« June 2006 | Main | August 2006 »

July 2006

July 23, 2006

板生清「コンピュータを『着る』時代」 25

カラスの話が面白かったので買ってみたんだけど、それ以上に珍しい話は載ってませんでした。脚注が1つもなくて、文中の統計データの出典もとくに引用されていません。将来というより近い未来に、センシング技術を利用して人の健康を守るという夢をさまざまな角度から語った、著者のビジョンについての本なのですね。

注:カラスの話というのは、小型化したPHSを都心のカラスにしょわせて、カラスの移動や生態を調査した結果、上野のカラスには定住派、六本木に行く都会派、荒川べりへいく下町派がいた、という研究結果のこと。

難しい話を少しでもやさしくわかりやすくするために、わかりやすい「いいもの」と「わるもの」、「すぐれているもの」と「野蛮なもの」などの例として、ときに人は不適切な表現を使ってしまうものです。例をあげると、インドや中国にアウトソースすることのデメリットとして、かの国の人々の権利意識や会社への忠誠心の低さを口にするときは、せめて自分自身の実体験に基づいて話をしてほしいと思う。これは、この本の話ではないんだけど。

パソコンのOSが独占状態であることと、電話で問い合わせをしたら「ホームページをみてください」と答える役所と、何もしなくてもセンサーで体の状態を調べて送信してくれる便利で楽なシステムとは、何の関連性もないのに、同じ章でわざわざ並列して書かれると、独占OSと不親切な電話対応が人にやさしくない代表だと読者はなんとなく感じてしまうかもしれないでしょ。人にものを教える立場の人は、自分が教えていることが事実なのか想像なのか又聞きなのか、自分が聴く人に与える影響のことまで考えた上で発言するべきだ。と思う。

どうしてもある特定のOSの欠点について言いたいのなら、「そのOSを使いにくいと感じる初心者はxx%もいた」とか書いたほうがいいと思う。あと、そのOSとセンシング技術について同じ章で書くのであれば、ユーザー側で何も難しい操作をしなくてもセンサーで体の状態を調べて送信してくれるシステムが”作れない”かどうかを調べるくらいのことはしなきゃ。後のほうの章でTronのことをほめてるけど、TronがOSとして一般人が使えるものでないことも知ってるだろうし、どのOSを使っても、ユーザーにやさしい健康管理システムが作れることくらい、わかるんじゃないかと思うけど・・・?

以上。

July 16, 2006

三鷹光器③ Live Visit!!

行ってまいりました。打ち合わせもそこそこに、勝重社長のお話を3時間も伺い、義一会長や三男で営業部長の実氏も同行の上で工場見学もみっちりとさせていただき、ものづくり1000%な気分で(意味不明)満喫して帰って来ました。帰りに感動覚めやらぬ3人で熱くパスタを食べたものです。

社長いわく、長男(現会長)は信長、三男の営業部長は秀吉で四男の自分は家康である。長男は話し出すと止まらないアクの強い人だが、自分の方が人を切るときはスパッといく。長男はB型のエンジニア気質、四男の自分はAB型、6歳のときに正確な透視画法で絵を書いて先生を飛び上がらせたことがある。
「ものづくり」が得意なのは長男。四男は複雑な計算を一瞬のうちに解く才能があって、問題はひらめきで解決する。・・・そんな役割分担があって、アツレキもすごいらしいんだけど、出来上がってくるものは、もまれて磨かれているので洗練されてる。のだそうです。

天皇陛下の訪問の話や、ホタルの光を生成するたんぱく質をガン細胞に食わせて、その部分だけに光線を照射してガン細胞だけをやっつける仕組みなど、新しいお話もたくさん伺いました。

コンピュータについては、本音は好きじゃないみたいだけど、私がコンピュータ会社の人間だと名乗ったので、多少気を遣ってくれてたようです。「ミサイルの軌道の計算には絶対にコンピュータが必要だし、CADを使わないと大変な作業もあるが、使いすぎちゃいけない。」CADでしか設計したことのない大卒の新人は、部品を立体的にイメージする能力が育ってない、うちでは課長以上にしかCADは使わせない、といってました。道具を道具として使いこなす技量がなければ、逆に使われちゃうってことですね。

わたしたちが訪ねたとき、長年なじんだ町工場から、もっと広くて立派なところに移転する準備をちょうどやっていて、機械の一部が運び出された後でした。今の歴史ある工場の方を訪問できて、ラッキーでした!

ついでに言うと、勝重社長は多分ちょっと天才。直観的なんですよ。典型的な美術系、右脳人間、ひらめき型。私も、実はずっと彫刻とかやるような人が技術の道に進むといいんじゃないかなーと思ってました。社長に面と向かって、「社長のような人にノーベル賞をあげてほしいです」と言ってしまったのは私です。

さて、そんな三鷹光器ですが、経産省の冠講座のひとつとして、社長の講演が行われる予定で、近日中に理科大のサイトに詳細が掲載されると思います。学生はもちろん、一般の方も申し込み可能になる予定なので、サイトをチェックしてください!(こちらはその予告) 

三鷹光器② 新井洋「ものづくりをあきらめるな!」24

題材は前回の会長の本と同じですが、視点やまとめ方が多少違うし、新しい情報もあります。訪問するのでもなければ、1冊読めばいいと思いますよ。

会長の本には本人のこと以外あまり書いてませんが、こちらは3兄弟のことがまんべんなく書いてあります。現社長である四男、勝重氏は、子どもの頃から絵の才能があって、精密な構造の設計はほとんど彼がやっている、とか。

P62 六本木ヒルズの回転ドアに人がはさまれて死亡した事件を受けて「センサーをつければ死角ができるのは当たり前。自分なら、人が挟まれたらドアを動作させるモーターに負荷がかかってヒューズが飛ぶようにする」と会長はいいます。

P99 「日本の企業であれば、日本を苦しめるようなことをしてはいけない」公害とかね。
小企業だから1000万円を超える医療機器の入札に参加する資格もないのだそうです。日本の官公庁も、もう少しましな仕事ができないのか・・・と思います。

P155 再生医療にも取り組んでる。人間の指も、今までは見えなかった微細血管まできちんと処置ができれば、再生するんだ、と言い切ります。ここまで読んでくると、ひょっとするとそうかも、と思えてくるから不思議です。

日本企業の製品を買えば日本に金が落ちるが、外国製品を買ってもこの国はうるおわない・・・と書かれているところがあります。外資系企業にしか勤めたことがない私の唯一気がかりな点がそこなんです。日本の社員がすごい発明をしても外国が特許をとってしまう。私は世界平和を望む人間なので、誰が取ったかなんて気にしないでみんなで利用すればいいと思うけど、本当にそんなにお人よしでこの先この国は大丈夫なのかな。とも思う。本当に先々のことまで展望できる人って少ないような気がしてます。

(つづく)

三鷹光器① 中村義一「お金は宇宙から降ってくる」23

学校の社会見学?で、地元が誇る優良企業「三鷹光器」に行くことになりました。予習のために情報を検索したところ、会長の著書が見つかったので、行く人みんなで読みました。
感想:超おもしろい!!会長カッコいいです。

p22「机の上でキリキリと計算し、『うちの計算は完璧なので、カメラが爆発するということはありえません』というのがいまの人たちの考え方。けれども万が一、計算が間違っていたらどうするんだろうか。『自分たちはいつも正しいんだ』という考え方で止まっているから、最後に取り返しのつかない事故が起こるのかもしれない。」・・・耳が痛いですね。

P24 歯車は、精密に作るだけじゃなくて、うちは100枚の歯に対して98枚を噛ませて、回るたびに違う歯が当たるようにするから、どこかだけ減るということがなく、使えば使うほどよくなじむ。・・・という。先のことまで考えられる人です。

P68~「便利なものでなく、必要なものをつくる」のがポリシーだって。
人は要らないものは買わないけど、楽しいもの、便利なもの、必要なものは買う。楽しいものってのはぜいたく品とか嗜好品、賭け事、そういうもの。便利なものは、お金がなければ買わないかもしれないけど、必要なものは買う。この会社が「必要」と考えるのは、医師の手元が狂いにくくなる顕微鏡とか、砂漠に掘った深すぎる井戸から水をくみ上げるポンプに必要な電源を供給する太陽電池とか。望遠鏡づくりから始まった会社なので、太陽の温度上昇が今年ピークでこれから地球は冷えていくとか、化石燃料の将来のこととか、考えることのスケールが大きい。地球の未来や人の生死に関わるものに、強い危機感を持ってるし、力を入れていこうとしてます。

P73 顕微鏡を作るスタッフには、実際に自分の顕微鏡が納入された医療現場に行かせて、特別に手術あるいは解剖を見学させてもらう。自分が失敗すると人が死ぬという覚悟をもって作らせるんですって。

P92 発注元も販売先も、彼らの競合にばれると困るので、すべて守秘契約を結んで秘密にしてるけど、日亜科学の青色LEDの裁判では、裁判資料の中で三鷹光器の三次元測定器が使われたことが明らかになったんだそうだ。

P95 望遠鏡をひっくり返すと顕微鏡になる。はるか遠くの新星を見つけるための精密な望遠鏡が作れれば、1ナノを測れる非接触の3次元測定器を作るのはそう難しくないんだそうだ。社長は携帯を持ってないけど、携帯がこんなに小さくできたのは自分の会社の貢献だと胸をはってる。

P99 「子どものころにいたずらをした人のほうが、何もしないで育ったひとより器用なはず」。私の隣のチームで「子どものものづくりマインドを育てるプロジェクト」をやってる人たちに、「子どもがおもちゃを分解して組み立てなおすのをやらせてみたら?」と言ってみたんだけど、だめかしら。

P178 日本の企業と組みたいけど、日本の企業は無茶ばかりいうので、ドイツやスイスと組んでる。ライカは「全部よこせ」と言わずに「一緒にやりましょう」と言ってくる。ライカに手術用顕微鏡を納入してヨーロッパでは「Leica Mitaka」ブランドで売ってるのだそうだ。ドイツのマイスター制度、職人の地位を日本にも採り入れたいという。

P198 2003年から「グリーンフューエル製造技術開発プロジェクト」で、太陽エネルギーで、石炭と天然ガスからメタノールをつくる開発を行っている。太陽の向きを感知して集光器の向きを合わせるので、太陽エネルギーが最大限に集められるらしい。石油は残りわずかだけど、石炭はまだたくさんあるんですって。残り少ない石油を、自動車を走らせるために使ったりするべきじゃない、といいます。合宿に車で行くのやめようかなぁ・・・。

・・・等々、2,3時間で読めるし、面白いのでオススメです。日本にこんなに骨のある経営者がいるんだ、と心強い気持ちがしますよ。

ものづくりっていいなぁと、心底思ったのは初めてかも。私こういう工夫が好きだわ。大企業的な作り方って、いいけど惚れるところまではいきません。MOTに入ってよかったなぁ・・・と、こういうときに実感しますね。

(つづく)

July 11, 2006

「デジタル世界図書館」のオーナーは誰か

さてまたGoogleがらみ。

世界征服を本気で目論むクールなMad Scientists「ラリアンサーゲイ」が、世界じゅうのすべての情報をわがものにしようと日々スーパー脳細胞をフル活動させていることは、ご承知のとおり。ここにきて、Internet Archive をやっているBrewster Kahle氏も、同じくらい壮大な計画をもっているという報道がありました。
ほれ
ラリアンサーゲイとKahle氏、どっちがいい?っていったら、Kahle氏かな。なぜなら、私のささやかなサイトもちゃんとArchiveしてくれてたから。うふふ。
あと、ラリアンサーゲイより、著作権ってものの価値とか、著作者の気持ちとか芸術が人に与えるものの意味を理解してる気がするから。

この記事にも、MSとLessig教授の名前が出てきます。Brewster-Lessig-MS陣営 vs Google。

MS(あえてゲイツとは言わない)とラリアンサーゲイの違いは、
- MSは端的にいえば、自分が勝負に勝って一番だと世界中に認めてほしい。ゲーム大好き。たくさん売れて儲かるのが勝ちなので、お金がたくさん入ってくるのは結果として楽しいけど、ほんというと金には困ってない。
- ラリアンサーゲイは、自分が世界を手に入れたい。世界じゅうの人が自分たちの頭脳にひれ伏すようになったらsuper coolだ。お金には興味ないけど、でも自分の野望を実現するには、かなりたくさんお金が要るので、ジレンマに悩む。
・・・って感じ。

MSは自分の頭脳を自慢しません。バカじゃないけど頭で一番にはなれないって思ってるし。二番煎じだってことがわかってるし。・・・しかし本当にすごいね。誰かがやってるすごそうなこと全部やってみるんだもん。最強のフォロワーなんですよ。

ラリアンサーゲイは・・・・ ちょっと坂村健先生と似てる。

今日はこのくらいにしておきます。