板生清「コンピュータを『着る』時代」 25
カラスの話が面白かったので買ってみたんだけど、それ以上に珍しい話は載ってませんでした。脚注が1つもなくて、文中の統計データの出典もとくに引用されていません。将来というより近い未来に、センシング技術を利用して人の健康を守るという夢をさまざまな角度から語った、著者のビジョンについての本なのですね。
注:カラスの話というのは、小型化したPHSを都心のカラスにしょわせて、カラスの移動や生態を調査した結果、上野のカラスには定住派、六本木に行く都会派、荒川べりへいく下町派がいた、という研究結果のこと。
難しい話を少しでもやさしくわかりやすくするために、わかりやすい「いいもの」と「わるもの」、「すぐれているもの」と「野蛮なもの」などの例として、ときに人は不適切な表現を使ってしまうものです。例をあげると、インドや中国にアウトソースすることのデメリットとして、かの国の人々の権利意識や会社への忠誠心の低さを口にするときは、せめて自分自身の実体験に基づいて話をしてほしいと思う。これは、この本の話ではないんだけど。
パソコンのOSが独占状態であることと、電話で問い合わせをしたら「ホームページをみてください」と答える役所と、何もしなくてもセンサーで体の状態を調べて送信してくれる便利で楽なシステムとは、何の関連性もないのに、同じ章でわざわざ並列して書かれると、独占OSと不親切な電話対応が人にやさしくない代表だと読者はなんとなく感じてしまうかもしれないでしょ。人にものを教える立場の人は、自分が教えていることが事実なのか想像なのか又聞きなのか、自分が聴く人に与える影響のことまで考えた上で発言するべきだ。と思う。
どうしてもある特定のOSの欠点について言いたいのなら、「そのOSを使いにくいと感じる初心者はxx%もいた」とか書いたほうがいいと思う。あと、そのOSとセンシング技術について同じ章で書くのであれば、ユーザー側で何も難しい操作をしなくてもセンサーで体の状態を調べて送信してくれるシステムが”作れない”かどうかを調べるくらいのことはしなきゃ。後のほうの章でTronのことをほめてるけど、TronがOSとして一般人が使えるものでないことも知ってるだろうし、どのOSを使っても、ユーザーにやさしい健康管理システムが作れることくらい、わかるんじゃないかと思うけど・・・?
以上。
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