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May 02, 2006

坂村健「グローバルスタンダードと国家戦略」

訳あって読むことになりました。去年出たときに立ち読みして買うのをやめた本ですが。

感想:この本のタイトルは中身と合ってないなぁ。「坂村健の標準化技術随想」ではないのか?皮肉じゃなくて、その方が軽く読めるし、坂村先生が考えたいろいろなことを、へぇーと言いながらシェアさせてもらうのは面白いのだ。

さまざまな技術の過去の標準化において起こったことを、1冊だけで概観することができて、標準化について学びたい人には参考になる本です。私にとってはまさにありがたい参考書になりました。

ただ、ここに書いていることがどれくらい固い事実で、どれくらいが主観で、どこからが推測なのか、かなり混沌としています。外国の標準については、「・・・なぜか採用せず」「急遽反論に出て」等、外のものたちの行動の理由については一切触れず、調査も推測もせずに、一貫して不可解なものと斬り捨てる。

日本の施策についても基本的には批判に徹しているけど、将来に向けて前向きに指針を提示するでもなく、なんとなく読んでいるほうは飲み屋でぐちっぽいおじさんにつかまっちゃったなぁ、というような感じです。

思いついたことをランダムに書く。批判はするけど体系的にまとめることはしない。・・・こんなにすごい実績もあって、頭のいい人なのに、あとちょっとがんばれば名著が書けるのに・・・という気がして、残念です。隙のない本を読み終えたばかりなので、構成力の重要さを再認識。

RFIDかぁ。いろいろな試みが行われているけど、目が覚めるような実用化のニュースはさっぱり聞かれません。無理に実用化のためのアイデアを練るより、何が問題でうまくいってないのか、という現状認識の勉強になると思う。よく講義に出てくる、「失敗例を振り返ってちゃんと検証する」ということを意識しながら、ongoingでpost-mortemをやってみる・・・なんていうと、シニカルすぎるかな?

技術的な内容については、あまりひどく専門用語を多用することもなく、通信・コンピュータ業界に多少でも造詣のある人なら多分、十分理解できると思う。私はそれさえマジメに追わずにざっと流し読みしてます。この辺のことには、

Q: MOTには特定の技術そのものの市場価値を判断するための、その技術分野における専門知識が必要なのかどうか?

っていう、私にとってはけっこう重要な問題がからんできます。私は技術屋さんではないので、ここを最重要視されると、誰にも勝てない。だからもっとハイレベルな、技術そのものの評価がおおむね済んだ段階での戦略づくりとか市場とのツナギとかを担当するべきだと思う。・・んだけど、技術屋さんはやっぱりどうしても、技術に造詣の深い人を尊敬するんだよね。あ~私も尊敬されたい~・・・かといって例えば今さら、xmlの勉強とかして、この分野では負けないわよ、と言うのが本来の私の仕事とは思えなかったりします。

あと、第3章でずいぶんマイクロソフトの成功と失敗について語ってるけど、「Microsoft Bob」とか「At Work」とか、普通知らないようなことまで詳しいですね!これ本当に坂村先生が書いたの?と思うくらいです。

第4章でかかれてましたが、ユビキタスID=Uコードとか実証実験についていうと、彼はRFIDにはそれほどこだわらないのね。だから三鷹サミットストアで行われた実験ではQRコードで数字の羅列を読み取るシステムになってました。あれがつまりUコードだったわけだな。

IPV6とのからみも、書いてありましたね。ずっと私も、Uコードより、直接インターネット上のアドレスが取れるIPV6の方が2ステップくらいムダが省けると思って読んでました。p214 ・・・しかし、結局なにかと接続して情報にアクセスすることがUコードの目的なんだから、これはIPV6でいいんじゃないのかな。IPV6も、一生あらゆるものにアドレスを割り当てても到底使い切れないくらいの容量があるってきいてるし。

**************
標準化の会議に日本代表で出て勝ち取ってこられる人材が足りない、という話が出てきます。わたしは策を練るのは得意だけど、ディベートは得意じゃないから、原稿は全部書くので、誰かオーラの強い人・・・劇団四季の俳優みたいな人に出てもらいたいです。。

てかそもそも、タフニゴシエイターというのはどういう人をいうのか?
押し出しが強くなければならないのか?
白熱した議論をずっと黙って聞いていて、じっくり考えて、最後に一言だけ、場が静まるような鋭い意見を言える人も強いのかもしれない。

実際に難しい交渉をやっているときに、最後に勝つのは(権力とか乱暴なやり方をする場合を除くと)、静かに粘り強く説得する人だ、っていう気がする。

企業では、そういう難しい交渉の片付け役が法務部門に回ってくることが多い。多分弁護士も法務スタッフも、そういう訓練を受けてきたわけじゃないから、最初はみんなドキドキじゃないかと思う。場数がすべてだ、ってよく言われるけど、それはまさに100%真実だなぁ。ただ、中身がしっかりしているという前提だけど。

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Comments

ふふ、takorattaさん初めまして。ブログいつも読んでます。(初めましてじゃないじゃん!)

私が一番知りたいのは、なぜ40男が一人でふと日本科学未来館に行くに至ったか、というところだったんですけど・・・。

Tronキーボード、なんかすごいですね。

坂村先生の著作へのURLが間違っていました。
こちらです。

ふと、思い立って、日本科学未来館というところに昨日行ってみたのですが、その一画が坂村先生ワールドになっていました。

「探検、コンピュータの世界」というコンピュータの歴史やアーキテクチャを解説するコーナーがあるのですが、そこにおいてあるものは多くがTRON関係のもの。

eTRONカード
TRONキーボード

単に飾りで置いてある書籍まで坂村先生の著作になっているのには感動してしまいました。

そのほかのコーナーを含めた感想は私のブログに書いてあります。

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