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December 2006

December 20, 2006

司馬正次「ブレイクスルー・マネジメント」47

MITで日本式経営学を教えている、偉い先生が書いた本です。この人の講演を学校で聴いたんだけど、先に本を読んでおけばよかったーー!

タイトルを見ると、ビジネス書を読みつけている人は、「なにかビジネスの改革をするためにきっとこの人はブレイクスルーというキーワードを使って自説をぶつのだな」と考えるのでしょうが、その通りです。 ブレイクスルー(BTと省略)という用語自体は、わりと一般的な意味で使われている印象で、違和感はありません。(イノベーションという言葉と置き換えられる部分もけっこうあると思います。)

でも、そういう論文っぽい部分は前半だけで、後半はBTを生み出すための方法論について、楽しい提案が続きます。さすがアメリカで受け入れられている日本人、エンターテイメント性があります。方法論とはたとえば、「ビジュアルイメージにより兆候をとらえる」、「言語化および抽象化の方法」、と表現されています。前者はたとえば、一見して「あれ?」と違和感を覚えるとき、その違和感をつきつめて分析すると問題点が浮かび上がってくるとか、会社として目指す目標を絵にしてシンボルとして共有すると浸透する、といったビジュアルな現状認識の方法について書かれています。後者ではアイデアを出すときのグルーピングや抽象化の手法について書かれています。理論の本なんだけど、実例も多いし、ハウトゥのような部分もかなりの割合を占めています。

全体的な感想としては、実例に入ったあたりからは単純に面白かった。10へぇくらいです。(古い)理論の部分は、すでにいろんな先生方の理論を読みつつある耳年増なので、4へぇくらいかな。

以下、恒例のメモ:
第2章「アンラーニング(成功体験からの脱却)」が必須という。他の本にも似たようなことを書いてあるけど、かなり強調してます。
第3章 (p96) 会社トップがBTに理解を示さない限り成功しないという。さらに、トップがBTに理解のない会社の場合、「やめろ」とすっぱり。「そうはいっても小さなところから改革していけば・・・」などと私は長いこと考えてきましたが、司馬先生の言うことの方が正しいと今は思う。大きな意見の相違があって、自分が正しいと思うことを我慢しなければならない状況が長く続くと、あきらめがちになってしまって良くない。もっといろんな考え方の会社がたくさんあって、diversityが実現できるようになると、もう少し全体的に暮らしやすくなるかもしれないんだけどね。(cf p161でも、経営陣を変えない限り企業は変えられないと書いてある)

第4章でとりあげているSOLとFAVIという2つの会社の事例は極端で面白いです。SOLではトップの下は全部20人くらいの小さなグループで、それぞれが自治を行っている。成績やプランなど、情報はほとんどすべてシェアして、目標も自分たちに立てさせる。フェアな競争をさせることで、全体のレベルがあがるという実例らしい。小さい会社の集まりのようなんだけど、全体としてそこそこの大きさの企業体を保つことのメリットも、インフラのシェアとか外向けの見せ方などの面でプラスになっている、という。おもしろいけど、これ農耕民族の日本でもうまくいくかなぁ。地味なトップ、「継続すること」が企業の目標だ、という考え方は、「ビジョナリーカンパニー」って本に似てるな。
第5章 P161 東南アジアに進出したある日本の工場長が、規範となるためにゴミを拾ってたら現地女子社員が「ここにも落ちてるわよ」。そういうことではモラルはあがらないと言いたいのだろうけど、ホンダアメリカのもと社長が言ってたのとちょうど逆だ。土地柄なのか、それとも「そういう局所的なことだけやってもだめだ」ということなのか。

第6章の「ビジュアル・イメージ」はおもしろい。でも、ことさら教えてもらわなくても、みんな経験からそういうのを身につけてるのでは。

第7-8章では、BTをサポートするUS社会の仕組みとか、学校の仕組み(ちょっとMITの宣伝っぽい)とかが書かれてます。米国ベンチャーの仕組みは面白いからコピーしておこう。米国では社外メンタリングが発達してるらしい。日本ではMOTがそれなんじゃないかしら。「仕組み」は人や社会や文化に合わせて変えた方が根付くからね。

以上。

December 14, 2006

マイケル・デル「デルの革命」46

デルコンピュータ会長マイケル・デルによるビジネス書。生い立ちについても書かれてるけど、子供のころ初めてやった商売のことなど、徹底してビジネスで成功するためのことに集中して書かれています。とてもわかりやすく、ポイントが絞られていて、デルらしい良書です。出版は1999年とちょっと古いけど、あらゆる業界に適用できる普遍的な内容だし、まだ読んでない人にはぜひ、お薦めです。文庫にもなってるみたいですよ。

会社の成功にいちばん大切なものは、社員全員が本気で熱くなっていること、なのかな。サプライチェーンだとかダイレクトモデルとかがデルの強みなのは事実だけど、それは長い歴史の中の出来事でしかなくて、今後何が起こっても新しいことに喜んでチャレンジできることが、最大のポイントなんだ、ということが、繰り返し書かれています。そういう点で、第三者がデルについて書いたケースとは読み応えがまったく違う。

以下、自分用のメモ。今回たくさんあるので、注意・・・:

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P60 いちばんの不安は「手を広げすぎていないか」。やっぱ不安だったろうなぁ。

P62「オリンピック計画」という壮大な最先端コンピューティングプロジェクトを立ち上げたが、そんなもの顧客は誰もほしがっていなかった。やってみて失敗をかみしめるのが、一番勉強になるのだ。しかし、会社が大きく太ってくると、ベンチャーならつぶれてしまうくらいの失敗をしても、何の反省もしないまま存続してしまうんだよな・・・。

P77~ ノートパソコンへの進出について。ソニーのリチウムイオンバッテリーをいち早く取り入れたことが成功として書かれている・・・こういうことを「今見ると痛々しい」とか「これはデルのせいじゃなくてソニーのせいだ」とか言うより、このときは失敗してしまったけど、いつかは誰でも失敗するんだから、正しく対処して次につなげられればいいんだ、という気分に、この本を読んでると、なれる。

P106 二人の上司が責任を持って部下をサポートするマトリックス組織なのだそうだ。これはその後も成功してるのかな。

p108~ デルでは製品ラインをセグメンテーションしてることが成功につながっている・・・という仮説?について、先週土曜の授業で議論になった。Optiplexは企業向けにネットワークを重視。Dimensionは高機能の小企業・個人向けPC。ノートも企業向けLatitudeと個人向けInspironを用意。・・・これがぴんと来ないんだよな。個人でLatitudeの方がほしい人もいるだろうし。ただ、私が気になってるのは、企業側が考えるセグメンテーションは実際の顧客とズレることがあるということだけで、さまざまな具体的な需要に応じて製品ラインを充実したり、サービスのオプションをたくさん用意したりすることはとてもいいやり方だと思う。たぶんそれで成功してるんじゃないかね。

第12章、13章ではパートナー(サプライヤ)との関係について詳しく書かれてます。
つい最近「靴下屋」についてテッテー的に調べてきたところなので、重なる部分がとてもあります。
デルも靴下屋も、オンラインで在庫情報をシェアして、毎日部品を納入してもらう。発注というより、サプライヤ側で、なくなりそうになったら持ってきて在庫棚に積んでおく。

それと、品質管理については極めて厳しく、かつ自社の1部門のように親密に、パートナー会社を大切にする。自社の一部門でないことのメリットは、各社が自社の一番強いところだけに資源を集中できること。デルは最高のグラフィックボードのメーカーになろうとする必要はないし、靴下屋はある種の靴下の織り方や仕上げについてのプロになる必要はない。

また、そうすることによって、1部品メーカーが実力をつけると同時に納入量を確保し、結局は彼らにとっても厳しい競争を勝ち抜く優位性となるわけです。

これと対比してトヨタ方式による下請けの圧迫って話も出てくるのですが(強い業者が弱いものを買い叩く)、適正価格を維持するかどうか、利益をどう配分するかは、会社(社長)の考え方次第。会社の業務がうまく回っているかと、いい会社といえるかどうかは、また別のところにあると思う・・・。日本企業は一般的に、日本って国全体の企業力とか国民の生活とかを高めようという気持ちが、ちょっと薄いと思う。

P119 「Velocity(速度効率による利点)」を大切にし、「Excess(過剰)」と「Obsolete(時代遅れ)」をタブーとする。・・・PC部品に関しては、真っ当というか当たり前というか。


P154 成功のために、大切なことは「簡単に言ってしまえば・・・社員とのパートナーシップを築くことである。」ダイレクトモデルに関する信念、自分が偉大なことの一端を担っているという気持ちを分かち合うこと。

P171 ↑そういう気持ちを持たせる上で、外からの働きかけはほとんど無意味で、社員の中ではぐくまれるものだ。と書いてあります。それもその通りだな。スタバでは店員が全員お客さんの目を見て話すことを徹底していて、自分がスタバの一員だということに誇りを持つようにしてる、そのためには(USでは)パート社員にも健康保険証を持たせてるし、待遇を厚くしてる、らしい。Cf. p186「デルはチームとして働く起業家の集団なのだ」

P176 NC=Network Computerという名のThin clientというかダム端末が流行ったらしい。この流行は繰り返してるけどまったく実を結んだことがない。Pen computingとかPDAもそうだとデルは言ってるけど、確かに根付かないなぁ。

(途中、ばらばらに読んだのでメモなし。)

P285 社員から見て「Big thing(ITの未来とか会社の戦略とか)」と思えることでなく、「Little thing(ケーブルが見つけにくいとか)」と思われるようなカスタマーフィードバックこそが重要。普段からみんなが不便だと思っていることが解消されるうれしさが、ロイヤリティにつながるんだろうな。うーん、うちぁそれができていない会社の典型かな・・・

P289 「ライバルのことばかり考えないで、顧客について考えろ」モスバーガーの人もそういうこと言ってたな。競争相手が何をやってるなんて、全然考えません。って。基本的にいいことだと思う。たぶん競合のことは社内の一部だけが一応意識してればいいんだろう。

P294 5つのポイント。これ重要そうだ。
・変化を期待する(世の中は変わるものだ。まっ先に変化に対応するビジネスチャンスだと思って喜んで対応すればいい。)
・インターネットを活用する(cf. p137 「インターネットの本当の可能性は、情報の流れを加速し、あらゆる種類の取引に影響を及ぼす能力にある」1999年のこの言葉は、今でも生きてるのかな。正直わからないので、後で見直すために書き残しておきます。)
・優先順位を見直す(価格だけじゃない、と書いてある)
・成長をコントロールする(即断と計画が大切。ムーアの「法則」ならぬ「目標」をたててそれに合うようがんばって開発する・・・みたいな話かな)
・事業の「仮想統合」をめざす(これはサプライヤとの関係のこと。)

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少なくともこの本を読むかぎり、いい会社だ。うちの会社も、little thingへの対応をもっと大切にするような会社にならないものか・・・。
あ、司馬先生がこないだ「会社に大きな問題があるときは、自分で改善しようなどと思わずに辞めてしまえ」って言ってたな。正しいとも思う。しかしこの業界に理想的な転職先などあるんだろうか・・・。


December 03, 2006

大前研一「旅の極意、人生の極意」45

旅行中は旅行記を読む・・・ってのを、またやってみた。この本は国内便の往復の機内で軽く読みきれます。

大前研一といえば、みんな知ってる、もとマッキンゼー日本支社長で、いまはビジネス・ブレイクスルー大学なんてのもやってる人です。その人が書いた、極私的旅行指南書。

ふむ、史上初の19歳で通訳ガイド検定に合格した人、であり、その後学生時代にJTBのトップ通訳ガイドとして2000人を案内した、のですか。ただものじゃないですね。で、人生を楽しむ旅をしまくり、えりすぐりの15か所をまとめたのがこの本。

経営者とかビジネスコンサルティング的なにおいは、あんまりない本です。じゃあ勧められるままにフランスのアンティーブの超高級ホテルに泊まれば、自分として最高の旅ができるかというと、旅ってのが個人的なことであるからには、行ってみないとわからない。パリならパリを「旅慣れたわたしならこう楽しむ!」って本じゃなくて、勧められなければ一生行かない町のことなので、比較するのがむずかしい。いくら大前さんが勧めても、じゃあ休んでこの通りに行ってみよう、と思える金持ちは、そう大勢はいないだろうな・・・。

結局のところ私にとっては、大前さんってすごいんだなぁ、と改めて思った本でありました。この通り回ろうというより、自分の15か所を20年後に本にできるような旅をしたいな、と思います。

December 02, 2006

「APAホテル社長元谷芙美子の幸せ開運術!」44

読んだ理由:泊ったホテルの部屋にあったから。
Q:アパホテル泊ったんかい!?
A:ええ、昨夜。天王寺駅前。通天閣が見えます。

諸般の事情により、3人でまた「勝手に合宿」してきました。へとへとだぁ~~
ホテルをとることになって、天王寺あたりで捜したら、たまたまアパホテルもヒットした。かなりコッテリしてるけど、女性経営者ってことでネタにもなると思って、独断でここを手配。一見普通のビジネスホテル、フロントは女性が多くてみんなキレイ。部屋に入ると・・・・うぁ狭っ!ベッドに机が隣接してます。でもポットと冷蔵庫もあるし(空だけどホテル内自販機はふつーの値段)、テレビはAquosだ!全室高速有線LAN、その他一般的な設備は完備。なにより今年の8月にオープンしたての新築でキレイ。隣の物音も上の階の震動もまったくなし。悪くないチョイスかも。

で、館内設備の説明やステーショナリのところに、当然のように社長の著書が備え付けてあります。外国のホテルの聖書のように(笑)。私のことなんで、眠くなるまでかるく読んでみましょう。・・・・

著書の2冊目らしいです。1冊目は「私が社長です」。で、2冊目は、自分の開運の秘訣を書いたんだそうです。感想としては、別に開運の書ではなく、やはりホテル経営についての考えを書いたものだと思うけど、面白いところもありました。

「支配人を全員女性にする!」と宣言したらしい。そうはっきり言われれば、女性社員の士気は当然高まります。新卒のリクルーティングでも、支配人を目指す女性がたくさん来るでしょうね。これはいいアイデアだと思う。
「日本初のホテルの証券化を横浜関内のアパホテルで実現。」あら、M先生の世界。これはちなみに社長のご主人のアイデアだそうです。ビジネスケースとして書けそうなネタが出てきたぞ。

彼女の思うに、人生に大切なのは以下の3つのことだそうです:
1.明るくプラス思考でいこう
2.人やモノのせいにしないで、自分が納得できる生き方をしよう
3.ちゃんと人生を生きていく計算をしよう
で、一人で全部できなくても、補い合える人と夫婦になるといい、といいます。
彼女のご主人は2と3があるけど1がない。だから彼女が1を補ってるんだといいます。
これは、単純だけど、うなづけるな。私もすこし1が足りなくなることがあるので、補ってくれる人募集。

さて、旅行の主目的についての日記やメモも書きたいし、明日からの旅行(また行くんかい!)の準備もあるので、このへんで。