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August 2007

August 28, 2007

山本文緒「シュガーレス・ラヴ」81

自分の父がこんな本まで読んでることが、なにより驚きだが。

なんというか、ちょっと高級なファッション雑誌に載せる短編みたいな、口ざわりのいいストーリー集。
そもそも比較対象ではないと思うけど、寂聴さんと同時並行で読むと、スカっとかすってしまって手ごたえがない。
しかし妙齢の女性作家っつのは、不倫だとか自由恋愛を書かなければならないという決まりでもあるのか。世の中には素敵な異性が軽く見積もっても五万人くらいはいるけど、いちいち本当に付き合ってる人ってどれくらいいるんだろう。・・・おっと、あんまり余計なことを書くと「意外と子供っぽい(昔占いでそういうのが出て、気にしてるらしい)」のがばれてしまう。

うーん。やっぱりもっと歯ごたえのあるものが読みたい。というのが感想です。
以上。

August 27, 2007

ISSコンサルティング編「外資系トップの仕事力」80

探したらメモが見つかったので、さっさとアップしよう:

面白かった。
この本は戦略分析うんぬんの本ではありません。外資系企業を主クライアントとする人材コンサルティングファームが、日本の外資系企業の社長12人のインタビューを本にまとめたものです。12人の社長の講演会に参加しているようなもので、ある意味バラバラなもののコレクションに過ぎないのですが、単純に面白く読めます。

彼らのキャリアには共通点も多く、典型例としては日本企業からキャリアをスタートし、企業派遣でMBAを取得し、帰ってきてから何度かコンサルティングファームなどの外資系企業の転職を経て、役員レベルで今の会社に入る・・・というパターン。

と書くと普通なんだけど、なぜ面白いかというと、たぶん生い立ちから学校、以前の会社などについても現在の仕事と同じくらい詳しく書いてあって、人間が見えてくるからじゃないかなぁ。共通点がいろいろと見えてくるから不思議です。

以下は例によってそれぞれの感想とメモ:

日本コカコーラ会長 魚谷雅彦
コカコーラって日本最大の外資系企業なんだって。他社に抜かれることがあっても、各種トップ10の常連。魚谷氏は入社早々「ジョージア」で飯島直子を起用してブームを引き起こした人だそうで。
P19、CMの試写会で電気を消して画面を見ようとするので、つけさせた。「真っ暗にしたら、当然きれに見えるんです。でも、普通の家庭で見ている感じでやらないと評価なんかできない。」
p20「キャリアについて、事前にしっかりと計画を立てる人がいるようです。でも、僕は決してそうじゃなかった。実際、行き当たりばったりです(笑)。」でも、「日々の仕事だって何度も壁に当たってきた。・・・でもあきらめない。頭がパンパンになるくらい、いつも考えていた。」
p21「そもそも外資系なんて言葉があるのは、日本だけなんですよ。」

マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング社長 柴田励司
学生時代は自分で劇団をやって評価も得て、映画関係の会社に就職も決まっていたけど、3月31日に内定取り消しにあってホテルに就職・・・というキャリアの持ち主です。
P39~学生は日本の会社なんてつまらないという「予習文化の弊害」。四の五の言わずに仕事するというのも薄れてる。
P41 早く選抜される人は第一志望に入社していない。修羅場を経験している。異文化経験。


日本オラクル社長 新宅正明

ヤンセン ファーマ社長 関口康
P72 上司が悪くて出世できなかった・・・で終わったら悲惨。
P79 建築をやっていたから「これが立体的な三次元系で出てくる」
P88の写真はもしや、あの人形?

マッキンゼー・アンド・カンパニー ディレクター 平野正雄
マッキンゼーは徹底的に人を成功させ、育てる。
P92-93 「インプットの最大化」。

エアバス・ジャパン社長 グレン・S・フクシマ
雑多すぎてまねできないかも。そもそも、エアバス、どうよ。

LVグループ社長 藤井清孝
マッキンゼーから自費留学。全銀行の頭取とサシで会った。すげー
P145 外からやいのやいの言うだけでなく、自分でやりたくなってきた。
SAPで社長を3年。
P150 新しいビジネスではどこがメッカかと考えた。(フクシマ氏の「独占を嫌う」と逆。)
P152 「与えられた運命の中でベストを尽くす。逆説的だけど、選ばない。」

日本GE会長 藤森義明
P168 ウェルチの顔を睨み返した。
P173 自信はチャレンジから生まれるから、勇気をもて。

BNPパリバ 在日代表 安田雄典
P193 外資でスワップやデリバティブをやってるのは邦銀にいた日本人。ではなぜ邦銀ではできなかったのか?カルチャーとマネジメントが違うからできる。
P183 リーダーとは無私と夢である。
P194 日本人が尊敬されるのは日本人らしいときだ。
P195 ここ数年明らかに、保守本流の人が外資にきている。そうそう。
P196- 友人の40歳過ぎのフリーターの話が載ってる。

日本エマソン社長 山中信義
P201 自分自身のSWOTを常に2枚持ってる。
P209 ほんの一部の天才を除けば、能力の差は知れてる。要は全力を出せるかどうか。
P213 エマソン役員は平均27-28年は務めていた。
P218 今のグローバルスタンダードはアングロサクソンがリードしている。理由はオプティミズムとリアリスト、寛容性。
・・・「テクノヘゲモニー」的には、時代は技術に応じて移り変わるのかもしれないけど、世界はだんだん狭く小さくなるから、標準化、汎用性、互換性、ということを考えられる人が強くなるのは当然だ。つまりニッチ(これはこれで発展する)ではなくコモディティに近いほうの大量に売れるべきものの話。

BPジャパン社長 脇若英治
P241 日本のトップを目指してもだめ。グローバルトップを目指せ。若い人はとにかく勉強しろ。

P&Gジャパン社長 ラヴィ・チャタベディ
日本は消費者がすぐれた目をもってる。日本企業はイノベーションがうまい。

岡田雄次「日本で成功するグローバル企業」79

社団法人企業研究会の会報「ビジネスリサーチ」に掲載した企業トップインタビューを集めたものだそうです。
掲載企業は日本サムスン、シーメンス、日本GE、ハイポ・リアル・エステート・キャピタル・ジャパン、アストラゼネカ、デュポン、日本ストライカー、アフラック、日産自動車、マンパワー、ジャパンゴアテックス、クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン。

前に読んだ「外資系トップの仕事力」では(しまった!日記に書かないうちに読書メモ捨ててしまった)、それぞれの仕事人生について語られていて、人となりが見えてくるような内容だったけど、こっちは会報に掲載したものという特徴もあって、企業紹介の部分も多いです。その人というより、各社についてのイメージが広がるような本。とくに日本に進出した頃のことや、大きな変化の時期に会社が目指していたこと、などに焦点があてられています。

個人的にいちばん興味深かったのは、デュポンの合弁ポリシーかしら。外資系企業の日本進出というと、最近では100%子会社がメインのようですが、昔は合弁がかなり積極的に行われてました。その土地で商売をやりやすくするために、製品さえ受け入れられるいいものを作れば、必ずしも子会社を作って地元に根付く必要はないのかもしれない。日本グラクソも最初は合弁だったんだよなぁ。じき100%になったけど、合弁が100%になっていく流れってのは、本社の意向を通りやすくするためだろうから、地元に根付かせようっていうのとは逆の流れだよなぁ。

それにしても、もう1冊の方、メモなんとかしなきゃ、、。

August 25, 2007

小池真理子「恋」78

わたしの父はわたしの何倍も読書家なので、田舎に帰る度に、本の山の中から何冊か抜いて、田舎の退屈な夜に読んだり、帰りの電車や飛行機の中で読みふけったりする。

今回はダンボール3個分も文庫本がたまってた。女性の作家を中心に何冊か持ってきた中で、なんとなく読み始めたのがこれ。夕ご飯を外で食べて帰ってきてから、寝るまでの3時間で読んでしまった。読みながら、こりゃまずいのを選んだと思って、ホテルのバーでいっぱいひっかけよう、と出かけてみたんだけど、ざわざわした賑やかさを求めて行ったのに客がいなかったので、すぐ帰ってきてまた続きを読んだ。

どう「まずい」かというと、主人公の殺人犯の女性の心のなかの虚無が、本から自分にしみだしてくるような感じがするのだ。

孤独な女子大生が、享楽的で美しい助教授夫妻のペットのような存在になり、初めて満ち足りた気分を味わう。その関係を壊す若い男が現れ、彼女はさまざまな葛藤を経てその男を射殺する。長い獄中生活の後に出所した彼女をルポライターが追い、死期を悟った彼女がやっと語った状況を、後にルポライターが語る・・・というあらすじです。こんな筋をここで書いても、この本のすごさは読まなければわからない。女性ならではの精緻な筆致、心理描写、ってのが重くずんずんと胸に迫ってきます。

読みながらずっと「おそろしい、自分がこの人じゃなくてよかった」って思ってた。つまり作家の勝ちです。そこまで実在の人間として迫ってくる。で、救いのない物語だけど、最後にはささやかな救いのようなものも、かすかに与えられる。同じ女性でも桐野夏生ならぜったい死体をさらすような冷たさで終わるけど、この人には人間のおろかさに対する理解のようなものが感じられる。

それでもなお、たまにはこういうのも読まねばと思う。

今日のところは、以上。

August 21, 2007

瀬戸内寂聴「ひとりでも生きられる」77

このタイトルの本を中年の独身女が日曜日に一人で読んでるってのは、傍目にはかなりイタイが、まぁそんなもんだろう。(達観)

寂聴さんの「晴美」時代の煩悩燃え盛る本を読んでみたいと思って、軽く読めそうなのを買ったわけなんだけど、この人の愛と本能のままの人生は、ほんとにすごいですね。読めば読むほど、「ひとりで生きる」ことがとても寂しく見えてきます。本人は元気あふれてポジティブで、自分を肯定することを仕事のようにこなしつつ、次々に男を栄養にしては明るく捨てていってしまうんだけど。

愛する男が妻の待つ家に帰っていくのが平気な女なんて、いるわけないよ~。精神のどこかにフタをしてるんだと思う。それとも、それほど本当に好きではないのか。

愛する、と恋する、と需める(もとめる)を違う言葉で言い分けている意味は、なんとなくわかるけど、きっちりその間の線を引くのはやっぱり難しいはず。

自分と似ている、あるいは同じ部分もあるけど、相容れないところも多い。ただわかるのは、子を殺して食う悪魔が祀られると鬼子母神になるし、煩悩のかぎりをつくした女が出家すると菩薩になるのだ。欲望を我慢していては、たぶん次の段階には上れないんだと思う。覆い隠して欲望なんてありませんって顔をしても、見る人が見ればわかる。

一番の違いはたぶん、私はいまだに暖かい家庭というものにあこがれ続けてるってところかな。晴美は若いころから、永遠の愛なんてないし永遠に平和な家庭があるとしたら鈍感なだけだ、と言い切る。暖かい家庭というのは、たとえば、雪の日にカーテンの開いた窓の中に、クリスマスツリーと着飾った子供たちとサンタの格好をしたパパとエプロン姿で七面鳥を焼いているママがジングルベルを歌っている、というようなイメージだ。こう書くだけで、実在しない感ありありなんだけど、あこがれるんだよなぁ。中年男のすべてが、おろしたてのセーラー服に白い靴下、長い髪をきちんとまとめた永遠の少女にあこがれつづける、っていうのと同じようなもので。(そうなのか?)

大名作「かの子繚乱」も買ってきました。序章だけ読んだけど、これもものすごい人ですね。人間ってすごいなぁ、おもしろいなぁ。仕事や人生に倦んできたら、古典的名作を読むといい。おおむかしから人は大胆不敵でおろかで美しい、ということが実感できる。むしろ今の人のほうが臆病で小粒かも。晴美・寂聴がとりあげるような女って、いまはエリザベス・テーラーか松田聖子くらいしか思いつかないもんな・・・。

私もずいぶん保守的で型の中だけで生きる女になった気がする(自分の中で相対的に)。このままじゃ終わらない気はしてるけどね・・・。

August 19, 2007

水野貴明「詳解RSS」76

仕事でやってるサイトでRSSを受け入れて表示する側のページの開発にかかわってるんだけど、ほうっといたら出来上がるという雰囲気じゃない。
やばいのでちょっとは自分でも勉強しなきゃ・・・と思ってた矢先に、たまたま学校で放出されてたので、もらってきた。税抜き2800円ですから。ホクホク。

本が出たのは2005年。でもRSS0.91、1.0、2.0全部カバーしてるし、新しい仕組みと言われているけど2003年くらいから基本的なところは何も変わってないみたいなので、私はこれで十分です。

RSSとはなにか。
RSSの歴史。
XMLの仕組み。
各バージョンの詳細。
生成と解析のしかた。
受信プログラムのポイント。
配信の応用テクニック。
ATOM等のほかの形式。
・・・など、これだけは知りたいってところを押さえてます。AmazonでRSSを検索してもトップに来る。(売上げ順)評価も平均5点!

あまりに読みやすいのだけど、内容が薄っぺらいわけではなくて、ポイントだけをよくまとめてあります。
こりゃいい本をもらったわ。

以上。

August 10, 2007

竹中誉「日本IBM ICBMからの見事な軌跡」75

しまった~まだ感想書いてなかった。

帯に「18年間、椎名のもとでその手腕を直接体験し、北城へのバトンタッチを見届けた著者が語る、内側から見たIBMの成功の記録」と書いてあります。そういう本です。著者は退職後はIBMのスピンオフ、株式会社エル・ビー・エス(p18にそこでやっているアンケート調査結果のことが書いてある)を立ち上げ、現在会長です。特に日本に進出してくる外資系企業のサポートを主にやっているPR会社らしい。この本は1999年12月に発売されたので、ちょっと時間がたったかな、という気がします。

ちなみにタイトルの「ICBM」は、1950年代にIBMの工場建設をICBM(大陸間弾道弾)工場と間違えて、反対運動が起こった・・・というエピソードからきています。

以下例によってメモ。

まえがき。「外資への風当たりが弱まったようだが、今もまだある。」IBMの歴史を語るときに必ずでてくる話。外資というだけでイジワルされた、入れてもらえなかった、といった話です。(製薬会社も同じだ)DEC、TI、ユニシスなど、昔から日本にいる外資系企業の人に、昔と今で変わったかきいてみたいです。

p20 よそ者を容易に入れない日本人の意識。→これは結局ムラ意識なのかな。「強いものいじめならいくらやってもいい」みたいな。でも、これを国家レベルでガンガンやってる国もあって、そっちのほうが一般の人はハッピーなのかもしれない。

p22 外資の日本への参入障壁。90年代まではこれについて語ったものが多いですね。人材確保は今もむずかしいんだろうか?外資を目の仇にするのは日本の大企業では?IBMに育ててもらって感謝してる、っていうベンチャーの話をいくつも聞いたことがあります。立ち上げたばかりのベンチャーにIBMがいい仕事をくれて、おかげで資金も得られるしスキルも上がって、いまや中堅、という。

外資の特徴は、実利を取るというところ。女性、コネなし、その他ハンディキャップのある人は差別が少ないから外資に求職していったけど、外資側には実を取るというメリットがあったと思う。

p24 経団連の部会 93年から95年。つい最近誰かが、「経団連である程度の地位を占めることが一流企業の条件みたいにいわれてきたけど、時代遅れだ」みたいなことを何かに書いてたな。実際どうなんでしょう。遠すぎてわからないや、、、

p26 ランドセルの色は男の子が黒、女の子が赤。そういう固定概念が日本には根付いているという話。長年そうだったけど、ここにきて急激に変わってきてますね。茶色、青、黄色、緑、ピンクなんて何種類もある。女の子に一番人気はもはや赤じゃなくてピンクらしい。

p27 日本人は「日本人とは」を考えるのが好き。ハハハ、まったくだ。駅前でバラバラに自己主張を続ける選挙候補者とストリート・ミュージシャンが目に浮かびます。自意識が強いのか、自信がないのか。

p64 1980年代に統計を取ったところ、在日の外資の実態は日本人が思ってるのと違う、という結果が出たらしい。たとえば会社都合の解雇は日本企業のほうが多いとか。・・・でも、人が期待してるのと違う結果なので、あまり大きく取り上げられなかったらしい。

p65 「日本アイ・ビー・エム社長の3つの特色」
1.社長は日本人。
2.社長の長期安定。
3.優れた後継者の人選。
IBMは徹底的な現地主義だと、椎名さんも書いてた。そう考えると、Asia pacificから独立してUS直轄になったのは、あんまりうれしい動きではないのかな。ちなみに某USのIT系企業の日本法人もある日US直轄になって、本社から社長がやってきたけど、それではうまくいかないと気づいたか?次の社長は今度は日本人らしい。

p69 揺籃期:稲垣、成長期:椎名、とフェーズで適任者が違うと分析している。Exactly!私のいう「イノベーター社長とMBA社長が適切な時期に交代するのがベスト」というのはそういうことです。

p75 椎名さんが考えた3つの重点施策。
第一重点施策・・・世界のIBMの優れた技術を日本へ。
第二重点施策・・・日本IBMを営業部隊でなく研究開発・製造を含む総合拠点に育て上げる。
第三重点施策・・・日本の各界の企業と協力して、製造・サービス等を強化する。
・・・やっぱそうですよね・・・。

p81ノーベル科学賞を受賞した江崎玲於奈博士が、椎名さんをこう語ってる。 「椎名さんの功績は営業だけから研究・開発・製造・販売を包含する総合的な会社にしたこと。研究開発から製造まで持っているかどうかは、日本の顧客へのサービスという観点から天地の違いがある」。なるほど、すごいですねぇ。そうですよねぇ。

p124 日本IBMが日本に受け入れられるための委員会、1970年代はじめ。「ビジターからメンバーへ」と表現している。ここでも具体例として1972年の経団連の加入があげられている。

6章 産業スパイ事件。FBIのおとり捜査で、日本企業の社員がIBMの機密情報を盗んだとして訴えられた事件。
200人のアメリカ人が来日、コンレイデス氏と椎名でふんばって、最悪の事態を避け、イメージが地に落ちることなくのりきったのだそうです。

最近DECという会社が気になってます。2つのExcellent Companyのひとつが危機を乗り越え、ひとつが乗り越えられなかったのはなぜだろう?・・・DECの本も届いたらしいので、読み込んでみたいです。