは、最高の技術ないし自明の論理に沿って動くとは限らない。
教訓11.ある時期に適した技術ビジョンは、さらなる技術進化への感受性を奪いかねない。
教訓12.「顧客に耳を傾けろ」という理念は、どの顧客に耳を傾けるかに大きく左右される。
教訓13.成熟化に伴い、組織は適用する統治制度の形態を進化させねばならない。
教訓14.事象と動因は同時に作用する。
教訓15.知識労働者は効率的な決断を相互協力して下すことができない。
いっぱいありますね。しかもこれだけではよく意味がわからないものも多い。だから言ったじゃないですか、買って読んでくれって(笑)
以上。
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